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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第四章 国と教会と神子
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神子と波乱。

夜会も終わり馬車の中には私とガウェインさん、そしてレイン。


「今夜もありがとうございました」

「いや、楽しかったよ」

「あの、あと何回かは夜会に出る必要が有るので、またパートナーお願いしてもいいですか?」


婚約発表をしてから、相当数の夜会のお誘いが来ている

発表前にはデビューしてからの私の顔出しが落ち着いていたけど、再び同じ様な状況になっている。

ガウェインさんには申し訳無いのだけど、婚約者と共に如何でしょうか、とのお誘いだ。


「喜んで行こう」

「すいません、ありがとうございます」

「マリア、そんな顔をしなくてもいい、俺は確かに令嬢は苦手だがキミだけは特別だ」

「は、はい・・・」

「それに婚約を発表したばかりの人間に無作法に接触する者は殆ど居ない、楽しみにしているよ」



ガウェインさんは騎士団への引き継ぎ作業と伯爵家での領主教育で忙しい。

領主教育については特に苦戦しているらしい

武官から文官になるからだ。


いきなり辺境伯家での教育を施されても大変なので

まずはルクシード伯爵家で領主としての基礎を学び、その後目処が立ち次第ラフィスタ家で継続される事となっている。


基本的に辺境は身内で固める

各街に代官を置いて、統括する役割が辺境伯

その次期辺境伯のロイド兄様の補佐、または一部の代官がガウェインさんが目指す所だ。


「今叩き込んでいるから少し待ってね、二年も待たせないから」


とはアイシャ・ルクシード義母様の言。

婚約期間は二年と定めたけど、それこそガウェインさんの習熟次第では延びたり短くなったりする事になる。

先に結婚するかどうかも検討されたけど、騎士団を辞めた新婚が無職の旦那様は嫌でしょう? うふふ、って笑っていた。




屋敷に着き馬車から降りると門前で少しだけ話した

「ガウェインさん、夜会に誘っていますけど、あまり無理しないでくださいね」

「ん? 大丈夫だ、現場の実務は最近殆どやってない、どちらかと言えば騎士団でも家でも書類仕事で、慣れない気疲れみたいなものだよ」

「そうなんですか?」

「体力的には無理してないから、どちらかと言えば鈍りそうで持て余しているくらいだよ」

「そうですか、よかった・・・」


騎士団に加えて、お屋敷に戻ってからギルバート義父様直々の指導、中々気が休まらないと思っていたけどそこまででもないらしい。


「じゃあ、そろそろ行くよ」

「はい、おやすみなさいガウェインさん」

「おやすみ、マリア」


軽く手を振られたので、私も小さく手を振り返すと

ガウェインさんはニコっと笑って馬車のステップに足を掛けた


瞬間、


ヒュッ、バァァァァァァァッン!!!


何かが爆発したような音と共に、目の前で馬車ごとガウェインさんが吹き飛ばされた。


「え」



全てがスローモーションに見えた

馬車は道を何回転も転がり、漸く止まる

ガウェインさんは十数メートル先に倒れていた。


「っ、ガウェインさんっ!!」


慌てて駆け寄ろうとしたけど、即座に止められる


「お嬢、ダメだ!レイン、お嬢を中へ!」

「マリア様、こちらへ!」

「で、でもガウェインさんが、」

「大丈夫だ、見ろ」


ゴードンさんに言われて見ると、倒れていたガウェインさんは石畳に手をついて起き上がろうとしていた。

頭を打ったのか、動きは緩慢だったけど無事でホッとする


「マリア様」

「う、うん・・・」


せめて怪我だけでも治そうとガウェインさんにヒールを飛ばす

後ろ髪を引かれる思いもあったけど、レインに手を引かれて屋敷の方へと走り出した

一番弱い私がいつまでも外に居ることで護衛の負担も増す


走りながら振り向くとゴードンさん達は剣を鞘から抜いて、門を塞ぐ様に展開している


「どういう事だ、結界は、影は何している」


暗闇の周りからはキン、キン、と金属同士がぶつかり合う音、そして怒号が響いていた。


門からお屋敷まで数百メートルある

屋敷の方向からは応援の部隊が遠目に見えた


ヒュンッ


また、あの音が耳に届く

馬車を、ガウェインさんを吹き飛ばした、あの音だ


「マリア様ッ」


手を引いていたレインが何かに気付いたのか

私を抱き込んだ、その時

破裂音と衝撃が私達を貫いた。






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