神罰。
それは晴れた日のこと
大司教の身柄は聖国へと移される日程が整った
大司教は表情は概ね明るいものだ
何やら策があるのか、元教皇を頼ればどうにかなると思っているのか。
教会の再編は処分を待つばかりの大司教には伝えられていない。
だが・・・
用意された馬車に乗り込む為、聖堂から青空の下へ出た瞬間である
バァンッ!!!!
「ッカ!?」
雲ひとつ無い青空から真っ直ぐ雷が大司教の身体を貫いた。
護送人員、見送りをする司祭らは皆一様に驚き固まっていた。
雷が真っ直ぐ落ちるなど有り得ない
しかも何故か大司教を囲んでいた人員には影響が見られない、1mと離れていなかったというのに・・・
見ると大司教は生きている
ビクビクと痙攣して、焦げ臭い臭いを放ってはいるものの
生きている。
慌てて教会へと逆戻り、治癒を施され一命は取りとめたが
本日の移送は見送られた。
数日後、大司教の体調の推移を見ていたが特に異変はなかったので改めて国への移送をしようとした。
その顔には雷に焼かれた引き攣った肌があった
治療としてヒールを施したが消えず
回復薬を使用しても消えない火傷の痕
体質によるものか、命に別状がないとして深く調べられる事もなく放置された。
大司教が外へと踏み出したその時
バリバリッバァンッ!!!!
再びその身を雷が貫いた
数日前と同じく、鼻をつく肉が焼けた臭いを放ってはいるものの、生きている光景は完全に焼き直しされたものだ。
一度目の時は「天罰だ、天罰!ハハハ」と笑う者も居たが、二度目ともなるとその異様さに皆驚きを隠せない。
またしても移送は延期された・・・
二度雷に打たれたとなれば自然に起きた事象ではないと
主張する者も少なからず出始めた。
自然現象で雷に二度打たれ、しかも生きていたなんて聞いたことが無い
それよりも高度にコントロールされた雷魔法を放たれたと考える方が、余程筋道が通っている。
何よりも恨みは買っているのだから、国か辺境伯からの差し金なのだ、と。
しかし証拠は何も無い上に、訴えた所で黙殺されてしまうのは目に見えている。
やれる事は精々周囲の見回りを強化するだけ
あとは教会に保管されていた雷避けの護符、雷無効の指輪、魔法耐性の高いローブ等を身に付けさせ移送する事になった。
移送当日、快晴
移送人員は心なしか大司教と距離を取っている
誰だって雷に打たれたくない。
大司教は顔色悪く、護符をくしゃくしゃに握り締めていた
そして屋根の下から一歩踏み出した
ゴロゴロゴロ・・・
快晴の空に暗雲が集まり始める
「ひっ」と大司教は息を吐き出し、周囲はサアアーと距離を取った。
皆、その目には恐怖が浮かんでいる
大丈夫だ、大丈夫。
雷避けの護符がある、雷は当たらない
雷無効の指輪をしている、当たっても効かない
魔法耐性の高い素材のローブを羽織っている、効いたとしても減衰される
そもそも三度も雷になど打たれるものか、だから、
その日、三度雷に打たれた男は二度と太陽の下へは出られなくなった。
雷避けの護符は真っ黒になり、指輪は砕け、ローブは燃え尽きたのだ
男は生涯何かに怯えるように祈りを捧げ続けた
火傷痕はあらゆる治癒も受け付けず、まるで裁かれた証のように残った。
他にも数十名、似た現象と症状に見舞われた人間が居たと言われたが教会公式の記録には何も残っていない。
以後、教会上層部のみに口伝で伝わる事実として
「神は存在する」と、その身を引き締め続ける事となる。