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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第二章 神子、王都へ行く。
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神子、餌代を稼ぐ。

シルヴィーはとても沢山食べる。

それはもう沢山食べる。


これはいけない


飼い主として申し訳ないのでお金を稼ぐ事にした

10歳の私がまともな職に就ける筈も無いし、そもそも父様に働くなんて!と却下されてしまった。

しまいには、お金が欲しいならと

「瘴気浄化代」と「部隊治療代」の名目で金貨の詰まった袋をドスンと渡されてしまった・・・

流石に受け取れないので返そうとしても、父様も受け取らない。

仕方なく受け取って母様からこっそり返したけど・・・




尚、クロードもソフィアも説明していないのでマリアは知らないが

国から「神子様」に対して定期的にお金が支払われている。

なのでマリアがソフィア経由で返したつもりになっているお金は結局マリアの積み立てになっているのだった。

その額はシルヴィーの餌代なんて問題にならないレベルなのをマリアは知らない。




やはり飼い主として何かしないと落ち着かないマリアは色々と模索した結果、回復薬製作のお手伝いをする事になる。

神聖魔法での治癒は、護られている存在なのに体を張っている人からお金を取る行為は有り得ない

かと言って市井に降りて治癒を施すのは警備上許可出来ないと父様とゴードンさんに止められてしまった為だ


回復薬は魔物討伐の生命線

ラフィスタ家では自前で回復薬を製作しているのでその役割を担う薬師、ピオス先生に師事する事となる。


「水から薬草を煮込み、煮立ったら魔力を注ぎ、色が変わったら完成です、よろしいですか?マリアさん」

「はい!」

「この器の水量に対して、薬草はひと房、これが基本となるC級回復薬の作り方となります」


手元にはピオス先生が作った回復薬

水色の透き通った液体が小さなガラスの小瓶に入っていた。

丁寧に手順を教えてもらい、早速回復薬を作る

器に水を入れて、薬草をひと房、火にかけて沸騰したら魔力を注ぐ、色が変わったら完成!


ゴポ ゴポ ゴポ・・・ァァァァ・・・ォォォォ・・・


「・・・」

「・・・」


何故か変な液体が出来た!


ゴポゴポと、ねっとりと粘ついた真緑色

ァァァァ、ォォォォと不気味な声(?)をあげている。

ぶっちゃけ毒物にしか見えない。


「先生」

「はい」


「私、何か間違えました?」

「・・・いえ」


「・・・」

「・・・」


「マリアさん」

「はい」

「無い、とは思いますが毒魔法とか呪いとか込めて、」

「ないです」

「ですよねぇ」

「はい」


「・・・」

「・・・」


「えー、取り敢えず鑑定してみましょう!」

「そうですね!先生鑑定出来るんですか?」

「いえ、私は出来ませんがこちらの魔道具を使います」


んん!と咳払いをして気を取り直す、先生が取り出したのは一見ただの虫眼鏡。


「それは?」

「こちらの道具に魔力を込めると鑑定出来る仕組みになっています」

「へえー、そういう道具って他にもあるんですか?」

「そうですね、例えばランプであったり、水を汲み上げたり、魔力を込めて決まった動作をする道具がありますよ」

「作れるんですか?」

「王都の研究員が開発を担当しています、興味があれば何時か見学すると良いでしょう、まずはこちらの液体(?)を・・・」


先生は虫眼鏡越しに私が作り出した謎液体を鑑定し始めた

すると・・・


「こ、これは・・・」

「え、なんです?」

「B級回復薬ですね」

「・・・、私作ったのってC級ですよね?」

「ええ」

「C級の材料でB級の回復薬って出来るんですか?」

「無理ですね」

「・・・」

「・・・」


「そもそもB級の回復薬って、こんな見た目なんですか?」

「違いますね、B級は薄紫色で透き通っています、そもそも声(?)をあげる回復薬なんて聞いた事ありません」


何故か1ランク上の回復薬が出来てしまった

しかも声(?)をあげる不気味な回復薬。


「どれ」ゴクリ

「ちょ!先生!」


先生が謎の液体を飲んでしまった

ン、ム、グエ、と唸りながらビクビクと嘔吐いている・・・

これは、絶対不味いな・・・、や、見た目からして想像はつくけど・・・

吐き出さないのは生徒の手前なのか、研究者の意地なのか

私はいつでも治せるように治癒魔法を使えるよう身構えたが、少しすると落ち着いたようだ。


「うん、効きますね!これ」

「ええー・・・」


何故か先生はスッキリしている、聞けばここ3日ほど研究に熱中して徹夜していたらしいが

疲労が完全に吹き飛んだとか。


「この効き具合は、間違いなくB級回復薬ですよ!

素晴らしい!C級の材料でB級が作れるとなると、討伐部隊の損耗も格段に改善されます!」


興奮した様子の先生は慌てて父様の所へ走って行ってしまった・・・

残された私は思った


「これ、飲むの?」


傍らには未だにボコボコと泡立ち、ァァァァ、ォォォォと怨嗟の声(?)をあげる回復薬。

自分で作り出しておいてなんだけど、どう見ても飲み薬には見えない

どちらかと言えば魔物に投げ付けて使う物とさえ思える見た目だ。


「・・・」

興味本位で試しに小指にちょっぴりつけて舐めてみた


「ぐえっ」


くさっ!


こんなの人が口にする物じゃないよ、本気?




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