ヴェリルナイト王家③
神子マリアが騎士の治療に力尽きたので王宮に宿泊する事になった。
神子様の傍にはラフィスタ夫人が付いているので
これ幸いと護衛であるゴードンを借りる
「久しいなゴードン」
「は、お久しぶりです陛下」
「・・・何故若返っている」
「・・・」
「・・・」
「旦那様から許可が下りているので答えますが、この場限りの話でお願いします」
「やはり、神子様、か?」
コクリと頷くゴードン
「どうしてそうなった」
「3年近く前に死にかけまして、お嬢の治癒魔法に助けて頂きました。
その時のお嬢は瀕死の俺を見て事故で亡くした両親と重ねてしまったと言ってました、加減を間違えて治癒を施したと・・・」
「ヒールでそれか・・・」
「はい」
「凄いわね」
「流石、と言った所ですな」
「旦那様からの言伝です、万が一この事が外部に発覚した場合、ラフィスタ家にも考えがある、と」
「・・・分かっている、エリスもラディも良いな?」
「ええ」
「はい」
ラフィスタ家の考え・・・
神子の力は人を若返らせると知られた時には世界の全てから神子様は狙われる事になる。
ラフィスタ家はそれを是としない、国王シルヴェスター、王妃エリステラ、宰相ラディクス、旧知の仲にだからこそ打ち明けてくれた事が解る。
クロードからの手紙には書かれていない事から、文字という形、記録に残す事さえ警戒している証だ。
「一応、確認しておくが死者蘇生は出来るのか?」
「死者は・・・、死者は戻りません、でなければお嬢は真っ先に御両親を戻していたでしょうから」
「そう、・・・そう、だな」
両親を亡くして葬儀を終えた直後に降臨している事は報告で聞いている
その通りだ、死者は生き返らない。
「この話はこれっきりだ、所でシルヴィー殿は大丈夫か?」
「心配ですか?」
「流石にあの大きさの銀狼を予告無しで見せられたら不安になるわ!」
「あら、わたくしは気になりませんよ? 何やら知性の光が宿っている様にも見えたし」
「その通りです、シルヴィーはとても頭が良いので先ず他人を害する事はありません、お嬢と会話も出来ます」
「「「は?」」」
狼と会話? 皆、目が点になった。
「神子様は狼と会話出来るのか?」
「いえ違います、神子としての能力ではなく文字盤を使ってシルヴィーが足で示します」
「なん、だと・・・?」
「そこまでの知能が有るので?」
「はい、訓練にも参加したり、手加減も出来ますし戦術も理解します」
「なんと・・・」
「それ故に同行許可を?」
「俺では至らない場所もありますからね、まあそういった所は姉御・・・、マリアベル様が付き添いますが」
なるほど、確かに神子様の護衛は万事過剰にでも必要だ
聞けば彼女の身体能力は魔力特化で体力自体は普通の子供と変わらない。
場所を問わず連れて行ける番犬、番狼の存在は心強いと言えた。
その護衛が異端な大きさの銀狼となれば、神子様をちょっと脅かしてやろうという馬鹿者はまず出ない。
特攻覚悟の暗殺でも、あの大きさの狼を連れていては尻込みもする。
たかが大きな犬と侮って来ても返り討ち、そもそもゴードンらが神子様を守っているなら近付けもしない。
「俺も勝てませんから、シルヴィーが傍に居る内は実力行使の暗殺は絶対に無理です」
「な・・・」
ゴードンが勝てない?
そんな馬鹿なと絶句する3人、元騎士団長のゴードンは当時王国最強とも呼ばれていた。
魔物と日々戦い続けた辺境の生活で更に経験は積んでいる
年齢を理由に体力の衰えを考えても、件の事で若返っているゴードンには当てはまらない。
国王、王妃、宰相は再び絶句した
だが最低でも王国最強1、2位の実力者が護衛に付いているのならば身の安全は保障出来るだろう。
気を取り直して警備体制の協力、話し合いを始めた。




