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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第三章 平和、そして2度目の王都。
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神子と聖女。

あっという間にパーティーの日になった

忙しくて知り合いには未だ会えていない

朝から王宮に詰め、そこで身支度を整えて夜のパーティーに参加の予定になっている。


お城でガウェインさんに会えるかな?と思っていたけど、案内の騎士さんは違う人だった

母様達は屋敷で準備して会場で落ち合う事になっている

私とシルヴィー、レイン、護衛隊長のゴードンさん、護衛副隊長のトーマスさんの5人でお城に来ていた。


王族専用区域の一角、部屋を借りて支度を手伝ってくれるらしい、そこへ向かう途中


「あなたが神子マリア?」

「え?」


声のした方を向くと立派な格好をした男女

後ろには侍女と剣を腰に提げ真っ白の胸当てを着けた騎士さん達が居た

私を呼んだのは立派な格好をしている女の人で

パーマの掛かった茶髪に黒目、豪奢なドレスにアクセサリーを身につけた・・・、誰?


「あの?」

「ふーん・・・、普通の子ね、神子様なんて周りが騒いでいるだけで冴えない娘じゃん、着ている服も安物だし何も身に付けてない、まともな生活出来てるの?」

「聖女様!なんて事をっ」


上から下までジロリと睨めつけ、フフンとそんな事を言ってきた、先導していた騎士さんが慌てた様子で女の人を咎める。

聖女様!?あれ?

これは鈍い私でも分かる、私、嫌われている

なんで? 会ったのは初めてだし・・・


「コーディーはこんな貧相な娘が欲しいの?」

「神子様は特別だ、聖女と神子2人を王家に迎え入れればその権威は盤石となる、なんたって2人と婚姻した国王は居ないからね、歴史に名も刻まれる」

「ふふふ、勿論私が王妃なんでしょ?」

「当然、アリス以外に相応しい人は居ないよ」


立派な格好をした男の人はコーディーという名前らしい

なんと第一王子様と同じ名前だ、2人はうっとりとした様子で唇を重ねた。


「・・・」


うわあ、良く人前でキス出来るなあ、私には無理だ

て、え・・・? 何?婚姻!? そんな話あるの!?

後ろに控えているレインを見ると目を細めて鋭い目付きになっていた、怖っ、怖いよレイン。


「レイン?」

「御安心下さい、マリア様の夫になるのはマリア様が望んだ相手だけです、それに旦那様も奥様も相手が王家であろうが相応しく無ければ絶対に認めたりしません、ですから安心して愛を育んで下さいませ」

「あ、愛・・・」

「はい」


確かに最近父様と母様には言われていた事がある

15で成人、通常の貴族であれば婚約どころか婚姻しているのも不思議ではない年齢。

兄様19歳、姉様17歳、私15歳

私にも何れ婚約者を立てる事になるけど

好きな人が出来たら教えて欲しい、と言われていた。

正直、結婚なんてピンと来ない

好きな人も恋人も居ないのに結婚と言われても・・・


因みに兄様には婚約者が居るらしいけど、誰なのかは教えてくれなかった、母様曰く

「ベルもマリアもきっと仲良く出来る、次期辺境伯夫人に相応しい女の子」

らしい・・・、会ったこともないのに仲良く出来ると言い切った母様に少し違和感を感じたけど、それ程にいい人なのだと思う。


姉様は私と同じで好きな人が居たら、らしい。

父様は私達に関して政略結婚には絶対にしないと断言している

「ゴードンより強く、ロイドより頭が良くないと許さん」

とは言っていたけど、多分そんな人は居ないと思うよ・・・

ゴードンさんはこの間素手で魔物倒していたし

兄様は学校を首席卒業、国内のチェス大会でも優勝しているんだから・・・



「チッ、てめえみてえなクソガキにお嬢をやる訳ねえだろ、切り落とすぞ色ボケ」

「隊長、埋めます?」

「グルル・・・、ウォウッ」


「・・・」


ゴードンさんとトーマスさんから物騒な呟きが聴こえてしまった・・・

シルヴィーもそこで賛成しないで・・・


幸い、その呟きはあちらには聞こえていなかったようで王子様はしなだれかかった聖女様の腰を抱いて行ってしまった。

横を通り過ぎる際、「フフン」と鼻を鳴らして行ったけど、そこまで嫌われたりする理由が分からない。

何せ会った事なんてないのだから


「マリア様になんて事を、王妃にはならないし側妃扱いなんて有り得ない!」

レインが許せないとばかりに怒る、それにゴードンさん達も続いた。


「だよなぁ、しかも聖女が妃になるなら余計有り得ないわな」

「隊長、やっぱ埋めて来ます?」

「私は別に気にしないから、それよりなんで嫌われてるのかな? レイン何か知ってる?」

「申しわけございません、私には分かりかねます」

「はあー、同じ日本から来たなら仲良く出来たら良かったのになぁ」

「初対面で敵意をあそこまで剥き出しにして来たので、それは難しいかと」

「うん仕方ないよね」

「お嬢が知りたいなら調べますが?」

「え? いいよ、別に」

「折角の唯一の同郷ですがいいんですか、お嬢」

「ん、うーん、まあ同郷って言っても広い国の他人だし・・・、こっちに来た当初なら兎も角、今はみんなが居るから寂しくないし」

「うす」「へい」「はい」「うぉふ」


ヒソヒソ

(お嬢って以外とドライだよな)

(普段が底抜けにお優しいですから、こういうのはそうそう無いんですけどね)

(器が大きいからこそでは? 海に1滴2滴雨が降っても影響なんて無いでしょう?)

(つうかお嬢が怒った所なんて見た事無いけどな、レインは?)

(有りませんよ、あ、でも1度だけ・・・)

(あるのか?)

(シルヴィー様がはしゃぎ過ぎてマリア様を乗せたまま川に飛び込んだ時に)

(いや、それ俺も現場に居たけど「シルヴィー、めっ!」って言って結局キャッキャッ笑って泳いでいたじゃねえか)

(それ、怒ってるんですかね?)


年中マリアに付き従うゴードンとレインでさえもマリアが怒った姿は見たことが無い

持って生まれた性格かも知れないが、全く持って偉ぶらない神子様を皆は敬愛していた、しかし本人が気にしないと言ってもそうはいかない。

評判を気にしない鷹揚な態度は大物とも言えるが、だからと言って主を馬鹿にされて黙ってなどいられない

ゴードンが一瞬トーマスに視線を送り、トーマスは小さく頷いた

本人の代わりに些事は自分達が片付ける、ただそれだけだ。







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