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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子は幸せ。

「マリアさん、最近何かいい事あった?」


クラスメイトがそう声を掛けるほどマリアは上機嫌だった


元々朗らかなマリアがここ数日は輪にかけてニコニコとしているのだから気にもなる


「え? そんな事ないよ」

「嘘ですわね? さあ何があったか白状なさい!」

「わ、フィリアさん!?」


後ろからフィリアさんが逃がさないとばかりに肩を掴んで来た。


「ベルに聞いてもマリアに聞けとしか言わないのだから、吐くまで逃がしませんわ」

「え、姉様!」

「いいじゃないマリア、別に隠す事もないよ」

「それはそうだけど・・・」

「ほら、やっぱり何かあったのね、皆さん集合です!」



「やっぱりね、マリアさん先日の休日ですね?」

「その髪飾りは新進気鋭の職人シャルレ・マニーの作品よね!」

「恋バナ?絶対恋バナでしょう!?」


フィリアさんのひと声でクラスの令嬢全員がキャアキャアと集まって来て包囲されてしまった、逃げられない・・・



「えーっと、シャルレ?って誰?」

「あら知らないの?」

「は、はい、戴いた物だから・・・」

「キャー、やっぱり!」

「シャルレ・マニーって言うのは最近王都で人気の彫金職人よ、シャルレ様の作品は中々手に入らないんだから」

「そうなんだ」

「そ、れ、に!売る相手も、贈る相手も選ぶ程こだわりの強い職人で王家相手でさえ断る事もある程よ」

「そうなの!?」

「ええ、実際手が回らないからとか、順番ですから、と言って断られたわ」

「そんなに凄い人なんだ・・・」


「で?」

「え?」

「どなたから戴いたの?」


うふふ、とクラスメイトの生温い視線を感じる・・・


「えと、ガウェインさんに・・・」


「キャー、ほらやっぱりね!」

「ガウェイン・ルクシード第一騎士団副団長様ね!」

「だから言ったじゃない、マンダリンガーネットを使う殿方はガウェイン様しか居ないって」

「あ、じゃあ、辻馬車に乗っていたのってマリアさんとガウェイン様だったのね」

「デートね!」


「デートって訳じゃ・・・、ただ一緒にお出掛けして、」

「あら」「あらあら」「まあまあ」「あらまあ」

「え?」


クラス中から「あらあらまあまああらまあ」の声が広がった、何、その反応?


「マリアさん」

「はい?」

「いいこと? 殿方と令嬢が二人でお出掛けする事をデートと言うのよ」

「え、まっ、でも」

「ガウェイン様の事、嫌いなの?」

「嫌い、じゃない、けど・・・」

「じゃあ、好き? 髪飾りの宝石の意味、知ってるのでしょう?」


好き?

勿論ガウェインさんの事は、好き・・・

舞踏会の時から、ううんもっと以前からかも知れない

意識したのはデビューしてダンスを踊った時に、

それで、デ、デートして

暖かくて力強い手と繋いで歩くのも、お話ししながら横を見上げるとある笑顔も

公園で貰った髪飾りも何もかも嬉しい・・・




マリアは質問に答えるのも忘れて思い返していた

頬を染めて考え込むマリアは無意識に髪飾りを撫でる

初デートの思い出に浸り、「えへへ」と微笑むそれは紛れもなく恋する乙女。


クラスメイトはそれを見て


「ヤバ・・・」「青春かよ・・・」

「尊い・・・」「く、俺らの妹がっ」

「やだ、こっちもドキドキしてきたわ」


貴族令嬢として感情だだ漏れのマリアは凡そ貴族らしくは無いが、それを侮るクラスメイトは誰一人として居ない。


自分達が学校へ通っている5年の間、マリアは辺境から出ないでずっと瘴気と魔物を抑えていた事を知っているからだ。

今、変わらず貴族として居られるのはマリアのお陰であると理解している

同級生だが二歳年下のマリアはクラスの妹のような立場に落ち着いて可愛がられていた。




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