ムー
『起動したからには、いくら見た目が大きくても、コーティング材には変わりないだろ』
『そうだけど――持ち主でないと――???』
戸惑いを見せるマリーの手を少しばかり強引に引いて、僕はクリスタルの壁に歩く。おでこが衝突し、やはりだ。抵抗なく体が潜り込んでいくことを体感する。そのまま完全にオリハ内部に侵入したのだった。
引き続いてマリーも、ブランもだ。
「そういうことさ」
これを見て、ショーグンも、エマも、そしてレッドローズ以下すべてのメンバーが、巨大なクリスタルの中に、そう、ムー大陸に、侵入を果たしたのだった。
これがクリスタル・コーティング内の浮力、粘性というものか? 皆、身体の軸線がバラバラだ。体の横が見えていたり、背中が、頭頂が、足の裏が見えていたりした。
マリーだけ、羞恥の表情で、手で体を隠した。
だが皆の注目は“下”に向けられていたのだ。
エマたちは相変わらず震えている。
超深海が平気だったマリーも、今は震えている。それは――
丸い西瓜があったとする。それを、包丁さばきも巧みに三角錐に切り取った跡、というか――
あるいは、美味しそうな円いホールケーキから三角ピースを一個取り去った跡、というか――
つまりは、透明な三角楔を地球中心にまで打ち込んだような!
深さ、6400km――
そのすべての断面模様が見えていて、そこに、クリスタルの光の源があったわけで――
それは地球内部の、つまりはマントルの、外殻の、そして内核の、極大な圧力が放つ、灼熱の輝きなのだった!
「これは、アタシたちの物だ……!」地球重力、火炎地獄への落下の恐怖に震えながら、レッドローズが職務の執念でもって口走る。
「なぜなら、こうして、原石をまとえたのだからな……!!!」
それは皆もいっしょのことで――あえて口を挟む者は、そんな心の余裕のある者は、いなかった。




