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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子、お披露目。

結局、二人の世界をなんとか止めたのは段取りの確認に来た宰相ラディクスであった。


気を取り直し、打ち合わせの終わったマリアをガウェインは手を取って会場までエスコートする。

シルヴィー、ゴードン、レインが後に続く


マリアは緊張していた。


(ドキドキして来た・・・、落ち着こう、えーっと? 玉座前まで行って、その後・・・)


初の大舞台、しかも神子としての振る舞いを求められるのだから会場へ近付く内に肩に力が入っていく。


「マリア」

「はいっ!」

「大丈夫だよ、失敗しても人が怪我する訳じゃない、魔物と戦うより余程気楽だろう?」


あ、とマリアは気付く、一般的な令嬢に掛ける言葉ではないが確かに命のやり取りをする訳では無い、そう考えれば気楽だ。


「はい・・・」

「シルヴィーも傍に居る」

「わう」

「ゴードンさんも袖に控えているし、会場にはクロード辺境伯も居る、俺も会場に居るから気楽に行けば良い」


「はい・・・」


そうだ、うん!人前に出てちょっと話をするだけ

ひとりじゃないし大丈夫。


「これが終わったら、隙を見て湖畔の街に行こう」

「あ、約束」

憶えてくれていたんだ・・・

5年前にシルヴィーの運動不足の話の際に王都から行ける湖畔の街へのお出掛けの約束


「勿論忘れていないさ」


ガウェインさんは握っていた手を持ち上げて指先に口付けをした

指から伝わる熱が顔にまで移った気がする・・・


「さ、俺はここまでだ、この先に近衛騎士団長が居るから」

「はい」


途中ガウェインさんと別れる

本来なら近衛騎士団長が迎えに来て会場までエスコートされる予定だったけど

第一騎士団団長のランスロットさんが気を利かせて、話せる知り合いが居た方が緊張も和らぐだろう、との事だ。

ありがとうランスロットさん!

公式の行事の際、王族や賓客に付くのは近衛騎士の領分

なので舞台袖から会場までは近衛騎士にエスコートされる。



「おお、神子マリア様、お久しぶりです私の事を憶えていらっしゃいますか?」

「は、い」

「ゥゥゥゥ・・・」


後ろでシルヴィーが静かに唸る声が聴こえる

私も実はこの人が苦手だ、5年前の恩賞を受ける場で重臣の人達とひと言ふた言交わしたのだけど

この人は何かを探るかのように見てきた

たったそれだけで、殆どこの人の事は知らないし申し訳ないとも思うのだけど・・・


今も流れるような動作で私の手を取って、


「神子様、改めて、ヴァイド・ポイゾン近衛騎士団長です」


手に顔を近づけてきた、いやだ・・・

咄嗟に手を引きたかったのに、この人は離さなかった

背筋に寒気が走り、嫌悪感が広がる





「おい」

いつの間にか後ろに居たはずのゴードンさんが目の前に居て近衛騎士団長さんの顔面を鷲掴みにしている


「く、貴様、無礼な!何をする」


近衛騎士団長さんはゴードンさんの手を乱暴に振り払って睨み付けた。


「無礼? お前の方こそ無礼だろ、何勝手に口付けしようとしてんだ気色わりぃ」

「はっ!これだから野蛮人の田舎者は!これは貴族として当然の振る舞い、紳士淑女の挨拶だ」

「あ? 神子様(お嬢)をそこらの貴族と一緒にすんじゃねえよ、許可も得てねえ他人に口付けされても吐き気がするだけだ、それにラフィスタ家(ウチ)から通達を出していた筈だが? 挨拶であろうとお嬢に触れていいのは『手』だけだと」


え、そうなの?

でもガウェインさんには、く、く、くちづけされたけど

ゴードンさんもレインも止めてないよね?



目を丸くして疑問を持つマリア


しかし、マリアとガウェインのお互いの空気を見て察しないゴードンとレインではない。

マリアと共に過ごした時間が最も長いのは護衛と専属侍女の2人なのだから


主と騎士が両想い(通じあってはいないので実際には両片想い)で見つめ合ったり、指先への口付け程度なら黙認するのは当たり前である。


基本的に誰にでも分け隔てのないマリアが

この近衛騎士団長に対しては触れられる直前にピクリと肩を揺らしたのも

口付けに対して嫌がり引こうとしたのもお見通しである。

当然、マリアが手を引こうとしたのに対して近衛騎士団長が離さなかったのも、だ。

パーティー直前なのでキツイ言葉遣いで言っている程度で済んでいるが、何も無ければゴードンは殴り倒していたであろう・・・







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