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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第四章 国と教会と神子
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神子、舞踏会を楽しむ②

今日参加した夜会は公爵家主催、学校のクラスメートの家だ。

だから参加している他の貴族もクラスメートをメインに、その縁に近い人が多い

多少なら姿を消しても大丈夫と、三曲ダンスを踊り切った私達は休憩がてら中庭へと出る。


ガウェインさんは流石の現役騎士、三曲程度はなんでもなさそうだけど、私にとっては結構な運動だ。

汗をかくほどでも無いけど体は火照って熱い、息もちょっぴり上がっていた。



「マリア」


中庭ではダンスフロアから楽団の演奏が控え目に聴こえる

ガウェインさんは近くを通り掛かったウェイターさんから冷たい飲み物を受け取り渡してくれた


「シャンパンで大丈夫か?」

「はい、ありがとうございます」


冷えたシャンパンで喉を潤す

ひと息に飲み干すと喉の奥からフワリとアルコールが香った。

ガウェインさんも飲み干していて、私からグラスを受け取るとウェイターさんに返す

目が「もう一杯いるか?」と言っていたけど、大丈夫と断った。



そのままガウェインさんのエスコートで中庭を少し歩く、腰に手を回された大きな手には未だ慣れない

風が頬撫でて火照った体には気持ちがよかった。



明るい


空を見上げると青白く満月が輝いている

屋敷を出て、公爵邸に来るまでは空を雲が覆っていたけど

夜会が始まってから晴れたみたいだ。



「月が、綺麗ですね」



腰に回された手がピクリと反応した

ん? とガウェインさんの顔を見上げると


「そうだな、とても綺麗だ・・・」


私を見て言った


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・私?


ひゃあああっ!!!月の話じゃなかった!?

あれ、私月が綺麗って言ったよね? どういう事!

絶句している私をガウェインさんは引き寄せて抱擁した。


「マリア、知らないと思うけど、月が綺麗は口説き文句だ」

「えっ」

「あまり煽らないで欲しい」

「・・・煽ってません」

「ふむ、なら今のこの状況は?」

「ガウェインさんに抱きしめられています」

「煽られた結果だ」

「・・・」


何が煽ったことになるのか分からないんだけど

その結果私はガウェインさんに抱きしめられたらしい。


「その顔は分かってないな?」

「はい、、っん!?」


突然、これも何故かキスをされて

はあ、と熱い溜め息を吐き出したガウェインさんはこんこんと説明してくれた。

曰く、私はガウェインさんを煽りまくっているらしい

デビューの時からオレンジ色が好きでイヤリングを付けていると言ったり

目を潤ませて無防備に見つめてきたり

体を簡単に預けてきたり

いくら婚約者になったと言っても男性をあまり信用してはいけない、と。



「だって、好きなんだもん・・・」




そう答えると、また重ねてキスされる

さっきから私のことを注意しながら、ガウェインさんは唇を啄んでいた。




ベンチに腰掛けている私達

私はガウェインさんの膝の上に乗せられている、あれぇ?


「可愛すぎるマリアがわるい」

「私のせいですか?」

「いや、我慢できない俺がわるい・・・」

「ふふふ、どうしたんですか? なんか今日のガウェインさんは甘えんぼです」


いつもの彼なら外で、しかも夜会中にこんな事はして来ない筈だ

最近は確かに触れ合いが増えて、キスもちょっと、いや、結構、それなりにしていたけど、それでもだ。


「すまない、キミが闇夜に消えてしまいそうで」

「闇夜に?」

「ああ根拠は無い、ただの勘というか・・・、いや、言い訳だな、今では常にマリアと共に居たいと思っている」

「消えませんよ、仮に元の世界に帰れるとしても、此処が私の居場所ですから」

「そう、だな・・・」


ガウェインさんにも何か思う所があるみたい

確かにこんなに幸せが続くと偶に考える事あるよね

いつか幸せが壊れてしまうんじゃないかって。


特に魔物が多い時は心配な時があった

不意を打たれたら、戦いのふとした瞬間に、って

今は魔物も少なくなって強力な個体もあまり出なくなったから、やっとって感じだ。


だからこそ、これからも大切なものを失わないよう頑張らないとね!



ガウェインさんと二人で見上げた月はとても綺麗だった

私達は少しの間二人きりで他愛無い話をして会場へと戻った。





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