時の番人
No.5
「今回捕まえないといけない奴なんだが、奴は時間を超えて行き来をしている奴だ。だが最近不穏な動きをしていることがわかって、更に調査をし潜伏先を突き止めた。奴がボスなのは間違いない。そこでお前に頼みたいのは、時空に逃げないようにしておいて欲しいという事だ。裁判官でありながら時の番人でもあるお前なら容易いだろう?」
「あのな、あまり大きい声で言うな。俺が番人なのを知っているのはごく一部の人だけだ。いつどこで聞かれているかわからんからな」
「悪い悪い、だがお前でなければそれは不可能だ」
「トラップや、時間誘導はどうした?」
「それは散々試したんだ。考えられる全てを試したのだが全てすり抜けられるか、躱されるか、破壊されて終わる。時空追跡も試みたがそれもダメだった」
「時空追跡もしたのか、あれにはかなりのリスクが伴 ったはずだ」
「代償は払ったよ。いつも思うが時人 はなぜ代償を払わないと力を貸してくれないんだ?」
時人?聞いたことがないぞ。なんだそれは?奴の仲間ってわけではなさそうだな。なんかSFぽいな。
ふと梓月の脳裏をよぎる
「そんなに簡単に時間を移動されてたまるか、未来や過去がコロコロ変わるだろうが、だからそうならないように監視しているんだ。人間は傲慢 になればなるほど欲望に染まり、自分中心に物事を考える。だから俺が番人をしながら裁判官になったんだよ。とにかくだこの話はこれで終わりにする」
俺に似た男は本を取り出す
俺に似た男は、時の番人と裁判官を両方しているってことだな、それにしても何で俺はここにいるんだ?それがそもそも分からん。こいつらは、俺が全く見えていない様だ。俺の気配が全くないのもおかしな話なんだが
「それで頼まれてくれるか?」
「行くしかないだろうが」
「そう言ってくれると助かる」
「俺はここから操作をする、合図をよこしてくれれば発動しておく。ただし時間は1時間。1時間後には発動が解けるから気をつけろよ」
「それだけあれば充分だ、いつも悪いな」
「代償は帰って来たらもらうからな。それとお前だけ1時間では割りが合わないから、部下を10人ほど連れてこい。そうすれば1人分の負担が少なくて済むだろ」
「わかった、そうさせてもらう」
「わかっているとは思うが、人に与えられた時間は限られているんだから気をつけろ」
「わかっている」
「それならいいが」
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
こうも何度もやられていれば流石になれるな
場面が違う場所に切り替わる
今度はどこだ?
「知らせが来たようだな」
さっきの続きって事だな
ここは書斎ではなく広間にテーブルとソファーが置かれている。
ここは接待室か?
「ーーーいるか?」
聞こえないぞ。今あの女の子をなんて呼んだんだ?
名前の部分だけが聞こえなかった
「はい、ここに」
扉が開き女の子が中に入って来た
「今から始める、ここには誰も通すな」
「わかりました」
女の子が一礼をすると外に出る
俺に似た男が、本を懐から取り出して手をかざす
本は勝手に開きページがめくられ止まる
「混沌の時間を我が止める者、汝時の番人、我の声に応え代償はその場にいた10人の時」
赤く光っている数字の配列と共に、羅針盤 と文字盤、 秒針が現れ文字盤と秒針が重なり回り始め止まる。羅針盤も周り南南西を指して止まり、後から砂時計が現れ砂が落ち始めた
「これでよし」
その後俺に似た男はソファーに座り、お茶を飲み始めた
砂時計が全て落ちた時
ボーン!ボーン!ボーン!と、音と共に全てが消え、本が閉じられた
「うまく行っているといいがな」
男は呟いた時
バン!
勢いよく入口の扉が開く
「大変です、奴が奴が現れました。ーーー様逃げてください。ここは私が」
!!
なんだ?
「ーーーいいかよく聞け、これを持って時間を渡り歩け。俺の生まれ変わりが現れたら渡すんだ」
そう言って女の子に本を渡した
!?、なんだって
「でもどうやってです」
「その本の裏に羅針盤がある。それが示してくれる。急げその本の表紙に手を置け」
「はい」
女の子が本に手を置くと、本と共に姿を消した途端、大勢の人が押し寄せて来た
「見つけたぞ。お前は邪魔なんだよ。お前がいるからあのお方がお前のいる地位にならないんだ、死ね」
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
嘘だろ
俺に似た男は目の前で血を吐いて倒れる
「頼んだぞ、陽鞠」
光景が薄くなり、また場面が変わる
今死んだよなあの男?それにだ、さっき聞こえた陽鞠ってもしかして
今度は?
「もー、どこなんですか?」
本を手にした陽鞠がキョロキョロとしていた
そうか、この子が陽鞠って名前なのか。ようやく名前がわかったが、今度は何を探しているんだ?いや待て、さっき最後に奴が言っていた事を思い出せ。確か俺の生まれ変わりを探しだせって言っていたな。ってことはだ、もしそれが俺だとしたら、、、ま、まさかなぁ
「えー、空振り?」
本を見る女の子
「やっぱり、そうなんだ」
そういうと本に手を置いて姿を消した
チクタクチクタクチクタクチクタク
今度は?
女の子が海の近くの町にいる
「もー、ここも違う」
チクタクチクタクチクタクチクタク
また場面が変わる
そんな事を10回程繰り返した時ある事に気がついた
あれ?風景がどんどん変わっているよなぁ
さっきから同じ場所なのにも関わらず街並みだけが変わっていった
どうなっているんだ?
チクタクチクタクチクタクチクタク
場所が変わったと思っていたが違っていた
何個かの建物は残っているようだ。って事はやはり場所は変わっていなくて風景が変わっているな
ん?見覚えがあるような、昔確かここはこんなんじゃなかったか?
田園風景が見える
「まだ先なの?何回やれば会えるのよ先生〜」
などと叫んで姿を消す
チクタクチクタクチクタクチクタク
また場面が変わる
ん?ここって俺のいる町じゃ?
「ここだ。ここにいるのね、先生〜まっててください。すぐに参ります」
そう叫んで飛んでいった
飛んだぞ!?飛ぶとかあり得ないだろ
梓月は驚いて飛んでいった陽鞠の方に向くと
チクタクチクタクチクタクチクタク
場面が切り替わった