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人助けのはずが……

 ドンと女の子の一人は、壁際まで追い詰めたスキンヘッドの大男の顔の横の壁を打つ。

 所謂、壁ドンというやつだろう。


「ナンパ、でしょうか。それにしては歪ですが……、どうしますかお嬢様」


 いや、どうするって訊かれても。


「無視よ。いい、リサ。ああいうのには関わってはいけないと昔お祖母様が言ってたの。行くわよ!」

 

「あ、お待ちください! そこの人、お助け下さい!」


 呼び止められた。


「あの、お嬢様。助けを求められていますが」


「ええー……、自分で何とかしてほしいのだけど」


「お願いします! 絡まれているんです」


 ええ、それは見れば分かるわ。

 

「ああん? あまり大声出さないでよね」


「ここでやっちゃうよ?」


 バンと壁を叩き、その音で「ひっ!」と筋肉男の肩が跳ねる。

 絡んでる女の子たちだ。


「それにあんた達も何なの? 私たちに文句あるの?」


「まさかこの子を助けようとするつもり? ダメだよ、この子は私たちが先に見つけたんだよ」


「うんうん、邪魔しようなんてダメ」


 女の子たちは口々に言う。

 そんなつもりはないのだけど。

 いや、本気(まじ)で。


「お願いします、お助けをー!」

 

 とはいえこのままでは一歩進む事に大声で話しかけられて目立つ。変装の意味も無くなる。

 というか実際に今も行き交う人達の視線の的になっていることを私は知っている。


「仕方ないわね」


 私は立ち止まり、彼女たちの方を見て、指をさす。


「やりなさい、リサ。あの筋肉達磨(マッチョ)を助けるのよ」


「私がやるんですか? こういう場合は、お嬢様が助けるのが通例だと思うのですが……」


 ふっと私は笑い、


「リサ、私の力を見誤らないことね。私があれを助けることができると思っているのかしら?」


 傲然と胸を張り、言い放つ。と、リサは苦笑する。


「それは別に威張れることではないと思いますが……まあいいでしょう。分かりました。ちょっと助けてきます」


 私の命令に従ったリサは、一瞬にして彼女たちの元まで詰め寄り、大男のスキンヘッドを掴むと、そのまま舞う羽根のように飛び上がる。


 相変わらず馬鹿げた身体能力だ。


「え、…ええええええええええ!? い、いたい、もげます! 首がもげてしまいますぅううう」


 大男は泣き喚きながらリサと共に飛んでいった。

 

「ふっ、これで助けてあげたわ」


 私はその背を見送り、踵を返す。が、


「ちょっと待って」


 肩を掴まれて止められた。

 ええ、誰かは分かっているわ。


「な、何かしら」


「あんたのせいで私たちの獲物が逃げちゃったじゃない。どう責任とるつもり?」


 大男に絡んでいた女の子たちだ。

 あの阿呆侍女(バカメイド)筋肉達磨(マッチョ)の方を連れていったせいで、こいつらは何事もなくここに残っている。

 こういう場合、絡んでた方をやっつけるのが普通なのに何やってるのよ、あの馬鹿。

 

「えっと、その……」


 たらりと汗が一筋、頬を伝う。

 ここはとりあえず言い訳を……。


「私、何も知らないわ」


「いや、あんたがあの女に命令してたの見てるんだけど……」


 ダメでした。

 どうしよう。

 私のように手折(たお)れば砕ける硝子の花弁のようなか弱い女の子に、こんな状況を打開することはまず無理だ。

 

「ねえねえ、もうこいつでいいんじゃないかしら」


「うーん。でも女だよ?」


「女の子……、まあたまには……じゅるり」


 何こいつら。

 私、聞いたことあるわ。

 世の中には……にくしょくけい?たるものがいることを。

 

「えっと……、うん、とりあえずさようなら!」


 私は手を振り払って、逃げた。

 全速力で。


「うぎゅっ」


 勿論捕まった。


「逃げるなんて酷いなあ。ほらさっさと来なさい。私たちの秘密基地(アジト)まで案内するよ」


 首根っこを掴まれて、私は連れていかれた。


(リサ……、リサちゃーん? さっさと戻ってきて……、もう馬鹿(ポンコツ)扱いしないから)


 だが、現実は無情なり。

 私は半ば引き摺られるような形で、女の子たちに連れていかれた。

  





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