表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境の神子は静かに暮らしたい。  作者: EVO
第一章 神子、異世界に現る。
10/109

神子の3年後。

「お嬢!お願いします!」

「うん」


私は魔力を込めて祈る、身体の悪い所を治して健康にと


治癒魔法(ヒール)


横たわる隊員の体が白い光に包まれる

魔物に引き裂かれ、噛み付かれ。傷付いた体が次の瞬間には元通りの肉体に癒された。


「ゴードンさん終わりました、あとはお願いします」

「うっす」


ゴードンさんは治癒を終えた人に肩を貸すと近くで待機している馬車に載せる

馬車には他にも治療を終えた部隊のみんなが乗っていた。




「お嬢、お疲れ様です」

「怪我人はこれでおしまい?」

「うす、あとは第二部隊がそろそろ帰還するので、後方拠点(ここ)も撤収します」

「そっか、じゃあ手伝うよ片付け」

「いえ、お嬢は休んでて下さい!こういうのは俺らの仕事です!」

「でも・・・」

「お嬢は癒しの力に、瘴気も祓っています、本来なら後方とは言え戦線に参加する必要は無いのに・・・

それに、お嬢が力仕事をするとベルの姉御にぶっ飛ばされます」

「そ、そう、じゃあ、休んでるね」

「うっす!」

ムキムキの筋肉を強調してゴードンさんは周囲に指示を飛ばしていく。



私は今戦場に居る

こちらに来て3年、10歳になった私は佐藤 真里亞改めマリア・ラフィスタとなり、ラフィスタ辺境伯家の一員として魔瘴の森の魔物討伐と瘴気の浄化に同行している。


マリアベル姉様ことベル姉様は、あの日から落ち込む私を妹として沢山元気づけてくれた。

お屋敷のみんなに紹介してくれて馴染めるように

知らない世界に一人になった私を「ひとりじゃない」というように

そして魔瘴の森へ遠征に出掛けていた、ラフィスタ辺境伯家当主クロード・ラフィスタ父様と長子ロイド兄様にも「妹のマリア!」と唐突に宣言しては度肝を抜いて半ば強制的に認めさせていた、アレは今思えば色々とおかしかったけど(笑)


そんな姉様は剣の才能があったらしく

メキメキと力をつけ「辺境伯家の娘として領民を守るのは私の責務よ!」と言い放ち魔物討伐に参加したのだった

普通の令嬢や子息は戦いの場に出る事は無いのだけど、ラフィスタ辺境伯家は特殊な家柄で、現場に出る事も少なくない。


ベル姉様にベッタリだった私は自分もついて行くと言ったけど、剣の才能も攻撃魔法の才能も乏しかった事もありソフィア母様を筆頭に父様兄様にも反対された。

しかし幸いにも「神子」としての力はとても強く、希少な癒しの使い手として最後方の拠点から出ない事を絶対条件に同行する事になった。

どうやら私が居るだけで国の瘴気はかなり薄くなったらしい、特に半径数kmに至っては瘴気が完全浄化されて助かる事が要因だそう。


魔物は瘴気に冒された動植物

特に瘴気の中では力が増して暴れ回る傾向があるらしく、瘴気が濃い程魔物は強くなるが

私が拠点に居るだけで討伐区域の瘴気は消えて楽に戦えるとか。


とか、と言うのは、私を基点にして瘴気が消えているので私自身は瘴気を間近で見た事がない

遠目の景色でモヤモヤしているのを見ただけだ。



討伐部隊は全10部隊、前線で戦うのは第1部隊から第7部隊でそれぞれ10人編成。

第8から第10部隊は魔法部隊。

全100人からなる精鋭の討伐部隊が森に入る、その他に約300人程の予備隊が物資輸送や街道の閉鎖などの任務を遂行する。


森の手前に拠点を置くのだけど

その拠点の防衛に、前衛の最精鋭である第1部隊と後衛の最精鋭である第10部隊が置かれた。

あとから聞けば神子(わたし)の護衛だと言うのでクロード父様にそこまでしなくても、と言うと

私の瘴気の浄化には最精鋭を護衛に回すだけの価値があるらしい。


曰く、魔物化した熊の討伐に丸々一部隊の10人で掛かっていたものが、瘴気が無い事で魔物が弱体化、半数の5人で倒せるようになった。

残りの5人とローテーションで戦闘出来ることから、部隊の疲労度が格段に改善、一日一部隊で討伐出来る魔物が倍以上になり、二部隊を私の護衛に回してもお釣りが来る程だ、だそう・・・。


先程私の事を「お嬢」と呼んでいたゴードンさんは第一部隊隊長、もりもりの筋肉に190cmもの身長、鋭い眼差しと顔には戦闘の爪痕、私の専属護衛だ。


ある日第一部隊がボロボロで帰還した

皆、傷だらけの中、隊長のゴードンさんは片腕を無くし瀕死の状態だった

お屋敷にある最高の回復薬霊薬(エリクシル)を必要としてなんとか辿り着いたが、霊薬を与えられても死の淵を脱する事は叶わなかったのだけど・・・


私がヒールを施すと無くした腕が生えて完全回復

しかも瀕死の人を助けるのに、必至に魔力を込め過ぎた結果、ゴードンさんから治癒の光が溢れ出し、溢れ出した光は周囲の隊員の怪我も治癒した。

まだここまでは良かった、でも瀕死のゴードンさんの様子と病院で見た両親が重なってしまった私は目をつぶって全力で魔力を込め続けた結果やってしまったのだった。


30代後半のゴードンさんが何処からどう見ても20歳くらいにしか見えない程に若返ってしまったのだ。

以来、ゴードンさんは

「俺はあの時死にました、だからこれからは神子様の為に生命を使わせて下さい」

と言って引かず、第一部隊隊長であるゴードンさんを尊敬している部隊員も全員私に忠誠を誓うことになってしまった。


絶対に引かないゴードンさん達に諦めつつ、どうにか「神子様」呼びだけは止めさせたのだけど結局「お嬢」と呼ばれる様になった。

それまではマリアベル姉様が「お嬢」と呼ばれていたのだけど、私が「お嬢」呼ばわりされる事になり、姉様は、


「お疲れ様です姉御!」


と呼ばれることになった・・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ