神子、仮入学。
結局、学校への仮入学初日はベル姉様の押す白を基調としたドレスになった。
あ、ドレスは結局選ばれた色4色それぞれ作られました・・・
「んふふ、マリア似合ってるわ」
「ありがとうございます姉様」
「いい?学校に居る間は絶対手を離しちゃダメだからね、私かフィリアの側から離れちゃダメだよ」
「うん」
「ベルも程々にね、マリアお昼は迎えに行くから一緒に食事しよう」
「はい!」
馬車の中では兄様と姉様に挟まれ手を握られます。
3人揃って出掛けるのは2年前に兄様が学校へ行く為に領地から出て行った以来なので嬉しい。
程なく学校へ着くとフィリアさんが待っていました
「さ、クラスまで案内するわ」
「フィリアありがとう」
「こういうのは最初が肝心だからね、マリアは気安いから余計にね」
「最初?」
「いいから遅刻するわ、行きましょう」
反対の手をフィリアさんに握られ、姉様と3人並んで教室へ向かった。
教室には恐らく既に全員が集まっていた、中に入った途端
女性はドレスの裾を少しだけ摘みカーテシーを
男性は胸に手を当てて頭を下げた
数秒後、フィリアさんが口を開く
「皆さん、頭を上げなさい」
全員の視線が刺さって、少し怯んでしまった
すると背中に手を添えて姉様がにこりと笑った
「・・・マリア・ラフィスタです、皆さんどうぞ宜しく御願いします」
私もカーテシーで返すと、刺さっていた視線が緩み皆が笑顔になったのでホッとした、大丈夫そうだ。
「皆さん、マリアさんは知っての通り神子様です、貴族の事、この国の事、世界が違えば常識が違います。
何かあればしっかり教えて差し上げなさい、特に貴族の学生生活で見えて来る事も沢山ありますからね」
「フィリア様、宜しいですか?」
「なんでしょう?」
「その、恐れながら神子様に・・・」
「ああ、気にする必要はありません、立場を気にして間違いを正さない方がマリアさんを貶める行為です。
神子様に恥をかかそうとする者はこの場に居ないとわたくしは確信しておりますが、違いますか?」
「いいえ、その通りで御座います」
「マリアさん、それで良いでしょう?」
「は、はい!あの、仲良くして下さい・・・」
「宜しくてよ、皆さんの協力嬉しく思いますわ!」
高らかにフィリアさんが宣言すると場の空気は柔らかくなった。
すると、今度は私の前に順番にクラスの人が挨拶して来た
これは正式な作法では無いけど、後でバラバラに挨拶すると無秩序になりやすいので先にきっちり挨拶をしておくことにしたらしい。
このクラスは上位貴族のクラスで女性10人、男性10人
姉様とフィリアさんを除くと18人なので頑張って名前を覚えた。
なんと、1時間目はこの為に貰ったのでそのまま教室でお茶会をした
この時、私は知らなかったのだけど
神子の立場を気にしない私が馬鹿にされないように姉様とフィリアさんが一緒に行く事で王家の権威と線引きをきっちり引いた。
だからと言って、誰も話しかけてこないのでは貴族のやり取りも身につかない
勿論屋敷で勉強はしているけど3年で完璧に出来るほど貴族の勉強は少なくない
やはり実体験として学ぶ所もあるだろうと場を整えてくれた。
そして、この線引きが本当に大事だと言う事を私はお昼に知る事になる・・・
授業は勉強が2年分追い付いてないのでやっぱり分からないところが多かった
隣の人に遠慮なく聞いていいと言われたので・・・
「あの、ここって・・・」
「は、はい、ここはですね——————となります」
「ありがとうございます、えとエメラダさん」
「いえ、こちらこそ光栄でしゅ!」
少し壁を感じるけど慣れたら仲良くなれるかな?
席は最初フィリアさんとベル姉様に挟まれる形だった、でも、
「フィリア様、マリアベルさんも、失礼ながら・・・」
「なんでしょう?」
「はい、神子さ・・・、マリア様のお席は日替わりで隣を替えては?」
「それはどういったおつもりで?」
「はい、マリア様は学校での交流と勉学、そして貴族の、いえ立場ある者の立ち居振る舞いを学ぶ為に来られたと愚考しますが」
「うん」
「ならば、せめて教室内だけでも御二方とは離れた方が多くの人と接する事も出来るので良く学べるかと、それにマリア様とお話したいと思う者も沢山居ますから・・・」
「・・・良いでしょう、マリアベルは?」
「うん?いいよ、マリアも友達欲しいだろうし」
「では、先ず私から・・・」
「あ!お前ズルいぞ、俺が最初に」
「最初が男じゃ警戒するでしょ!私が最初に隣を・・・」
なんと私の隣を巡って喧嘩が・・・
「静かになさって、平等に成績順にでもしなさい!」
「おー、フィリアやらしい」
「やらしい?」
「つまり成績良い人からマリアの隣になるなら後になればなるほど頭悪いと認識されるからね、今は入学試験の並びだけど、次の試験はみんな必至に勉強して来るんじゃない?」
優秀な人達が集まったクラスだけど
結果的に更に競い合わせるような事を仄めかした、という事らしい。
私はまだあまり分からないけど、自分がどう思うかよりも
自分の言葉が人にはどう受け取られるか、それをよく考えた上で直接的な物言いをしないのが貴族の基本なのだとか。
うーん、出来るかな・・・
パッと言葉が口から出てきそう・・・




