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ホテルビーチ
真夜中。
窓を叩く小石の音、という如何にも古典劇的な手法で、目を覚めさせられた。
短パンにシャツ姿のまま外に出てみると――無人。そして暑い。見上げると、夏の、満月の夜空だ。
「……」
気配はする。
導かれて庭を抜け、浜に出ると、きらめく波の音。一瞬、息を飲んだ。月の滴を散りばめたその中に、今、生れ出たように、少女が一人、うつむき加減に立っていて。
おずおずと顔をあげる。あの、ワンピース水着娘だ。
「ハイ」硬くも、印象深い声。
「はい……」上ずった声で、とりあえず。
そして美しくもみすぼらしい格好の女の子は、自信なさげな様子で、切実に聞いてくる。
「本当に、買って、くれるの?」とぎれとぎれながらも、ちゃんと最後まで言う。
顔が耳まで熱くなった。女子にここまで言わせて、どう答えればいいのだろう。言葉につまった。
「うん……」
ひと呼吸入れた。落ち着け。そう。まず、確認だ。誠実に、相手と目を合わせた。
「商品を提示してほしい」
美少女はようやく、吐息とともに、笑みを見せた。




