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ラフィスタ家のあれこれ。⑤

マリアが我が家に来て3ヶ月後、国王陛下からの手紙が来た。


遅い。



内容は謝罪と養子の件について

先ず対応の遅さは聖女召喚の影響があったらしい

召喚の儀式は膨大な魔力が必要になる

魔導師団は勿論、城中の魔力が強い者を動員して儀式を行った結果

宰相や文官達を初めとした人員が約2週に渡って伏せてしまった


2週間事務仕事が貯まり、復帰した事務方は仕事に追われた

しかし、国中から集まった2週間分の仕事に病み上がりの身体は堪えた、宰相らは再び倒れる事となる。

改めて体調の回復に努め、復帰してからバリバリと仕事をこなした結果


神子様降臨の報告は漸く陛下の元に届き

その時には既に養子の件は認可済みで処理されたという経緯だとか・・・


「・・・」


いや正直な所、その混乱のお陰でこちらの思惑通りマリアの平穏を得られたので問題は無い。

既に養子の申請が通った以上、簡単にそれを覆す事は国王陛下にさえも出来ないのだ

かと言って城からの話を無視出来る訳では無いのだが、何はともあれ城側の不手際、強くは出ない。


この3ヶ月、こちらもボケっと待っていた訳では無い

影に探らせた結果、聖女の人となりはしっかりと把握している。

聖女の名前はアリス・ヤマダ15歳、マリアと同郷ニフォンからの召喚。


性格は良くも悪くも年齢並の庶民といった様子

髪は栗色、目は黒目

身の回りは城で過ごすという事で王子が固めている

学園の貴族科に通う為に基礎知識の勉強中

適性は光魔法と水魔法、等々


個人としてマリアと顔を合わせて良いかは分からないが

聖女と神子の立場上、名前と存在を知ってはいても顔は知らないくらいの距離を取っておいた方が都合は良いだろう。


既に城へと向かう手筈は整えてある

陛下の手紙には神子様の心象が悪くないか、神子様は城に来てくれるか、と書かれている。

一応マリアに

「城に住まないか?と国王陛下から提案がある」

と伝えたが「此処が良い」と答えたので、ラフィスタ家としての行動方針は変わらない。

サッと行ってサッと帰ってこよう!










帰って来たぞ!


往復4週間の道を4日程短縮して帰って来た、既に日は落ちて日付けが変わる時刻だが、ソフィアに早速国王陛下との会談の内容を話す。



会談は陛下の執務室、国王陛下、王妃陛下、宰相、そして私の4人による話し合いである。

先ずこちらからは・・・


神子様は怒っていない

ラフィスタ家で穏やかに過ごされている

瘴気が薄くなり魔瘴の森はなんとか抑えられそう

神子様は辺境での生活を望んでいる


対して陛下はホッとした様子で

神子様の良きように図らう事

聖女様を王家が喚び出した以上、聖女様の後見は王家が務める事

本来神子様に礼を尽くすべきなのは重々承知しているが、同じ役割を持つ神子様と聖女様を同じ場所でお世話すると要らぬ軋轢を生む可能性から神子様はこのままラフィスタ家、辺境で過ごして頂く事


ほぼこちらの思惑通りに話が決まった。




「で、()()よ、本音は?」

陛下が国王としての姿勢を崩し、ニヤリと笑いながら言った。


「・・・娘達は誰にも渡さん」


「あら」「おや」と王妃と宰相は目を丸くして驚くがその表情は笑っている


「くっくっく、気に入ったのか?」

「娘達を愛さない父親は居ない、そうだろうシロ?」


国王シルヴェスターを愛称で呼ぶ

国王も王妃も宰相も元々旧知の仲だ、オンオフの切り替えは出来る。

ラフィスタ家が叛意を持つのは有り得ない、にも関わらず神子様を手元に置きたがる行動をしているので見透かされたのだ。


「娘達、と来たか・・・、可愛いのか?」

「可愛い、・・・やらんぞ」

「情が移ったか?」

「ああ、それに7歳の庶民の子では城は生き辛かろう」

「それは・・・、まあ否定しないが王妃がしっかり世話す、」

「やらん、既にウチの娘だ」

「・・・く、聖女の召喚とラディの不調がこんな事になるとは・・・」

「申し訳ございません・・・」

宰相のラディクスが深深と頭を下げる、養子の申請に印を押したのは彼だ。


「責めてる訳では無い、クロが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「何故私のせいになるのかは理解出来ないが?」

にやり。


「クロお前、わざと宰相の元に出した養子の届け出には神子様と書かなかったな」

「神子様と書く欄は無いからな」

「くっ、」

悔しそうな顔をする陛下シロ、心外だな!

養子縁組の処理は宰相の担当、神子様発見の報告書は国王陛下に

本来なら国王陛下が報告書を読み、直ぐに宰相に養子の届け出の処理を止めさせ対応を協議するのだ

しかし今回はそれが前後した、聖女召喚による文官達の不調で事務処理が滞った

山積みになった書類、手紙を必至に処理した事だろう

結局、養子の届け出は普通に受理され、受理された後に国王陛下へ神子様発見の報告書が届く事になった。


わざと、とか言われるが報告書には神子様を養子として迎えたいと書いてあるし

そもそも城がそんな状況にあるなどこちらは把握していない段階で報告書と届け出は出しているのだから、別に何も悪い事はしていないし、陛下を謀った訳でもない。


「ぐぬぬ・・・、っはあ、まあ良いさ」

「神子様とは何時会えるの?」

「それに関してですが当面領地からは出さない事にしています」

「あら、どうして?」

「神子様がこちらに来た時、最初にソフィアが対応したのですが、どうやら両親の葬儀が終わった直後らしく火葬した骨を抱えて泣いてしまったそうです」

「まあ、お労しい・・・」

「幸い、娘のマリアベルが元気付けて仲良く過ごしているのですが、あまり環境の変化は良くないだろうと判断しています」


小さな子供がひとりぼっち、マリアベルと仲良く過ごして漸く屋敷の環境にも慣れてきた矢先に片道2週間も掛けて慣れぬ城に来るのも負担になる。


「うむ、そういう事なら仕方あるまい、この話は何れ、だな」

「そうね、分かりました」

「ありがとうございます」


最優先事項は「神子様が幸せに国に居る事」

極論を言えば貴族や王家の後見が無くとも良いのだがそうもいかない

聖女様の事もある、お互い3ヶ月ではその人を知ったと言うには短過ぎる

結局は双方にとって都合が良いので養子の件も特に問題は無いのだ

王都を中心に聖女様は活動、辺境は神子様の力で抑える

神子様の存在だけで国全体の瘴気は薄くなっている、既に各地に派遣されている騎士団から瘴気が薄くなっていると報告は挙がっているとか。


更に御身に近ければ近い程瘴気が消えるとなれば、魔瘴の森を抑える名目も通る

聖女様には王都を中心に局所的な活動を勧める方向となった。



ソフィアに一通り話し終えると娘達の寝室へと向かう

音を立てずに部屋に入るとベッドには2人が寝ていた

マリアベルはガッチリマリアを抱き締め、マリアは胸元に頭を預け穏やかに眠っていた



やっぱりウチの娘達は可愛いな!



こうしてマリアは晴れてラフィスタ家の子供になった・・・





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