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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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閑話 庭園の人々。

庭師は見た。


黒髪の神子マリア様が第一騎士団副団長ガウェイン様にエスコートされて庭園に入って来たのを

社交界では勿論、城内の使用人でも既知の事柄であるが

2人は恋仲にあるらしい。


庭師仲間でガウェイン様と学友の奴は、薔薇の花束を準備していてくれと頼まれたらしい

嬉嬉として指定された当日の早朝に花束を作るのを手伝ったが、やたらと本数を増やして括っていた


「おいおい、何本頼まれたんだよ・・・」

「あ? 本数は言われてねえから100と1本にした」


いや、101本の薔薇の花束の意味って

永遠に一緒に、とかじゃねえか?

悪そうな笑顔で作りやがって、まあ面白そうだし? 恋人同士なら何の問題も無いかと俺も止めなかったが。


更にはコイツ、植物魔法を掛けて保存までしている

消耗の激しいコイツのオリジナル、切り花でも水さえ絶やさなければ1ヶ月は保つようになる、正に庭師の為の魔法だ。


いざガウェイン様が神子様に薔薇の花束を渡した時は陰から眺めてニヤニヤしたもんだ

いくら朴念仁な俺らでも分かる、ガウェイン様は照れているし、花束を渡された神子様は顔を赤くして笑っていた

あーあー、熱い熱い、ヤケドしちまうぜ・・・


ただ、最後に言ったコイツの一言は最低だと思う


「うし、いい仕事したな、ガウェインに美味い酒集るぜ」


酒かよ! せめて友情って嘘でも言えよ!




——————————————————————————



夫人は見た。



「あら、ねえリスティー伯爵夫人、あちらを」

「あらあら、神子様にガウェイン副団長様ですわね、シャーレイ侯爵夫人?」


2人の貴族夫人は見た、唯一の存在、黒髪である神子様が庭園にいらっしゃったと。

社交界では持ち切りの話である

神子様であり、辺境伯令嬢のマリア・ラフィスタは婿探しに王都に滞在していると


デビューしてからは引く手数多、近隣諸国の王侯貴族からも縁談が舞い込んでいる中、第一騎士団のガウェイン・ルクシード様と懇意になっている。



夫人はすかさず様子を探れる位置取りをして扇を開き口元を隠した。


「リスティー様、わたくし近年は常々思っていたのだけれど」

「何でございましょうか?」

「うふふ、濃い味付けに食傷気味で・・・」

「まあまあ!奇遇ですわねシャーレイ様、わたくしも最近はシンプルな味付けが1番と思っておりますわ」


クスクスと目元だけで笑う彼女らの関心は他人の恋愛である。


ここ10年近く瘴気と魔物の被害で、国内は戦時に近い状況だった。

そんな中、多く聞く話がドロドロとした愛憎模様の話だ


例えば、とある騎士が遠征に行く際

親友の騎士に婚約者を頼むと言って帰って来ると、婚約者と親友がただならぬ関係になっていたとか。


例えば、魔物に夫を殺され未亡人になった女性が居て

未亡人の元に通い詰める男性は既婚者で、実は互いに想っていたとか。


例えば、魔物退治の際に行方不明になっていた男性が居て

傷心の妻が街中で違う女性と懇ろになっている夫を偶然見付けたとか。


ドロっとした愛憎入り乱れる恋愛模様が多く

それはそれで面白可笑しい娯楽だったが

そんなものばかり続けば飽きが来る。

そこへ湧いて出たのは神子様と騎士の純愛模様だ

使い古された王道とも言っていい話は、これまで重苦しい話とは違った甘美な魅力に溢れていた。


やれ騎士が神子様の手を握った、それだけで顔を赤く染めた、だの。


やれ神子様はオレンジ色が大好きで騎士の瞳は偶然にもオレンジ色、だの。


想像力豊かな夫人達にとって、断片的に齎される情報はそれはもう甘い蜜である

今、目の前でもそれが見れる

距離の近さに、互いに向ける表情に、どう見ても好きあっている様子。


極めつけは薔薇の花束だ

夫人は目敏く当たりをつける、あの大きさの薔薇の花束なら100本前後だろう、と


99本なら「永遠の愛、好意を持っていた」

100本なら「100%の愛」

101本なら「これ以上ない程に愛しています」


そういった意味になる薔薇の花束

99本か100本か101本か、どの本数なのかでさえ妄想を掻き立てる。

堪らない!ドロドロした話も良いけど、邪魔者の無い純愛も良い!


嗚呼、そこでキスよ!キス!

額? いえやはりここは口に・・・、髪にでも良いわ!

さあ、さあさあ!ガウェイン様!


ハアハアと夫人の興奮は最高潮になる

だが・・・



「ガウェインさまぁ!どうして近衛騎士の断ったんですかぁ」


ふ ざ け る な


夫人は扇を目元ギリギリまで寄せて表情を隠した

今見たいのは、甘い甘いやり取りの純愛なの!

ドロっとしたのはお呼びでないの!

邪魔しないで!折角の青い恋の語らいを!


ハッと、隣に夫人が居たことを思い出して視線を送ると、あちらも似たような様子だった、互いにニコリと笑顔で誤魔化し・・・


「困ったものですわね」

「ええ、全くですわ」


聖女様も国に貢献したのは理解しているが神子様の力には及ばない。

上質な純愛模様を楽しん・・・、応援しているのだから横槍を入れる邪魔者展開はお呼びでないのだ。


神子様の幸せを祈らない者は国内には居ない

聖女様は数年前から第一王子と婚約をしているのだから空気読みなさいよ!


娯楽を、いや神子様のお幸せな時間を邪魔した聖女に夫人は冷たい視線を向けた・・・






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