神子、驚く。
「ん、んんーー!アレ?」
よく寝た!
ノビをして起き上がるマリア、周囲を見回すと知らない部屋だった。
どこ、ここ?
ベット脇、足下にはシルヴィーが寝床を作って寝ている
「シルヴィー」
呼ぶと耳がピクリと動き、シルヴィーも起きる
「わふっ」
「ここ、どこ?」
「うぉうっ!」
マリアの問いに元気よく答えるシルヴィー、するとシルヴィーの声を聴いたのか部屋にレインが入って来た。
トントントン・・・
「失礼致します、マリア様?」
「あ、レイン?」
「おはようございます、お加減は如何ですか?」
「おはよう、お加減って?」
「覚えていらっしゃらないのですか? 昨日騎士様の治療で魔力を使い切り、倒れたと聞いたのですが・・・」
「あ」
そうだ、そうだった!とマリアは思い出した
重傷者の騎士を治療したのは良いけど丸々魔力を使い切っちゃったんだ。
「母様とゴードンさんは?」
「奥様は隣の部屋に、ゴードン様は明け方にトーマス様と交代して眠りにつきました」
「そっか、後で謝らなくちゃ、魔力ギリギリ足りると思ったんだけど」
「聞けば100人もの重傷者を治癒したとか、無理し過ぎです!」
「ごめん、でも同じ病室で治した人とそうじゃない人が居たら可哀想だし・・・」
「だからって神子のマリア様が倒れたら周りの者が生きた心地がしません、こんな事言いたくありませんが騎士に替わりは居ても神子様の替わりは居ないんですよ!」
「ごめんなさい・・・」
それは3年間言われ続けた事だ
何かあった時には自分の身を最優先に
その時、周囲に何かあっても見捨てて逃げるようにと
私はそれについて「はい」と答えた
でも、絶対に見捨てたくない
だからこそ治癒魔法に関しては一生懸命取り組んだ
心臓が止まっていない限り生かしてみせる、それだけの力はある。
流石に死んだ人を生き返らせる事は出来ないけど・・・
「そう言ってまた無理をするんでしょうねマリア様は、」
「ごめん」
「許しません、奥様に怒られて下さい!」
「う、怒ってた?」
「子供が倒れる迄無理をして怒らない母親は居りません!」
「レイン、助けて・・・」
「ダメです、そもそも1度でも休憩していたら魔力欠乏症にもならなかったのでは?」
「う」
確かに!多分最後の人を癒して丁度魔力はスッカラカンになった感じだった。
半数の治癒を終えた時点で休憩を取っていれば倒れはしなかった・・・
あまりの重傷者の数に焦っていたのかもしれない。
「魔力は回復していますか?」
「え、っと、」
認識票に魔力を通して自分の状態を確認する
マリア・ラフィスタ
神子 ラフィスタ家次女
Lv12
体力 103/103
魔力 9807/23100
適性技能
神聖魔法 Ex
「半分より下、かな」
「どれくらいですか?」
「9800」
「最大値は?」
「23100」
「・・・また増えたんですね」
「う、うん」
ハアと呆れた顔でため息をつくレイン
それもそのはず、この王城に居る最高の魔導士、魔導師団長でさえ魔力は1万とそこそこ、王宮の魔導士で7000が平均
となれば今のマリアがどれだけ常識外れなのかは言うまでもない。
通常治癒魔法自体もそこまで燃費の悪い魔法ではないのだが、マリアが扱う神聖魔法は神の力の行使
神の力を借りて行うので効果が高い分、消費も多いといったものだ。
「此方を」
そう言ってレインはコップの中に魔法で出した水を注いだ。
「ありがとう」
魔法で出した水は当然魔力を多分に含んでいる
睡眠、食事、休憩といった方法で回復する魔力だが
こういった水を取り込む事で魔力回復を早める事が出来る。
「ふう、昨日の騎士さん達は?」
「無事退院しまして訓練に復帰してますよ、全員がマリア様に御礼を言いたいと、」
「全員!? そ、それは別に良いかな・・・」
「と、仰ると思ったので、魔力欠乏症で眠っているので御遠慮くださいと止めておきました」
「うん」
「但し、騎士団長、また国王陛下からは恩賞の・・・」
「更に?」
「はい、追加ですね」
「・・・断れたりしない?」
「難しいと思いますよ」
「なんで?」
「騎士団には貴族の次男三男がそれなりに居りますから、庶民出身も居ますが昨日の重傷者の中には高位貴族の子息がそれなりに・・・」
「うう、既に辺境に帰りたいかも・・・」
使える魔法を使っているだけなので、やたらと持ち上げられるのはなんとも落ち着かないマリア
頭を抱えて唸る、人前や人の上に立つ性根ではない。
「マリア様がお優しい内は同じ事の繰り返しになると思いますけどね」
ポツリと零したレインの一言が全てを物語っている。
例えば癒す相手を選り好みしたり、報酬を最初から要求するといった打算的な姿勢であればこの様な事にはならない。
マリアは怪我人を見掛けたら治すだろう、その性格が変わらない限りは。
つまりマリアが慣れる意外に道は無かった・・・




