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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子と湖畔の町③

風に揺られた湖の水音だけがチャプチャプと耳に届く

二人だけしか居ない気分だった。

自分の胸のドキドキがガウェインさんに聴こえてしまわないか、それほどに鼓動がうるさい

抱き締められるとガウェインさんの鼓動も私と同じくらいドキドキしていた。


「ふふ」

「ん、どうしたマリア?」


同じなんだと、つい笑いが溢れた。


「いえ、ガウェインさんのドキドキが伝わって来て」

「・・・緊張していたんだ、断られたら帰りが気まずくなるしな」


確かに。

告白(プロポーズ)が成功しなかった帰りの乗馬は苦痛になっちゃう、


「でも、上手くいきました」

「ああ・・・」


「マリアこそ、鼓動は聴こえないが耳と首筋が真っ赤だ」

「っ、見ちゃ、ヤです・・・」

「すまん」

「でも」

「ん?」

「ドキドキは聴いても良いです、よ?」


ガウェインさんのドキドキを聴いたんだから

同じく自分のも聴いて良い、聴いて欲しいと背中に手を回してギュウウっと力いっぱいに抱きついた。


「っ!?、ま、待っ、マリっ・・・!」

「えへへ、聴こえますか?」


あれ? ガウェインさんのドキドキが更に強く早くなった

なんでだろ?

疑問に思っていると肩に手を置かれて離された。


「マリア、待ってくれ」

「ご、ごめんなさい、嫌でした?」


婚約を申し込まれて、あまりに嬉しくて調子に乗ってしまった

ガウェインさんは()()が苦手なのも忘れて。


「いや!違うんだ、マリアは悪くない、コレは俺の問題だから気にするな」

「ガウェインさんの問題?」

「少しだけ時間が欲しい、決して嫌なわけじゃないから」

「はい、って、ふふふ、ガウェインさんも顔真っ赤ですよ?」


見ると、私を真っ赤だと言ったガウェインさんも真っ赤になっていた


「からかうな・・・」

「はぁい」


クスクスと笑う

湖のひんやりとした風で顔の赤みが引くまで、近くに有った岩に肩を並べて座った。






ふと気になった事を素直に聞いた


「ガウェインさんは、どうして私を?」

「俺には君しか居ない、他の女性なんて考えられない」

「う」


真っ直ぐにそう言われるとまた顔が熱くなってしまう


「マリアこそ条件の良い縁談は沢山有るんじゃないか?」

「縁談の数、と言う意味では数え切れない程来ていますけど、私はガウェインさんの事が好きです、から・・・」

「そ、そうか、俺もだ」

「はい・・・」

「「・・・」」


また恥ずかしい事を言って沈黙が落ちる


「あまり長居しても体を冷やしてしまう、早めに帰ろうか」


ガウェインさんが手を差し出してきたのでその手を掴み立ち上がる

掴んだ手を一度離し、スルリと指を絡める様に握られる

恋人繋ぎ・・・

ガウェインさんと目を合わせると、ん? と笑顔で誘われたのでそのまま私は握り返して来た道を歩き始めた。


ジャリ・・・ ジャリ・・・




「マリア」

「はい」

「俺は君の我儘が聞きたい」

「へ??」


わがまま?

唐突に言ったガウェインさん


「あー・・・、その、君がそういう令嬢でないのは重々承知なのだが、俺はもっとマリアに贈り物をしたいと思っている」

「え、っと、」

「そうだ、髪飾りもひとつでは令嬢の格好もつかないだろう、贈らせてくれ」

「は、はい、それは嬉しいですけど、」

「っと、これでは俺の我儘になってしまうな・・・」

「いえ、あ、じゃあ、一緒に選んでくれますか?」

「ああ!」


「あと、もうひとつ」

「ん?」

「少し肌寒いから、もう少し近寄ってもいいですか?」

「・・・、ああ」


私の我儘はすぐに叶えられた

肩を寄せてガウェインさんの体温を感じる

歩きにくさは全然気にならなかった。









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