騎士のお悩み相談室③
「・・・という訳なんだ」
「ヘー、ソウナンダー」
ガウェインの友こと、俺マルセールは今日も堅物騎士の相談を聞いていた
いや堅物と言うよりは不器用と言った方が良い
なにやら婚約者の女の一面を意識し始めたらしく
つい手を出してしまう自分に嫌悪を感じているらしい。
ただのノロケじゃね?
相手神子様、マリア嬢も受け入れたんなら何の問題もないじゃん?
イヤーッ!って反応に、押したって言うなら兎も角よ。
しかもたかが口付けだけじゃねえか・・・
脱がしただの、あれやこれや手を出して婚約交渉どころか婚前交渉したっつーんならアレだけど
女が出来た、触る、抱く、という行為は当たり前だ
男なんてひと皮剥けばケモノと一緒だ
寧ろ、今になって漸くこのフクダンチョーサマも人並みの男だと安心したくらいだ。
「なあー」
「ん」
「好きな女に手を出して何が問題なんだよ」
「!?」
いや、なにその「手を出して良いのか!?」みたいな反応・・・
プロポーズしてから神子様はとても積極的になったらしい
手を握る、距離を詰める、抱き着く、口付けする
・・・見事だね、流石ラフィスタ家の人間
獲物を追い込み、隙を見せるまで待ち続け、懐に入った瞬間ガブリだ。
あ、養女なんだっけ?
でも国一番の武闘派貴族の家で育ったんだ、教えはラフィスタ。
本人が意図したのか周囲が手を回しているのかは知らんが・・・
告白される迄は我慢してたんだろうなー、惚れた相手なら男女性別問わず触れ合いたいもんだ。
一転攻勢されたガウェインは慌てている、そんな感じだな
相思相愛の相手が積極的って俺なら純粋に嬉しいけど、コイツの場合は戸惑いの方が大きいらしい。
ま、おもしれーから教えてやんねーけど。
「ガウェインって本当に女が好きだったんだな」
「・・・何?」
「睨むなよ、俺じゃねえけど極一部の界隈で同性・・・」
「止めろ、聞きたくない・・・、何故そんなことに」
「いや、普通婚約者を置くなり、親しい女の影なりあるだろ、ルクシード伯爵家は全くもってそういうの無いし、騎士連中で娼館に行ったりもしてるのに来ない、そりゃそうなるだろ」
「・・・」
お、炎の騎士様が頭抱えてる、おもしれっ
「俺は、女性が好きだ」
「ウン」
そうだね、今回23歳にして漸く誤解解けたね。
「ん?待て、マル、今お前らと言ったな」
「ああ、言ったな」
「お前らって?」
「ガウェインの兄貴、ガウェイン、ハルシオン」
「・・・強い酒をくれ」
いや、うん、三兄弟全員そんな疑惑あったら飲まずには居られないわな。
兄貴の方は領地で奥さんと居るから良いとして、ガウェインと同じく騎士の弟ハルシオンに関してはつい最近まで疑惑ありのままだったから。
つうか、相談は良いけどもう少し端折って説明してくれませんかね?
同僚が女とイチャコラしてる詳細は知りたくない
もう、なんか、アレだよアレ
炎魔法の制御ミスって爆発してしまえ
って感じだ。
他人のノロケを聞かされるのはアレだな
ガウェイン自体の困り具合はおもしれーけど、精神的にガリガリ削られてる感じだ。
慰謝料として一番高い酒をボトルキープしておこう、ゴチになるぜ。
「あ、そうだ、アホがバカやるぞ、気を付けろ」
「確かなのか?」
「ああ、つうか、もうバカは起こってる」
アホ=教会の俗物共、バカ=神子様を強引にでも教会に取り込む、だが、流石に酒場で明確に口にする訳にはいかない。
「起こってる?」
「ああ、王都にあちらさんから続々と来ていて、バカが歓楽街で問題を起こし始めてる、既に数人牢屋にぶち込んで、ついでだからゲロゲロ吐かせたわ」
聖国から神殿騎士共がこっそりと王都に入って来ている
目的は神子様の誘拐、勿論表立ってそんな事は出来ないから、自分等が賊を装い攫って、自分達で助け出した事にして、ラフィスタ家に神子様は任せられないと主張するつもりらしい。
スゲーよね、頭空っぽ、頭悪い作戦だと思うよ俺ぁ
だって筒抜けなんだもん、国もラフィスタ家も既に把握していてどう料理してやろうか手ぐすね引いてるんだぜ。
最初は教会側がわざとこちらに嘘の情報流したと思ったら、本当の情報って逆に虚をつかれて驚く。
主犯は聖国本国から来ている大司教
神子様に袖にされて、慌てて聖女様を使って引き込もうとしたけど上手くいかない
そうこうしている内に神子様はガウェインと婚約発表
焦って考えた末の手段がこれって頭疑うぜ・・・
国としても第一王子と聖女を足掛かりにして擦り寄る生臭い坊主は潰したいし
教会内部でも生臭坊主を潰したい保守派が居る
そんなこんなで情報筒抜け、ネタ元は現在王都の大聖堂を取り纏める司祭様、アホ大司教の下で言いなりになりつつ機会を伺っているとか。




