のじゃロリ神様との出会いの件について
というわけで、俺、小鳥遊康太は死んでしまった。
「っと、というわけで、じゃ伝わらないか」
なんて事はない。学校からの帰り道、いつも通り幼馴染と妹達とくだらないお喋りをしながら帰っていたのだが、そこに居眠りトラックが突っ込んで来たのだ。
トラックの接近をいち早く察知できた俺は彼女達を突き飛ばした。までは良かったのだが、自分の身を守る事は間に合わず、ひき肉にされた、ってわけだ。
「やれやれ、我ながら、カッコつけ過ぎたかな……」
「お主はさっきから何を言っとるのじゃ?」
「いや、気にしないでください。つまらない感傷に浸ってるだけですから」
「ふむ、カンショー? まぁ、なんかよくわからんが、ワシの話を聞いてもらっても良いかの?」
ひき肉にされた次の瞬間、真っ白な空間に立っていた俺は現実から逃避するように直前の記憶を探っていたのだが、流石にさっきから俺の周りをぴょんぴょんと跳ね回る幼女を無視しきれなくなり、向き直る。
「それで、ここはどこであなたは一体どこの誰なんですか?」
「のじゃ! ここは天界じゃ! んー、まぁワシの職場兼家じゃの!」
にぱーっと笑って自慢げに答える幼女。
「……おいおい、職場が家って相当なブラックだな」
「ぶらっく……? ここは真っ白じゃぞ?」
な、なんということだ……。
「天界とやらはこんなブラック企業も知らないようなおバカな子供に仕事をさせているのか……?」
「のじゃ! しょくむたいまん? ってやつじゃな!」
「いや、それは全然違いますけど」
「むむむ……人間の言葉はききかいかいじゃの……」
幼女はうーん、と頭を捻らせるが奇々怪界も微妙に間違っている。複雑怪奇、の間違いだろう。
「いいから話を進めてくれださい。一々漫才に付き合ってると話進みませんし」
「えーっと、どこまで話したんじゃったか……。……くぅ……」
「寝んな!」
「はっ! ね、寝てないのじゃ! 決して寝てないのじゃ! えーっと、そうじゃ、ワシが誰かって話じゃったな。ふふーん、ワシはな、神じゃ!」
なんと、神。神と来たか。ふむふむ。
「つまりここは天界で、俺が死んだから神さまが直々に沙汰を下そうってこと、ですか?」
「うーん、話すと長くなるんじゃが……。まぁ、かいつまんで言えば、お前の今回の死はワシらのミスなんじゃ、すまん!」
「……は?」
「あのトラックじゃがなぁ、あのトラックを運転しとったのはワシの部下なんじゃが……八徹とか言っとって疲れがたまってたみたいなんじゃ」
なんというブラック! やはりブラックだったか!
「本当にすまん……。許してくれ、と言って許してもらえるとは思っておらん……。じゃが、この通りじゃ! ワシのことはなんとでもしてくれてかまわん!」
ガバリと土下座する幼女。これじゃどっちが悪者か分からないな。
「……顔上げてください。俺、別に怒ったりしてませんよ。そりゃ、家族や友達と離れるこのになったのは寂しいですけど、それでもまぁ俺の大事な人を守って死ねたんですから。後悔なんてありません」
「の、のじゃ〜……」
それに、こんな小さい子の涙を見て許さないほどの鬼畜に育った覚えはない。なーんて、口に出すのは恥ずかしいから言わないけど。
「さ、さて! 話を進めさせてもらうのじゃが、お前を生き返らせてやる! ……と、言いたいのじゃが実は元の世界にはもどしてやれんのじゃ……」
「あぁ、大丈夫ですよ。今更俺が家族の元に生き返りましたーって言って戻れるとは思ってなかったんで。別の世界に転生するってことですよね。どんな世界なんですか?」
「のじゃ! えーっとのう、元の世界には確かなかったはずじゃの、魔力」
「魔力! はい、空想上の力ですね」
「それがあるのが大きな違いかのー。文化はちょーっと昔のよ、よーろっぱ? が一番近いみたいじゃな」
「うーん、まぁ、詳しいことは行けばわかりますよね……」
「のじゃ! あとはそうじゃな、あっちの世界は魔力に当てられた人だの動物だのが凶暴化しておって、ちょこーっと危険なんじゃよな。そこで、じゃ、お主の身体能力と魔力をちょこーっと上げておくからの」
ちょ、ちょこーっと?
「ちょこーっと、って大丈夫なんですか……?」
「のじゃのじゃ! 大丈夫じゃ!」
は、はぁ……。よく分からないが神さまがそう言うならそうなんだろうか……。
「もう質問はないかの?」
「えーっと、そうですね。はい、いけます」
神様は満足そうにうなづいてこちらの手を握り
「む、そうかそうか、では行こうかの」
「……へ?」
「なんじゃ? まだなにかあるのか?」
「い、いや行くんですけど……。神さま、ついてくるんですか?」
「当然じゃ! わしらの責任で死なせてしまったのじゃ、多少の面倒はワシが見る!」
……な、なんとも強引な。
「だ、ダメかの!? ダメって言われたらあきらめるしかないんじゃが……」
「……いえ、別に構いませんよ。それに確かに知ってる人が一人もいないとなると僕も寂しいですから」
「の、のじゃー! それじゃ、お主、行くのじゃ!」
っと、そうだ。忘れてた。
「あ、そうだ、神様。もしよかったら名前教えてください」
「のじゃ?」
「だって、神様、だけじゃ他人行儀でしょう? それに、これから長い付き合いになりそうなんですし」
「……………………うぅ。そ、それが……ないのじゃ……」
「ん? 何がないんですか?」
まさか胸だろうか。いやまさかそんな、今そんな話をしてないのだから。
「だ、だから! 名前じゃ! 名前がないのじゃ! ワシの識別番号は神〇〇三号! だから神、とか〇〇三号って呼んでもらうしかないのじゃ!」
「うーん、それは味気ないですよね……」
「のじゃー……」
「003か……じゃ、みーちゃん、とかどうです?」
「のじゃ?」
「みーちゃん、ですよ。かわいくないですか?」
「か、可愛いとは思うが……」
「それじゃ、決定! 俺はこれからみーちゃんって呼びますね!」
「う、うむ! うむ! うむうむ! 苦しゅうないぞ!」
「じゃ、みーちゃんも、ほら、コウタって」
「の、のじゃ!?」
「いつまでもお主、ってのもアレでしょう? コウタって気軽に呼んでください」
「む……コウタ……コウタ! コウタ!」
「はいはい、なんですか? みーちゃん」
「呼んでみただけじゃー。そうじゃコウタ! その敬語はやめよ! ワシが許す!」
「そ、そう? わかったよ、みーちゃん。じゃ、今度こそ行こうか」
「うむ! 全てワシに任せよ!」
みーちゃんが地面に手をかざしヒラヒラと何度か震わせると足元に泉が現れ、同時に俺たちを光で包んでいった。
「いざ! 異世界へ!」
「のじゃー!」