夢
夢、宇宙の夢
宇宙の誰かが夢見ることによって、その宇宙から子宇宙が派生する
と、いうことは――
この宇宙もまた、親宇宙の誰かの夢から誕生した宇宙
つらなる無限
宇宙こそ夢
夢こそ宇宙 こそ夢こそ宇宙こそ夢こそ……
※
『ポヨヨ、ポヨヨ――』目覚ましの音。止めようにも直接鼓膜が震えてるのだからどうにもできない。同時にパジャマが起床マッサージ攻撃も発動させるものだから、ますますだ。
「わかったってば……。ほら、起きてる起きてる、ペキカンにグッモーニンだ……」
もちろん聞いてもらえず、強制的に起床させられる。自動的に歩かせられる。
食事は――つう、オカンの声。
「いい。昨夜の余分が備蓄されてる」
「ちゃんと実のある物を摂らないと」
「はいはい……」
あくびと共にやり過ごし、そのままベランダへ。この部屋は100階だった。いい眺め――
少年、寝ぼけ顔のまま柵を乗り越え、飛び降りた!
とたん。
パジャマ姿が、パリッとした半袖ワイシャツ、黒ズボン、艶のある革靴、という制服に変じ、さらには――
背中に白い翼が生え、日に輝かんばかりに羽ばたき――
少年を青い大空へと浮かび上がらせる!
数回羽ばたいて前進して。「あ……」という声。翼の動きがピタリと止まる。
体は空に浮いたままだ。落ちない。
やがて少年は、片手で顔を覆う。「うぬ……」
今日から夏休み。それも高校最初の夏休みだった。
完全に目が覚めた。
こんなマヌケやらかしたの、オリハのパターンモードの、セッティングをほったらかしにしたからだ。
ばつが悪いことに、こういうときに限って、地上から見られているものだ。フレッシュな、笑い含みの声が届けられた。
『シーン! 白神深くーん! そんなカッコで、どこ行くんだ~い』
顔を下に向ける。視界をズームモードにする。いた!
隣のベランダ。朱いパジャマ。子供っぽいシズカちゃんヘアー。そして笑顔。馴染みの相手が、拡大鮮明に見つめ返されたことに気づいて手を振る。『ほーい!』
「海原真理――」
僕は唇で笑んで手を伸ばす。オリハの触感をシンクロさせる。マリと握手し、引っ張った。
心得て右手を上に、彼女もまた白い翼を広げる。ベランダからふわっと浮かぶ。花のように泡のようにゆるやかに上がってくる。向かい合った。
パジャマが、今はパリッとしたセーラー服だ。「つきあいだ!」
その素敵なミニ・ミニスカート。「のぞくなよ!」「どうせ黒影だろ」「それはどうかな1年男子!」「ばか2年――!」
そうして僕らは、青空にクルクル舞い上がりながら笑いあった。