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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子と湖畔の町①

今日は5年来の約束、ガウェインさんと王都近郊にある湖畔の街にお出掛け。

髪は1本の三つ編みにまとめ、あの髪飾りを留める

乗馬服に身を包み、白馬に乗せられた

私の後ろにはガウェインさんが跨っている

はい、二人乗り、です・・・


ガウェインさんの愛馬エルネーに二人乗り

足下にはシルヴィー、周囲には騎乗したゴードンさん達を伴って湖畔の街へと向かった。

王都の街中ではポクポクとゆっくり歩かせ

都外へと出るとパカラパカラと軽快に走り出した


私はずっと顔を赤くしていた、風邪や病気じゃない

二人乗りって密着が凄いの・・・

危なくないように私は後ろに居るガウェインさんに背を預ける、背中に温もりと後ろから回された逞しい腕が私を支える。


エルネーはとても賢い、手綱を握らなくても目的地に向かう程に

だからガウェインさんは片手で私を後ろから抱き竦めるような体勢になっている、ギュッと全身を抱きしめられているような、そんな体勢だ。


「マリア、寒くないか?」

「は、はいっ!大丈夫です」


耳元に発せられるガウェインさんの落ち着いた低音の声にドギマギ、吐息が掛かる、これが1時間は続くのだから

心臓が破けてしまうかもしれない・・・



「髪飾り、似合っている」

「ありがとうございます、毎日付けてます・・・」

「そうか、それは良かった」

「はい・・・」


ギュッと私を抱く手に力が入ったのか、後ろから距離を詰めたのか、何となく密着具合が上がった気がした。



——————————————————————————



ガウェインは心を決めていた

あの日、薔薇の花束を送った庭園で伝えようとした言葉

邪魔が入ったので言えなかった。


ラフィスタ辺境伯から許可は貰っている

だからこそ乗馬も二人乗りが許されているのだから。





1時間しない内に湖畔の町へと到着した

近くに湖があるお陰なのか、涼し気な風と新鮮な空気を感じられた。


「此処は王都に1番近い療養地として有名な所なんだ」

「静かでいい所ですね、ラフィスタ領みたい」

「流石にラフィスタのマリア総合治療院には負けると思うけどな」

「うっ、」

「う?」

「・・・」


マリア総合治療院はラフィスタ領に作った総合病院

そう、作った、私がやらかしたから・・・


領都を歩いて散策、その時フラリと怪我人や病人を陰から治して歩いた私。

問題にならない筈がなく、医療でご飯を食べている人達に多大なる迷惑を掛けた

そりゃそうだ、辻ヒールで全快なんて神の気まぐれみたいな行為、迷惑以外の何物でもない。

父様には勿論叱られたが、良い機会だと言って医療分野の統合を図った

治癒魔法なら教会に、薬なら薬師に、総合的な医療は治癒院といった具合に分野がバラバラだったものを

全て統合する事で医療の向上を狙った。


教会との調整が1番問題になった、治癒の魔法使いは殆どが教会所属の光魔法使いで、治療費を教会と孤児院の運営に使っていたからだ。

けれど領都にある教会のおじいちゃん司祭が「いいよ」と言った、あくまで領都の教会に限った事ではあるけど治癒魔法使いも総合治療院所属になる事を許したのだった。


勿論、それでは孤児院も教会もままならないので

マリア総合治療院の利益の一部を教会に寄付する事で賄う

そんな協定を結び、私がやらかした事を切っ掛けに


【マリア総合治療院】が誕生した。


何故私の名前が入っているかと言うと

そうすることで領都内に居た医療従事者が集まりやすかったから。

なのでマリア総合治療院と言われると自分が何も考えずに辻ヒールをして迷惑を掛けたことを思い出していた・・・




「そ、そうか・・・」


ほら、ガウェインさんも流石に苦笑いしているし


「いや、でも今では療養するならラフィスタ領と言われる程に有名になっているし・・・」

「無理にフォローしなくてもいいです・・・」


うん、結局各分野の医療従事者が集まった事で薬の質も、治療方法も、何もかも向上したんだよね

魔法で出来る事は多いけど、魔力に限界はあるし

薬は即効性が弱いけど、沢山の人に処方出来る

結局向き不向きがある中で、治療院を魔法と薬で支えよう

そんな体制が上手くいった結果だった。


ただ、マリア総合治療院と言う名前だけあって

私が設立したと思われていることがとても申し訳ない、まあ名誉職の代表ではあるけど、管理自体は兄様がやっている。

それらが私の迷惑の結果だなんて、今更言う機会は無くて、うう・・・


「っはは、マリアもそんな顔するんだな」


ガウェインさんは笑いながら私の眉間をツンと人差し指で触れた。


「私だって失敗しますよ、世間一般では神子だからって完璧な人みたいに見られますけど、この間だってシルヴィーの尻尾踏んだ上にそのまま転んで下敷きにしちゃったり、ミニトマトを滑らせてお手玉しちゃったり・・・」

「ふ、っく・・・、そうか、」

「むう・・・、なんか私だけじゃズルい、ガウェインさんも失敗話して下さい」

「む、そうだな、俺は————」



話しながらも流れる様にガウェインさんはエルネーから下りて、私も下ろしてくれた。

街の中を見て回りながら、後ろをシルヴィーとエルネーを引き連れてお昼に食べるものを買い込み、私達は湖畔へと向かった。








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