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騎士は考える①

いつからだろう、神子である彼女、マリア・ラフィスタ辺境伯令嬢を愛しく想い始めたのは。


馬車事故で母が助けられ、弟も瀕死の重傷を治して貰った。

あの時は未だ「敬意」だけだった


やはり北の森の瘴気を浄化した時だろう

彼女を守ったつもりが、助けられたのは俺の方で

神子の強大な力を目の当たりにしながらも、腕の中の彼女はとても軽く、細く、何処にでも居る少女だった。

恐らくこの時には「敬意」から「敬愛」に変わっていたと思う。



辺境へと帰ったマリアからの手紙を、いつの間にか楽しみに待つようになり

2年、3年と経った時には会いたくて堪らなかった

決して婚約をなどと思う事は無かったが

辺境の魔瘴の森、討伐に参加しているとなれば本当に無事なのか不安だった。


何故ここまで気にかけているのか

5年ぶりに彼女と再会した時に俺は自覚してしまった


幼い面影を残しながらも美しく成長したマリアから目が離せなかった。

最初は親戚の娘、姪に対するような気持ちが大半だったと思う

ただこの娘を守りたい、傍に居たいと純粋に思えた

独占欲にも近い感情もあった・・・


気付けば必至だった

彼女には多くの条件の良い縁談が持ち込まれているだろうが譲る気は無かった


少し前に王都で人気の彫金師に依頼した髪飾りを贈り

共に歩く彼女が握り返す手が嬉しかった。

上手くエスコート出来たか不安もあったが

マリアの笑顔と赤い顔に少しは脈が有ると自惚れて良いのだろうか?


薔薇園で婚約を申し込むつもりだったが邪魔が入った、聖女様だ。

彼女はマリアを敵視している節があるので騎士団でも警戒している、出来るだけ2人は顔を合わせないように配慮を、会ってしまっても可能な限り迅速に引き離すようにと。

最近では何故か俺を近衛に引き込もうと自ら接触して来たが、正直に言うと困る、第一王子殿下の婚約者であるのに腕を絡ませてくる。

そもそも近衛の指揮権は国王陛下だ

いくら聖女様とはいえ完全な越権行為である。

ランスロット団長から聞いた話だと第一王子殿下から国王陛下にも俺を近衛に、と働き掛けられているらしいが

これは聖女様の意図であるのは明白だ。

どういうつもりか知らないが、勝手に引っ掻き回されては困る


マリアに婚約を申し込むと決意した時に騎士団は辞めざるを得ないと覚悟を決めたのだから。



湖畔の町へのお出掛けの時に言おう





やっとの事で婚約を申し込めた

マリアは喜んで受け入れてくれた

つい嬉しくて強引に引き寄せ、腕の中に閉じ込め、口付けしてしまった。

彼女は真っ赤に熟れた林檎のようになっていた

愛しさが溢れ、更に唇を重ねたい欲に駆られたのを何とか我慢した。

婚約を申し込み、受け入れられたと言っても正式に辺境伯に申し込み承認された訳では無い

出来るだけ誠実で居たい為、欲を飲み込み我慢し


ようとしたら、マリアに抱きつかれて理性の糸が切れそうになった。

彼女の柔らかさを感じ、女を意識してしまう

肩に手を置いてなんとか引き離したが危ない所だった・・・



と、思ったら帰りの道では「もう少し一緒に居たい」と甘えられる


なんだこの可愛い生き物は!

ワガママ? こんなものワガママとは言わない、いじらしさを見せるマリアを後ろから力いっぱい抱き締めたい衝動に抗った。

手綱が無ければ耐えられなかっただろう


ふう、危ない危ない


って、マリアはどれだけ俺を試すのだろうか


最後の最後に不意を突かれた

頬に両手を添えられ、マリアが唇を重ねて来た


「お待ちしております、ガウェイン様」


平時のマリアとは違う色気のある声色にやられた


気付けばマリアは居なくなっていて、目の前の扉ではシルヴィーがカリカリと扉を引っ掻いていた

扉の合わせ面から三つ編みの先端が出ていて、俺は笑いを堪えながら帰路へと着いた・・・



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