ブラン 2
『ワタシの親はお金がなくて――』
マリー、前を向く。
『一年と少し前。誕生日に、初めて、オリハをプレゼントしてもらえた』
幸せそうに続ける。
『オリハを身に纏ってから、人生が変わったわ。まず、何をしたと思う?』
順当に、
『空を飛んだ?』
『逆。海に潜った。何故だかわかる?』
即答した。『感謝の気持ち?』
笑ってくれた。『もう! ずるい男!』
『――でもその通り! 原石を見つけるために、毎日海に潜り続けた』
『陸地は、ほとんど、探し尽くされているから……』
『一個見つけるだけで、豊かになれる!』
『君も、称えられるべき勇者さ』
首を振った。
『頼もしい従者のおかげだったわ。ブラン!』
応えて巨体が一うねり。
『――ブラン?』
『この子とは去年の秋に出会った。アルビノの個体で、仲間外れにされたのか、弱って漂っていた。今にも死にそうだった』
『……』
『偶然、ワタシは、初めての、指先ほどの原石をゲットしてて、よろこび勇んでの帰り道だった。これで家族は金持ちになれる。でもそれは、ぎりぎり、ブランに充てがえられる量でもあった。分かれ道だった。ブランに与えた』感情を押し殺した声――
鯨の黒い背中を見る。これは、白い肌を隠す、グラフィックだったということだ。
『なかなか、できることじゃない』
この言葉を待ってたか、茶目っ気のある顔になった。
『おかげで、ブランが探索に協力してくれるようになって、ついに一か月前。鉱脈を探し当てた! オリハ寿命のラスト一日! ブランが見つけてくれた! やってくれた!!!』
興奮で小刻みに震えている。
あらためて背中を見る。アイアン・ホエール。つまりこれは、真新しい原石コーティングということだ。
『おめでとう』
僕は拍手した。『とても運命的だ!』
『キミとの出会いも――』言葉が細く消える。
『身近に、君と似た境遇の人がいる。一度破産して、日本近海に活路を求めた。賭けに勝って、今では日本指折りのリッチマンになった。破産する前から態度変わらずお付き合いしてた一家に、販売を任せてくれてね。今でも仲良くお隣付き合いしてるそうだよ』
『ワタシもそうなるのね。夢のようだわ』
『ほんとのことさ』
力強く頷き、そしてマリーは昂然と胸を張った。
『到着したわ! 今からダイブする! 覚悟はいい?!』
『海中世界か。ただただ、楽しみだ』着装を海パン姿にする。
相手と手を結ぶ。
『行くよ! 二人の未来へ!』
『おお!』
そして僕らは潜水した――




