時の番人
No.6
「この羅針盤がすごく反応したんだけどな?どこなんだろ?」
おい、ここって俺の学校の上空だよな。俺も浮かんでいるし
!?、お、落ちる
ジタバタするが落ちる気配はなかった
流石の俺でも焦るぞ
普段から焦る事なんてないから、久々の感覚に驚いていた。落ちる事が無いと分かって落ち着きを取り戻し、陽鞠の方を向く
陽鞠が本を見ながら左右に本を動かしていた
「こっちだね」
桜の木の下に舞い降りた
「ここなのは間違いないのだけど?」
キョロキョロと辺りを見回して探していた
あれって俺だよな?
向こうから歩いて来る自分の姿を見た
「やっと見つけた、そうだこの木昔から時計塔の近くにあったやつよね。それなら本が反応してくれるはず」
陽鞠は本を桜の木に近づけた途端
光が本から現れ木に吸い込まれていった
「やったー成功した。これでここに手を触れればきっと本が導いてくれるわね」
その瞬間
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
光が梓月を包み込み瞼 を閉じた
眩しいなぁ
しばらくするとゆっくり目を開けた
本がゆっくりと閉じた所だった
「おかえりなさい」
その声に振り向くと女の子そう、陽鞠が椅子に腰掛けて座っていた
「陽鞠今までのはなんだったんだ?」
「え!思い出したの?」
「違う、俺に似た男がそう言っていたんだ」
「そう」
悲しそうな顔をしていた
「なんだよ、ちゃんと説明しろ。何で俺はあんな光景を見なければならなかった?それにだ陽鞠は俺に似た男が誰なのか知っているんだろう?」
「その答えを言う前に最後の言葉を伝えるわ」
「最後の言葉?」
「あの時、本を託されたあの瞬間に先生から言葉を預かった。その言葉よ」
「なんだ?」
とりあえず聞くだけ聞いておくか
陽鞠が本に向けて手を伸ばし手の平を上にした
『時人よ、この者我の移り変わりなり、全ての記憶と共に時の番人の力を戻せ』
今までの陽鞠の声とは別人の声で語った
今の声本当に陽鞠の声か?
陽鞠の手の平から薄いピンク色のもやが出てきて本へ飛んでいった
「何をしているんだ?」
「見ていればきっとわかるわ」
本が勝手に開き全てのページが本から解き放たれ舞い上がる
「本の中身無くなったぞ」
「いいからそのままじっとしてて」
なんなんだ、やってられるか
梓月が動こうとした時、ページが梓月の元へ戻って来た
「はぁ?」
「ほら、次がくるわよ」
陽鞠の声が響く
あれ声が戻っている。どうなってんだ?
薄ピンク色の霧が梓月の頭の中に入り込んで来た
「おい!」
薄ピンク色の霧が頭の中に入り終わった瞬間
「何を!?」
梓月の頭の中に記憶がすごい勢いで流れ込んでくる
「俺に何をしたんだ?これはなんなんだ?」
映画の一部始終が流れているように記憶が入ってくるのがわかった
全ての記憶が頭の中に入り込んだ後、梓月は状況を把握する事ができた
「そう言う事だったのか、全てが線で繋がって疑問に思っていた事が把握できた、陽鞠お疲れ様。これからが本番だ」
「先生〜」
涙目になる陽鞠
「陽鞠やめてくれよその先生は」
「だって先生だもの」
「とりあえず俺は高校生だ、自分の事をしながら事に当たる事にする。今日は俺も疲れたし、また明日の昼にな」
そう言って本に手をかざすと時が動き出した
「ちょっと先生〜」
声だけが無情に響くがそれが梓月には届いていない
全くやれやれだ。状況を把握したが理解するのには時間が欲しい。時が止まっている時にするのがいいのだろうが、俺はそんな事はしたくない。あれでは無限に使いたい放題なんて嫌だ。時間が限られているからこそ大事にするもんなんだからな。傲慢にだけはなりたくない。
桜の木からゆっくりと離れて教室に向かって歩いていった
席について校庭を眺めながら考え始める。理解をする為に
まずは最初の風景はあれは昔のここの風景だったのがわかった。その後の法廷は裁判で間違いないと
後は裁判であの檻の周りに回っていたのは嘘がつけない、本当の事だけしか話せない時空魔法だったからあの男は殺された。あの男の人生分の時間が返されたせいで、そのまま死んだわけだ。人から時間を奪うという事は死を意味する。ここまではいいな。
次の風景の時は奴の行動を探らせていたのがわかった、その後俺に似た男を殺そうとしたが、俺に似た男は時の番人だったお陰で本の中に逃げ込んだ。そして未来の自分に託した。俺は言わば子孫ってところだな、時の番人もさっきの陽鞠の行動で切り替えが完了したって事になる訳だ。
問題はここからだ、一体誰が"俺に似た男"を殺そうとしたかだ。それを捕まえないといけないのはわかった。だが裁判官にはなっていないのだから無理だろ。裁く事は今の俺には出来ない無いわけだ。まずはそこを陽鞠に聞く方が先だな。それからでなければ話が前には進まないな。本の使い方は記憶があるお陰で簡単に使えるのはいいが、やたら滅多に使う事が出来ないのも、この本の特徴って事を記憶が物語っている。
時間を簡単に奪う事ができ、尚且つ操ることの出来る本。過去や未来を行き来するなんて造作もないのだが、その代償は計り知れない為、俺に似た男は自分の記憶を本に封じたわけだ。でも何で陽鞠は平気なんだ?代償を払っていないはずなのに。そこら辺も聞かないといけないか
気がつけばホームルームが終わりを告げる号令がかかっていた
「起立、礼」
そうかもう終わりか。俺も帰るか
立ち上がる
バタバタバタバタバタバタ!!
あいつ何でいつも走っているんだ?
「梓月、助っ人頼む」
勢いよく梓月の所に来たのは鴇だった