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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第四章 国と教会と神子
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神子、舞踏会を楽しむ①

「マリア・ラフィスタ嬢、私と踊っていただけますか?」

「はい、喜んでガウェイン様」


改まった言い方をするガウェインさんにクスリと笑って私は手を重ねた。

互いの指に光るシルバーリング、婚約指輪が輝いている

婚約後初めての夜会、ガウェインさんのエスコートでダンスホールへと歩み出た。




それはルクシード伯爵家と正式に婚約の書類を交わした数日後の事だ。


「マリア様、ドレスが届いておりますよ」

「ドレス?」


最近作った覚えが無い話

レインがニコニコと伝える


「はい、ガウェイン様からオレンジ色のドレスを!」

「あ・・・」


部屋に運び込まれたドレスは確かにオレンジ色のドレス

ガウェインさんの瞳の色と同じ、私の大好きな色のドレスだった。


夜会に出掛ける時に着るドレスは、婚約者の持つ色を使って贈る事で親密さを表す。

パートナーに好意を示す、ひとつの手段だ

特に婚約直後に参加する夜会やお茶会では必ず取られる、所謂男性の甲斐性というものらしい。


婚約者にドレスのひとつも贈れないのでは甲斐性もない、または金銭に余裕の無いものと笑われてしまうのだとか。


かく言う私の方からも「黒」を使った物をガウェインさんに贈っている。

タキシードにタイピンとカフス、黒は神子の色と言われているけど

喪を表す色でもあるので難しい。

タイピンは銀にオニキスをワンポイントで使われた物

カフスは艶のある黒で、暗いイメージにならないように凝った彫金を施してある。

タキシードは私の黒髪を再現するのに苦労したみたい

黒と言っても色合いは多種多様、私の色は完全な漆黒なので専用色を作り上げた。

量産品ではダメなんだ・・・



「さ、お飾りも届いていますから、一度衣装合わせしましょう」


張り切ったレインに、母様と姉様も加わり着付けが始まった。


「似合ってるわよマリア」

「あーあ、マリアも遂にお嫁さんかぁ」

「お似合いですマリア様」

「ありがとう!」


ガウェインさんから贈られたのはドレス、靴、アクセサリー、夜会に出る為のひと揃え。

貰ってばかりで申し訳無いと思っていたけど

これは当然の行いなのだそうで、どうしても気になるなら御礼を言ってキスをしたら?と母様に言われた・・・


「そうだマリア、男性から靴を贈られる意味知ってる?」

「こら、ベル止めなさい」

「え、なに?」


靴のプレゼントの意味って?

言いかけたベル姉様を母様が止めた

聞き返しても答えてくれない、しかも教えるなら結婚式の日とか言ってる。


「レイン?」

「申し訳ございません」


レインも答えない、じゃあ父様か兄様に聞こうとするとそれはダメらしい

結局、夜会当日ガウェインさんにお礼と共に確認しても


「結婚式の日の夜に教えるよ・・・」


と、ひと言珍しくそっぽを向かれて言われた、耳を赤くしていたけどなんだろう?

この話は今後他人にしてはいけないとまで言われた・・・







「ドレス、よく似合ってるよ」

「ありがとうございます、ガウェインさんも格好良いです」

「ありがとう」


ダンスをしながらガウェインさんが言ったので私も言い返す

デビューの時は会話しながらダンスなんて無理に近かったけど、何度も夜会に顔を出して兄様と沢山ダンスした事で今では慣れたもの、周囲の様子を気遣うくらいには余裕が出来ていた。




「見て、ガウェイン様とマリア様よ、お似合いね」

「ええ!それにあのドレスとタキシード、若いわぁ」

「恋愛結婚なんて憧れるわ」

「ガウェイン様の神子様に向ける極上の甘いお顔、神子様の幸せな御様子、こちらまで幸せな気持ちになりますわね」



「「・・・」」


ま、まあ、周囲が見えるからって良いとは限らない

ちょっとだけ恥ずかしいかも。


無難に一曲目を踊りきり、続けて二曲目も踊る

二曲目も終わり、ガウェインさんが身を寄せて耳元で囁く


「もう一曲良いかな」

「は、はい、喜んでっ」


三曲続けてダンスをするのは婚約者同士で、更に互いに仲睦まじい証だ。

二曲だけでも婚約者同士のダンスとしては問題無いけど、それは儀礼的な意味合いも多分に含む

三曲とは文字通り周囲に相思相愛だと知らしめる意味のダンスになる。


勿論私はガウェインさんが好きなので喜んでダンスをした。



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