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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第二章 神子、王都へ行く。
34/109

神子の器は大きい?

「ねえ神子様!ダメですか!お友達に」


「・・・」もぐもぐもぐ


待って、食べてるから。


頷こうにも首を横に振ろうにも

口に物が沢山入った状態では母から教わったマナーに反して端ない行為になってしまうのでマリアは黙々と咀嚼する。


口に詰め込み過ぎるのも十分端ないが、それはそれ


「あなたねえ、マリアさんは食事しているでしょう?

それに場を弁えなさい」


フィリアは正直に言うとハラハラしていた

こんな礼儀の無い平民にマリアが「良いよ」と答えそうだから・・・


線引きは必要だ

特に特権階級と平民の線引きは明確にしておかないと際限が無くなる。

それはマリアの身の安全にも関わる事

せめて話し掛けるなら食事の後、名乗り、伺う。

見知った貴族に渡りを依頼し、その貴族から王女である自分に伺って初めて礼儀を通したと言える。


礼儀もマナーも無視、しかも周囲には大勢の目

此処でマリアの気安さを見せるにはデメリットの方が大きかったのだ。


端的に言えばナメられる


親しみやすい神子様とも言えるが、我も我となると次は「家族が大怪我を」「病気を」治してくれと始まる。

マリアの性格を考えれば勿論治しに行く、なら国民全員治すのかと言われれば答えは否。

マリアは神子と呼ばれていても神そのものではない

お腹も空けば、疲れもする、病気にだってなる、生活があるのだから。


フィリアはサッと視線をロイドとマリアベルに送る


ロイドは目を細め一瞬だけ険しい目で話し掛けてきた子を見ていた。

マリアベルは食事を進めて食べ終わりそうになっている、フィリアとは視線が合った。


フィリアはひとまず安心した、二人共今の状況を正確に理解していると思ったからだ。

カフェテリアまで来て、わざわざ周りのテーブルは同じクラスの人で固めた

高位貴族の子息令嬢で固めてしまえばマリアに話し掛けようとする人も先ず居ないだろうと思っていたフィリアは密かに嘆息する。




「出直しなさい、マリアさんはわたくし達と食事しているのです」

「それはあなたが決める事ではなくて、神子様が決める事ですよね、ねえマリア!どうかな一緒に食べよ?」


ピキっ

フィリアの王女教育を受けた鉄仮面を持ってしても砕けてしまいそうな振る舞いに青筋が立つ。


「・・・」もぐもぐもぐ


所で、マリアさんいつまで咀嚼しているのかしら!?

いくらなんでも詰め込みすぎよ!下手に口を開かれるよりは全然良いけど。

今後の学校生活を左右するやり取りの中、マリアだけは呑気にもぐもぐしていた。


「さっきから聞いていれば、あなたこそ何? マリアと呼んでいいのは家族だけだし」

「それは、でも、それを決めるのも神子様本人じゃ・・・」

「答える前からマリアと呼んだ気がするんだけど」


先に食べ終わり、代わりに憮然と答えるマリアベル

そして遂にマリアの口の中が空いた


「あの「マリア、こっちの料理も美味しいよ、はい、あーん」もぐもぐもぐ・・・


すかさず隣に座っていたロイドがマリアの口に食べ物を放り込む。

切られた肉は結構大きい

目の前に出されてすかさず口に含む辺り、普段から「あーん」している事が窺えた。

貴族としては有り得ないけど、まだ10歳で本来なら未だ学校に来る年齢では無いと無理矢理自分を納得させるフィリア。


「身内の騎士を治療して貰って恩義を感じるのは解りますが、その恩人の都合を無視した振る舞い、あなたのお父上である騎士の立場も危うくなりますよ。」

「な、なんでここでお父さんの事が出て来るの? 脅すつもり?」

「既に騎士団から神子様には御礼は為されています、ねえマリアさん?」


「・・・」


話を振られたマリアは当然咀嚼しているが、口元を手で隠し、小さくコクリと頷いた。


「だから、その家族として御礼を・・・」

「何の為に()()()と一纏めにしてお伝えしているのか位は理解しなさい、最終的に500人もの騎士を治療したマリアさんに配慮したに決まっているでしょう!

その家族が次から次へとマリアさんに接触しようものなら切りが有りません、あなたの行動を許したらどうなるか分かりませんか?

この場の事は胸の内に閉まっておきますから、今すぐ去りなさい!」

「あ、う、ごめんなさい・・・、また来ます」


フィリアに叱責され、1から説明されて自分の行動を理解したのか、その子は頭を下げて漸く引き下がって行った。

この騒ぎは結果として周囲への牽制として上手く機能する事となった


「・・・」もぐもぐ


当の本人は食事しているだけで何も言っていないのだが・・・





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