神子と教会①
シスターミリエラさんは色々と教えてくれた。
此処は王都の教会で現在は臨時代理として聖国から派遣されている大司教が取り仕切っている。
昨日、私は襲撃を受けて攫われたけど
すぐさま神殿騎士によって助けられ、そのまま教会内で保護したのだとか。
嘘でしょ?
私の近くにはゴードンさん達が居たはずだ
賊を相手に立ち回って私を助け出したなら確実に駆け付けている。
ラフィスタ家の護衛に私を預けてそれで終わる話が
わざわざ教会にまで連れて来るなんて、どう考えても怪しい。
意識は無かったけど、屋敷の周りで戦闘している音が聴こえていたから、足止めされていた可能性があるけど
あのゴードンさん達を足止めするなんて長時間は絶対に無理だ。
何かあったのだろうか?
まあ、こんな透け透けのネグリジェのままでは居られないので大人しく着替える。
渡されたのは法衣・・・
「じゃあ帰るのでラフィスタ家に連絡して下さい」
「えっ!?」
「え?」
帰ると言うとシスターは驚いた表情を浮かべる
いや、帰るよね?
保護されただけなんだし、ゴードンさん達に迎えに来てもらって帰るだけだよ。
「あ、あの・・・」
「何かおかしい事言ってますか? いえ、それより保護したなら昨夜の内にラフィスタ家に連絡入れてますよね?」
話しながら思い至る
そうだ、保護したならば即座にラフィスタ家に連絡を入れて迎えを寄越しているか
それが無理でも此処にウチの誰かが側に居ても不思議じゃない
それが無いとなると、まさか・・・
部屋を出ようと扉に近寄ってノブを回す
「あっ、神子様」
ガチガチガチッ
鍵が掛かっている・・・
内側に鍵は無い、外鍵だ
つまり閉じ込める為の部屋に私は居る
「どういう事ですか、これ」
「こ、これは、その、大司教様の指示で・・・」
「帰りたいんですけど」
「申し訳ございません・・・」
何か理由を聞いてもシスターは「申し訳ございません」しか言わない
顔色を悪くして縮こまるシスター、カタカタと震え出していて、まるで私が虐めているみたいだ。
いや、神子に睨まれた、となれば教会の人間としてはマズイのかも
お世話しなさい、としか言われていないみたいだった。
「はあ・・・」
「ひぃ」
私のため息にビクリと肩を揺らすシスター
「・・・ミリエラさん」
「あ、あ・・・、さん、などと・・・」
「・・・・・・シスターミリエラ」
「はいっ」
「睨んでしまってごめんなさい、私は別に貴女に対して怒っている訳ではありません、この状況を説明出来る人が居るなら呼んで貰っても良いですか?」
私がそう言うと、シスターは慌てて部屋を出て行った
チラリと廊下が見えたけど、扉の左右と正面に神殿騎士が立っていた。
開いた瞬間に飛び出してもスグに捕まりそうだ。
しかも、正面の騎士は太い柱の様なものを持っていた
外鍵の他に丁寧にも閂が付けられているみたい・・・
さて、今の内に部屋の中を確認しておこう
寝室、リビング、トイレ、書架
家具類はひと揃えある、ソファー、テーブルにベッド
窓は全てハメ殺しで開けられない
そもそも三階くらいの高さだ、仮に割るとしても抜け出すのは困難だと思う。
絶対に逃がすつもりは無い、そんな感じだ。
命の心配は要らない、筈
殺したいなら治療なんてしないし、気を失ったまま意識が戻る事は無かっただろう。
ふう・・・、ため息ばかり出る
みんな心配してるかな?




