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ラフィスタ家のあれこれ。

父の後を継ぎ数年、ラフィスタ辺境伯としてどうにか形になって来た。

この所、魔瘴の森の瘴気が濃くなり魔物の活性化に頭を悩ませながらも自然発生する瘴気をどうにも出来ずにいた


今回、討伐遠征の指揮を執ったのは

来年12歳になる息子ロイドに現状の辺境伯領を理解して貰い、国の中心である王都の学園でより真剣に学んで欲しいとの思いからだ。

帰還の途上、馬車の中で話をしてみるとどうやらこちらの意図を理解してくれたようだった

その様子に満足し、妻ソフィアと愛娘マリアベルが待つ邸に帰る


が、私達の帰還を迎えてくれた妻と娘、その他にもう一人女の子が居たのだ、マリアベルは元気に言ってきた



「お父様!お兄様おかえりなさい!新しい妹のマリアだよ!よろしくね!」




意味が、分からない。

帰って来たら9歳になる娘マリアベルと同じか少し歳下くらいの娘が増えていた・・・

言葉を失いつつも女の子を観察すると黒髪黒目

その色彩は少なくとも王国人には無い。

そして、その色はこの国の者なら誰でも知っている「神子様」の色彩だ

言い伝え、絵本、小説、オペラ、あらゆる面で語られる「神子様」の容姿そのものである。


辺境伯家の先祖が当時現れた神子様を妻に迎え、魔瘴の森を治めた事

我が家の敷地内には封印されて当時のままの姿を保つ屋敷がある事

神子様とは何かと縁のある家なのだ。




娘のマリアベルは既に黒髪の子を妹として扱い、私に妹にする宣言もして来たが、流石に即答は出来ず曖昧な返事で誤魔化した。

何はともあれ妻ソフィアに事実確認をしない事には話にならない








本物の神子様でした!


封印された屋敷から現れた事

黒髪黒目である事

そして鑑定の儀式で確認される「神子」の二文字に、強大な魔力値

神子様以外に有り得ない事実が確認された。


1週間程前に現れた神子様

成程、確かに1週間前の討伐遠征中、何故か瘴気が薄くなったのだ

その時は「そういう日もあるか」と特に気にもとめなかったのだが、神子様が国に現れたとなれば納得のいく事実であろう。

思えば屋敷へ近付くにつれて瘴気が消え去っていたのは神子様の存在の証左である。




さて、どうしよう?


神子だ、掛け値無し、間違い無く神子様。

ラフィスタ家は200年前の先代神子の血を継ぐ家系なので当主の日記や記録が多く残されている

国、王都にある王城にも記録は残っているだろうが、神子と子を為したラフィスタ家には及ばない

つまり少なくともこの国において神子について最も詳しいのは我が家だ。


一応、王国法では国への報告義務があるので王家、国王陛下に報告を挙げねばならない

問題は内容だ。


先代神子様は20歳で此方の世界に現れた、対して今代の神子様は僅か7歳

20歳ならば神子様の意志を出来るだけ叶う様にするだけ、完全な大人なので分別もつく

だが7歳となると話は別である、ソフィアの話を聞くとどうやら庶民生活をして来た神子様

つまり貴族の常識を有していない、そんな子供を城へ行かせてしまっていいのだろうか?

王家の庇護を得たならばそれはもう大切にされるだろう

しかし、王城とは権力が渦巻く地だ

幼い子供なので、絶大な地位を保証されている「神子」に取り入ろうとする者は多い・・・


国王陛下と王妃陛下が子供を利用するような人物ではないことは理解しているがお二人共に忙しい身、常に一緒に居て守ることは難しい、どうしても後見人と侍女便りになる。


城に居る侍女は大半が貴族、神子様の周りを固めるとなれば確実に高位の貴族令嬢が務める

侍女として城に出仕している令嬢は人脈作りと婿探し、王家に仕えたと言う価値を得る為に居る事が多い。

勿論完全な職業侍女として出仕する者も居るのだが、どうしても令嬢の後ろに控える貴族家の意向というものが見え隠れするものだ。

信頼を得た神子様に「家が今大変で・・・」と泣き付き、いいように使おうとする未来が見える


「うーん・・・」


「クロード・・・」


「分かってる、しかし報告は挙げねばならない」


ソフィアも恐らく私と同じ事を憂いている、が

次の瞬間信じられない事を言い出した


「ねえ、私に考えがあるのだけど、マリアちゃんウチの子に出来ない?」


「な、に!?」

神子様を養子に!?


ソフィアの考えはこうだ

魔瘴の森という脅威が近くにあるが、先代神子様の力によって鎮められた歴史がある

今回も瘴気が濃くなって来ていて問題になっているが、神子様を辺境に置く事で魔瘴の森を抑えられるという事を前面に押し出すのだ

辺境の乱れは国の乱れに繋がる、王家も城内の権力者も強くは反対出来ないだろう。


勿論、これは建前。


辺境なので先ず権力闘争は無い、子供を育てるには良い環境だ

口さがない者からはラフィスタ家がまたも神子を擁して・・・、等と言う可能性はあるが

先代神子様の時代も権力の場からは遠ざかり魔瘴の森を治めた、少なく見ても200年は国に尽くして来た事は誰もが認める家、それがラフィスタ家であるのは国中が知っている。


そして最後に神子様と娘マリアベルが信頼関係を築いている事。

どんな理屈を言おうが、最終的には神子様の意向が最優先される

「此処に居たい」と言われれば、是と答える他なく

そのまま神子様の言葉として城へ報告するだけだ。

「此処」とは、つまり封印された屋敷が神子様の住まいとなる

封印された屋敷はラフィスタ家の敷地内にある

つまり自然と後見人は決まるのだ。


神子様を養子にする事は認められなくても、保護者として国に認めさせる事は可能だろう

早速神子様に意向を確認すると、此処に居たいと言う

その時の様子は「お願い、此処に置いて」と言っている迷子のようで私とソフィアは心を決めた


そう考えた私は国王陛下に神子様の降臨の報告書を認め、養子の届け出も送った。

辺境から王都まで片道2週間前後、返事はひと月後になるだろう

神子様の事はソフィアから聞いた事しか知らないので、私としても神子様の・・・、いや、娘マリアの事を知る期間として費やそうと思う。






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