ダイブ
潜水した瞬間だけだ。頭上の海面が月の光に揺れているさまが見れたのは。
すぐに、真っ暗闇だった。ぬるい海水に包まれる。
そして、どこまで潜ったろう?
ブランが白く発光した。オリハの光だ。
その巨体が輝き、半径1kmの水域を照らし出す。
なんにもなかった。
無音。
さながら、真空に漂う、海水の球だった。
水圧で、マリーのワンピースがぼろぼろに崩れ始めた。
だけど、裸を隠さない。
生まれたままの姿で、むしろ手足を広げて。
いま、肌を白く染め上げる。
日焼姿も可愛いのに、とは余計なお世話というものだろう。
そして、彼女はその体表に、グラフィック、棘の生えた茎を伸ばし、巻きつかせる。
大輪の花。銀色の薔薇の花を、次々と無限に咲かせ、花びらをまき散らす。
色こそ銀と控えたが、だがその花の名は、薔薇だ。花界の女帝。それはこれから未来への、熱い期待の表れ。積極的な、幸せへの希求という、あからさまな宣言だった。
『月薔薇の姫君――』
思わずそう呼びかけた。
なんと、ブランが肌にグラフィックを走らせた!
それは、人魚姫。銀色の人魚姫。十数体もの姫君と、彼は泳ぎ始める。
悲しいかな、動物ゆえの、拙い、ベタ一色だけの影絵のようなグラフィック。
ああ、だがその思いは強烈に伝わる。
マリーを愛してる!
その純粋さに、妬ける思いを感じたのだった。
僕は、海パンの着装を解除し、全裸になる。
そして、グラフィック。
肌に映したのは、これしかない。
豪勢な花吹雪――!
桜だった。
マリーが笑顔になった。
うん――!
僕たちは、どこまでも、落ちていく。




