神子、鑑定してみた。
ベル姉様の掻い摘みすぎた説明をソフィアさんが改めて補足して「お父様とお兄様」に話していた。
「神子様」と聞くと更に目を見開き私を見る、流石に追い出されはしないと思うけど、不安で怖い・・・
「ちょっと!お父様もお兄様も、そんなに不躾な視線でマリアを見ないで! 穴を空ける気!?」
穴は流石に開かないと思うけど、姉様の抗議にハッとなった「お父様とお兄様」は私に目線を合わせて自己紹介してくれた。
お父様はクロード・ラフィスタ辺境伯
お兄様はロイド・ラフィスタという名前らしい。
挨拶もそこそこに鑑定という儀式をしないといけない
封印された館から出て来た黒髪黒目の私は「神子」で間違いないのだけど、やはり客観的に確認する証拠が必要らしい。
その為の儀式は当主であるクロードさんが管理している特別な道具を使う必要があるので、今すぐその儀式をして国に報告しないといけないとか。
その道具は大きな水晶玉ひとつ、そして5cmくらいの銀色の金属の薄い板、認識票と呼ばれる物を使う。
「マリアちゃん水晶に手を当てて、魔力を流してみて」
ソフィアさんに言われるまま水晶に触れて魔力を流す
薄く光り始めた水晶、そして水晶から溢れた光が認識票に移る。
ある程度魔力を流すと水晶の真上に薄らと文字が映し出された。
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マリア・サトウ
神子 マリアベルの妹(仮)
Lv.1
体力 31/31
魔力 8401/8401
適性技能
神聖魔法 EX
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「っ」
「あらまあ」
「?」
クロードさんはさっきも目を見開いていたけど、今度は口もポカンと開けて黙り込んでいる。
「ありがとうマリアちゃん、こっちの認識票はマリアちゃんのもので魔力を通せばいつでも確認出来るものとして持っておくの。
指輪と一緒に首から掛けておくと良いわ」
「ありがとう、ございます」
ソフィアさんは首に掛けているお父さんとお母さんの指輪の銀鎖に認識票も通して首に掛け直してくれた。
「さ、ベルとロイドと一緒に食事してらっしゃい、きっと首を長くして待っているから」
「うん」
言われるまま部屋を出ると廊下にはベル姉様とロイドさんが待っていた。
「マリアどうだった? やっぱり光魔法?」
「神聖魔法だったよ」
「神聖?」
ん?と首を捻るベル姉様、そこにロイドさんが教えてくれる
「簡単に言うと光魔法の上位属性みたいなものだね」
「凄いわ!流石マリア、光魔法でさえも希少なのに上位属性!?」
火水風土の基本属性と希少属性の光と闇の他に完全上位の属性が存在している
水なら氷、風には雷、光なら聖魔法が上位になる
水魔法技能持ちが氷を作る事も出来るが消費魔力が多く効率が悪い、逆に氷魔法技能持ちが水を作る分には特にデメリットも無く扱えるといった具合である。
神聖魔法は神子専用の魔法で、基本は光魔法に類するのだが上位の聖魔法技能でも不可能な死者蘇生が可能である。
「あまり人には言わない方が良いよ、ベル、マリア」
「「え?」」
「光魔法ってだけでも教会はうるさいからね、それに基本的に他人には技能を教えないって習っただろう?ベル」
「あ、そっか、まずったかも」
「ん?何かしたの?」
「お兄様達が帰ってくる間に屋敷のみんなに紹介して回ったんだけど、ヒール使えるって分かってからみんなにヒール掛けて回っちゃった、ねマリア」
「うん、」
そう、隠すにしてもお屋敷に居る人みんなにヒールを掛けて回った。
ばあやさんは年を重ねた事もあって目と膝が悪いので癒し、立ち仕事の多いジョージさんやトムさんは腰を癒し、手が荒れてる侍女さん達、と全員にヒールを掛けて回ったのだ。
「そっか、まあお屋敷内なら大丈夫、外では気をつけよう」
「・・・はい」
「敬語は無しだ、マリアベルの妹なら僕の妹だからね、仲良くしようマリア」
にこりと覗き込んで来る目はソフィアさんとそっくりでとても優しかった、そっと頭を撫でられる。
「よろしく、お願いします」