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辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第四章 国と教会と神子
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神子が消えたあと

神子マリアの死亡


森で発見されたのは引き裂かれた血塗れの法衣と身体の一部のみ

現場は凄惨なもので出血量から生存は絶望視された

懸命な捜索でも神子は発見されず、捜索が始まって三週間程で打ち切り、神子の死亡が認定された。


唯一無二の存在神子の捜索の割りに早期に打ち切られたのには理由があった


捜索の規模である


王国騎士団のほぼ全数になる約2000とラフィスタ家の部隊による捜索は昼夜を問わずに行われ

彼らの優秀さは神子の死を認めるだけの確認作業に過ぎなかった

結果、生存の要素皆無とされたのだった。


現場に落ちていた身体の一部、髪の毛は染髪されたものではない事が判明

黒髪の人間が神子以外に居ない事から幕引きとなった。


その事実は国を揺らした

護国の英雄と言っても差し支えない人物だった

神子自身の力、彼女から齎される回復薬と霊薬

医療の向上で一般に出回る薬の効果も上がっていた


以前の薬では助けられなかった、今の薬だから助かった

そんな命はひとつふたつではない

等しく国民に愛されたと言っても過言ではない功績


だが神子はもう居ない。



王都では国葬が営まれた

式にラフィスタ家の人間の姿は誰一人として居ない

神子様と言うよりはひとりの娘として愛していたのは誰もが知る所で、神子の死を受け入れない、そして教会に対する怒りを覗かせた行動だと思われた。





ガタガタゴトゴト・・・


ラフィスタ辺境伯一家が乗る馬車は王都を出て領地へと向かっていた。

神子が姿を消して1ヶ月、漸く全ての始末を終えた一家の顔は明るかった

凡そ、最愛の家族を失った様子ではない


「やっと終わったなぁ」


はあ、安堵のため息を吐くのはクロード辺境伯

そうね、と応えたのは妻ソフィアだ。


「お父様、私はやっぱり最初から潰していた方が良かったと思うの」

「ベル、滅多な事を言ってはいけないよ、何度も話し合っただろう?」

「だって・・・」


物騒な事を言うのはマリアベル、それを兄ロイドが諌めていた。

皆の様子は家族を失い、悲しみに暮れるそれではない


マリアは生きている


神子の死亡は王家とラフィスタ家の計画で

教会の力を削ぎ、その失態から生死問わずマリアへの教会の干渉を封じるものだ。


マリアを咥えて逃げた黒狼はシルヴィー

森の中で見付かった血溜まりや引き裂かれた法衣はラフィスタ家の工作

髪の毛は森の中でレインが髪型を崩さないようにひと房切ったもの

実行部隊はゴードン、ガウェイン、レイン


森に残った実行部隊とマリアの足跡などの痕跡は

いち早く駆け付けたラフィスタ家の捜索部隊が必死の捜索をして踏み荒らした為に消滅。


こうしてマリアは死亡した




マリアベルは婉曲なやり取りよりも剣を振るった方が早いと考えていた

父と母、兄が考えた計画は完璧だった

しかし教会に囚われたマリアの様子をレインと共に見に行った時に即座に気付いたのだ

マリアの「大丈夫」は大丈夫じゃない、我慢をしているのだと。


可能ならばあの場で助け出したいと思った

それを実行しなかったのは自分が先の先まで考える事が不得手で、その不利益はマリアが被る事になると知っていたから。

マリアベルはマリアとはまた違ったベクトルで貴族社会に不向きな事を理解していた。


まあ終わった事はもういい

屋敷に帰ったら先に戻ったマリアがきっと出迎えてくれる

大変だったし学校も結局は少ししか行けなかった

そうだ久々に一緒に寝よう!

お風呂も一緒に入って、夜更かししてお喋りしよう

私も学校に戻るつもりは無いし、当分は昔みたいにマリアと二人でゆっくり遊んでも良いはずだ。


・・・最近はお父様もお母様も私の婚約者について煩くなってきたけど。


妹マリアが婚約者決まったのだから私も近いうちに、と言われる

でも!マリアが亡くなった事になっているから喪中期間の向こう一年はそんな事も言われない!


余計なことは忘れてゆっくりするのも少しくらいはいいでしょ、マリアが屋敷で待ってる


私はマリアを思い浮かべて楽しみになった

きっとマリアは笑顔で言うんだ




「おかえりなさい」って。



マリア、私の可愛い妹


先代神子様も教会や他国からの干渉が激しく

病弱という事にして表舞台から去ったらしい

「神子」としての価値しか目に入らない人間にマリアは渡さない!





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