神子と出会い。
お城で治療を終えた私は数日後とある屋敷に招待されていた。
ルクシード伯爵家、辺境から王都に来る途中に助けたアイシャ・ルクシード伯爵夫人のお家だ。
実は騎士団の重傷者治療の時、その中にはアイシャさんの息子さんが居たらしい
怪我人が三男さんで、次男さんが今回上級騎士に昇格したお祝いにアイシャさんは領地から王都に向かう途中、との事。
今回招待されたのはアイシャさんと御者のおじいさんのみならず、三男さんも治癒魔法で助けられた事により
当主のギルバート・ルクシード伯爵さんがこのまま何もせずに居ては貴族の名折れ!と言われた事が始まりだった。
朝にはルクシード伯爵家から御迎えの馬車が来て、次男のガウェインさんがエスコート役として同行した。
ガウェインさんはオレンジ色の瞳に金の髪、サーコートとかいう騎士の正装だった。
体格は辺境の討伐部隊のみんなに負けず劣らず大きい、でも柔らかい物腰で小さな私に目線を合わせる為片膝をついて話してくれた
「母から聞いております、マリア様とお呼びしても?」
「はい、名前の方が嬉しいです」
「ではマリア様、本日は私がエスコートをさせていただきます」
「よろしくお願いします!」
手を添えてもらい馬車に乗り込むとゆっくり走り出した
「マリア様、父から正式に言われるとは思いますが、母とじい、弟を助けて頂き本当にありがとうございます」
「出来る事をやっただけですから」
「その出来る事を普通に出来ない人も居ます、血を見ただけで気分を悪くしたり、気が動転して普段通りに魔法を扱えなかったり、マリア様は平気なのですか?」
「平気という訳では無いですけど、それよりも命を落とす方が怖いですから」
「騎士として情けないな・・・、10歳の女の子にこうまで強いてしまう事が・・・」
普通の令嬢は血を見たらひっくり返るだろう
それどころか魔瘴の森の討伐に参加しているとなれば
女性ではマリアベルとマリア以外に居ない。
平然と、という訳ではないが、国の為に戦う者達の為に自身が自ら赴くなんて簡単に出来る事ではない。
ガウェインは10歳にして国を守る為に力を貸してくれるマリアに尊敬と好意の念を覚えていた。
「え?なんですか?」
「なんでもありません、それより上のシルヴィー殿はとても大人しいですね」
屋根の上にはシルヴィーがドッカリと乗って着いてきている
「子犬、・・・狼の頃から保護したからとてもいい子なんです」
「後ほど触れても良いですか? 好きなんです、犬、と言うと失礼ですかね?」
「どうぞ、王都に来てからは運動不足気味なので遊んで貰えるときっと喜びます」
「楽しみです」
ガウェインさんは目を細め、眩しい笑顔になった。
犬、本当に好きそう!
シルヴィーは王都に来て走り回れていないから何とかしないとなー。
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ギルバート・ルクシード伯爵は驚いていた
「では、今度遠がけしましょうか、私も偶に馬に乗って行く場所があります、近くに綺麗な湖のある町で、王都からなら1時間程で着きますよ」
「行ってみたいです!」
「わふっ」
「湖の畔でならシルヴィー殿も問題にならないでしょうし、町で食事を買って行けば済みます。
水が澄んでいるので川魚が特産なのですが、豊かな自然が多いので畜産にも力を入れていて牛肉や豚肉も美味しいですよ」
「だってさシルヴィー」
「うぉう!!」
ルクシード家は女性の扱いが苦手な家系だ
自分もだし、長男は何とか寄り添えって貰える令嬢が見つかったが、次男と三男も例に漏れず女性の扱いに困る所がある。
なんと言うか女性に言い寄られると本能的な感覚で身が引けてしまう・・・
そんな次男は神子様のエスコート役として送り出し
いざ来たら、神子様と親しげに話しているのだから分からない。
同年齢ではダメで、幼女趣味なのだろうか・・・
神子様は10歳と聞いているから、10歳前後の令嬢との縁談を考えるべきか・・・
後日、次男と三男に縁談の話を出したギルバート伯爵に
必至に疑惑を否定する息子が居たとか・・・




