図鑑「ムー大陸」項
日本。
こんどこそ目を覚まして、結衣は、バーチャル図鑑の「ムー大陸」項を開く。とたん、イメージが浮き上がり、解説が始まった。パーソナリティ・モデルは、兄だ。
『20世紀始め、イギリスの軍人(《字幕》陸軍大佐。詐称。英国陸軍に在籍の記録がない。米国在住。イギリス人であることに注意。《/字幕》)チャーチワードによって、インドで古文書が発見され、世に知られるようになった。
インドに従軍したとき、現地のヒンドゥー教の寺院の高僧が、寺院の門外不出の粘土板「ナーカル碑文」を見せてくれたという。……』
兄が顔をあげる。
「――この時点でもう、顧みる価値はナッシング、と思わない?」
(クスクス笑いが起こる。)「まったく――」
「面倒だから、ポイントを適当に列挙してみるね」
「今から約1万2千年前に、一夜にして太平洋に沈んだと伝わる。
大きさ。東西8000キロ。南北5000キロ。
人口。7000万。面積の割には少ないね。
肌の色の異なる10種類の民族が共存。
太陽神の代理人、帝王ラ・ムーが全大陸を統治。
現代文明を遥かに凌ぐ超古代文明……て、もういいだろ? インチキ宗教レベルだよ――」
結衣は図鑑を放り出す。
洋子ちゃんから遊びのお誘いがきたからだった。
※
パーソナリティ・シンが、お姉口調でしゃべる。
「ま、別モンなんだけどね……」
そして図鑑が閉じられた。




