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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子とお茶会。

新しく仕立てた制服に身を包み、私は学校へと通う

飛び級という形で姉様と同じ最上級生への編入だ

5年前と同じクラス、あの時は1ヶ月と少しだけ仮入学して

瘴気対応の為に辺境へトンボ帰りした以来となる。


「この生地、領地で採れた絹を使った物なの」

「砂糖の精製が向上して試作したクッキーよ、皆さんどうかしら?」

「わあ!とても滑らかな口当たり」



もう最上級生ともなると勉強もそこそこに大半は社交と縁作りに励むらしい。

家の新しい特産を売り込んだり、卒業を前に嫡子ではない有能な人を勧誘したり、恋人を探したりと各々が人との縁を結ぶ。


「マリアさんは——」


と、私にも水を向けられる


「最近は魔物が減って動物が増えたから、綺麗な毛皮が取れるようになりました、今度持ってきますね」


ラフィスタ領は魔瘴の森という魔境を抱えていたので魔物の素材は有効活用していた。

革を鞣して加工する職人や、縫製技術などなど

装備を作る技術はそのまま品質の高い毛皮製品につながっていった。


特に各地を渡り歩く商人や北の領地の人には良く売れているみたい。

丈夫で保温性の高い上着、ケープやファー、ぬいぐるみ

余す事なく使って庶民でも手の届く低価格から貴族が好む高価で豪奢な一品物と幅広く人気が出て来ている。


併せて染め物の技術も高くなっていて

生地や毛皮染め、魔瘴の森を治めてからは街で髪を黒く染めるのも流行りだした・・・


なんで髪を黒く染めるのが流行っているかって?

神子様(わたし)の黒髪にあやかって幸せになるとかいう

おまじないが何故か流行ったからだよ!

黒染めは銅貨1枚、子供の小遣いにもならない額なので女の子は特に黒髪の子が多い

よく行くカフェの子も染めていて少し話したけど

染めたのはいいものの、のっぺりとした黒で私みたいな艶が出ないから神子髪は違うわ、と言っていた

なんだ神子髪って・・・


お陰で街歩きの時に何処からともなく感じていた視線は無くなったけど、流行りの中心であるのは気恥しい・・・



「マリア、どうせならお茶会の時に色々見せた方が良くない?」


ベル姉様の提案はその通りだ

物は領地から相応の量を持って来ているけど未だ王都では殆ど出回っていない

社交で父様と母様が広める予定だったけど、私に来た縁談への断わりやら選定で手がいっぱいだから何も出来ていない。

取り敢えず執務室に積まれた分は対応が終わったらしいけど、第3衣装室の大量の釣り書きやらは全然減っていない

私も手伝えれば良かったけど、ラフィスタ辺境伯家に来た縁談なので父様と母様でしか対応出来ない

しかも並の貴族は兎も角、国外の王族公爵辺りとなると言葉を選ばないと問題になるからだ。


なんかごめんなさい父様母様・・・

因みに純金製のアレはその日の内に王都に滞在している使者に返還した。

多分だけど20kgくらいはあるからねアレ・・・


代わりと言ってはなんだけど、毛皮の事はこちらから口コミで広まらないかなと思っている。

クラスメートは皆伯爵以上の家なので十分に話は広まると思う。


——————————————————————————



その後お茶会は無事終えることが出来た

姉様と協力して2人で準備をしたのだけど、クラスメートとは言え正式な手順で行った

招待状を送り、席次を決め、装飾品や花の飾り付け、紅茶や軽食、それは何処産なのか、話題の提供等

ひと言にお茶会と言っても沢山の決まり事がある


今回は主に毛皮の商談会のような1面もあったので話題には事欠かない

シルヴィーも大人気でもふもふされていたし、一風変わったお茶会になったけど成功したと言えるはずだ。


サンプルとして毛皮の上着を持ち帰ったクルスさん(北の領地出身)の家からは後日詳細な取引の手紙が父様の元に届いた。

他にも狩猟や馬の遠がけが趣味の人はブーツや鞍に興味を持ったり

令嬢が必ず持つ扇のファーに使いたいであるとか

父親が夜遅くまで執務をしているから肩がけに出来る物を贈りたいとか

母親が冷え性だから暖かい膝掛けを作りたいとか

沢山のお話を貰えたので少しはラフィスタ家に貢献出来て良かったと思う。




それからラフィスタ領地の毛皮革製品はあっという間に受け入れられる事になる。

高位の貴族家の令息令嬢を招いたお茶会なので、その影響力は計り知れず

神子様(マリア)が売り出した事で

ラフィスタ辺境伯魔物戦勝の御祝儀的な買い物から始まり、実際に手にしてみると確かな品質で人気を博す事になったのだった。





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