ガウェイン①
母アイシャと御者のじいが事故で負傷したらしく、首の骨を折り、早馬で屋敷に来いと・・・
上級騎士に上がった俺の祝いに領地から来ると聞いていたが、その事で命を落としては堪らない
ガウェインは慌てて屋敷へと帰った
「あらガウェイン、上級騎士昇格おめでとう」
「坊っちゃま、おめでとうございます」
屋敷で待っていたのはニコニコと祝う母アイシャと首の骨を折ったと知らされた御者のじい。
「母上?じいも・・・、首の骨は?」
聞けば、馬車事故は本当でじいは首の骨を負ったのも事実だった。
しかし、通りがかりのラフィスタ辺境伯家の馬車になんと神子様が同乗していて後遺症も無く治してもらったらしい・・・
力が抜けるガウェインだったが不幸と幸運は続いた
母アイシャが到着して数日後、弟ハルシオンが大怪我を負った。
片腕を失い、顔面も魔物の爪で引き裂かれ、呼吸も怪しい程の怪我だった。
騎士団の被害は甚大だった、重傷者だけで100名
軽傷者を含めると500名にもなる。
その数は第一騎士第二騎士団合わせて4分の1にもなる数だった。
光魔法の適性を持つものは少ない
そして欠損を含む、重大な損傷を治せる使い手は片手で事足りる人数しか居ない。
A級回復薬でも欠損は治しきれない、完全に治すなら霊薬しかないのだが、いち騎士に使用許可が降りる筈もない・・・
ゆっくりと死を待つしかない状態のハルシオンの前で拳を握り締めるガウェイン
「そうだ、神子様に頼んで・・・」
ラフィスタ家には今神子様が滞在している
先日母を助けていただいたのだから、ハルシオンも・・・
いや、ダメだ!自分の立場で神子様に私的に接触するなど許されない。
下手をすると、王とラフィスタ家の怒りを買う。
神子様降臨の発表はあっても、国王はお披露目を行わず
その姿を現していない。
つまり勝手に王家以下の者が接触してはならないのだ
神子様の立場を考えれば至極当然の判断、国と同様に個人の願いをいちいち叶えてはいられない。
ガウェインがそんな葛藤をしている当日、実はマリアは謁見に城に来ていた。
騎士団長らは把握していたが重臣以外には報せていない、思い余った重傷者の家族が直談判でもして神子が受け入れると今後もそういった行動が問題になるのは目に見えている。
勿論、誰もが治して欲しいと思っているのは確かなので、王国としても神子様にお願いする次第ではあった。
マリアは気にしない、当然と頷き依頼されたその日の内に重傷者は0となった。




