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同じ形で

作者: 春藤優希

誤字・脱字がきっと酷い。

語彙力・表現力が皆無。

授業の課題で書いたものを少し書き加えたものです。



書いてほしいお題とかあれば、Twitterやっているのでのそちらか、コメント等にお願いします。


@haruhuziyuki




 ……えるかな。今度も―――。

 何でこんなに胸元が痛いんだろう。何でこんなことを考えているんだろう。なんで、何でが溢れてきてもそれは人形の戯言で。ただそんな疑問が頬を伝った。


***


  はじまりは一人の人形造師の心埋め。愛する妻を喪った悲しみから、ただその溝を埋めるために人形を創った。喪った妻と瓜二つの動く人形を―――。それからその技術は水の波紋のように、世間へと広まっていった。そしていつしか人形は、当たり前のように動くものへと変わっていった。

 それは人間にとっては良いものだったかもしれない。人間にとってはありがたいものだったかもしれない。けど、ただ人間の『欲』の為に生まれた人形は―――心を持たない()()と思われているものはどうだったのだろう?ただ、人間に命令されたことをこなすだけの人形は何を思いたかったのだろう?

 人形として生まれたなら、人形として生きていかなくてはいけない。人間として産まれたなら人間として生きていかなくてはいけない。そういった理不尽な世界に生を受けたことが人形の過ちだったのだろうか。そんなことを考えることを知らないまま、人形は窓の向こう側の眩しい世界に憧れた。

 窓の外に向けられた瞳は虚ろで恨めしそうなそんな寂しい瞳で、はしゃぐ人の子を見つめた。

 人形とは違う『滑らかな手足』。人形とは違う『光輝した瞳』。人形とは違う『成長する身体』。人形とは違う『音を奏でる声』。人形には解らない『感情』。そんな、人間にとっては当たり前のものが、人形たちは欲しかった。

 「もし、自分たちが人間だったら……。」というもしもの夢に酔いしれながら、一体の人形は瞳を閉じた。

 それからどれくらいの時が流れたかは知らないが、人形は瞳を開けた。人形の目の前には人形の見知らぬ顔。隣では人形造師が、嬉々とした顔で話を進めていた。何の話なんかはもちろん人形には解らない。ただ、人形造師に促されて、久しぶりにかくかくと躰を曲げた。すれば、目の前にいる人間は笑った。

―――まるで〝本物〟の人間みたい。

 そう言って人形造師に札束を渡すと、ポカンとしている人形の手を引いた。〝本物〟とはなんだろうか。人形の瞳が微かに揺れたことを知る人物はいたのだろうか。

 人形が元居た場所―――人形屋から手を繋ぎながら、アスファルトの道をしばらく歩いた後、人間は自らの名を口にした。そして、人形の名を訊ねた。だけど人形には解らなかった。その意味が―――。

―――ねぇ、あなたの名前は何て言うの?

 人形はただ首を傾げるばかりで、口は閉ざしたまんまだった。それでも人間は、微笑んだまま手を離さなかった。寧ろ離すまいと、力を強めた。そして、

―――大丈夫。今から一緒に学んでいきましょう。

 人形は手から伝わる熱に何かが込み上げてくる錯覚に陥った。ただ、その正体は知らなかった。

 そして一人の人間と一体の人形の生活が始まった。何も知らない人形に人間はいろいろと教えようと考えていた。そして、人形が買われてから数日が経った頃。人形に少しづつ変化が起きていた。

 それは意思だった。人形は自分の中に芽生えつつあるそれが気持ち悪く思えた。でも、不思議とそれが自らの胸元を温めていることに気付いていた。そんな人形に、知ってか知らずか人間は涙をその目にいっぱい貯めながら、こう言った。

―――ねぇ。あなたに名前がないのなら、私が付けてもいいかしら?

 人形はこくんと、首を縦に振った。

―――あなたの名前は………。

 人間の目からぽつり、と溜まった涙が零れた。人形にはそれが美しいものに見えた。そして、その人間が奏でたその声が今までで一番温かかったことに気付いた。

 名前を貰った人形の瞳は今まで無機質だった世界を彩り始めた。見るもの全てがキラキラして輝いていて、美しく見えた。

 この時ようやく人形は()()()()()()()()()()

 人形はそれから、今までは言われてから行動していたものが、自分から進んで人間の服の袖を引っ張り、「教えて」とねだった。人間はその様子を、涙をボロボロと流しながら喜んだ。

 ある日は文字を教えてもらい、ある日は温もりを教えてもらい、またある日は愛を教えてもらった。そして、人間のことも教えてもらった。人間はこの辺りでは富豪として知られていたことを。

 世界のきれいな部分をいっぱい教えてもらった後は、世界の穢い部分も知った。人形からしてみればどれも同じ形に見えるのに、差別ということをする人間の汚さや、人形には理解できないほど複雑な人間の意思。自分がかわいくて、他人を見捨てる人間の気持ちも。

 それらを見て知った人形は〝思った〟。結局はどれも同じなのに、どれも羨ましいのに、どうしてそれを比べるのだろう、と。

 その答えが知りたくて、人間に問うた。しかし、

―――総てのものに答えがあるわけじゃないのよ。

―――寧ろこの世界に、答えなんて最初から無いのかもしれないわね。

―――答えを求めて、争うのかしらね?

 そう言って、人形の頬をそっと撫ぜた。その手はしわしわで、細くて今にも消えてしまいそうだった。人形はただその手を愛おしそうに両の手で包んだ。

 人間と人形の幸せな時は長くなかった。人形が買われたあの日から数年たった後、人間はその寿命を全うし、息を引き取った。

 しかし、それを理解できない人形はその手を取って力強く握り締めた。ぎゅっと握り締めれば人間が、「痛いよ、………。」と、自分の名前を呼んでくれることを覚えていたからだ。でも、その手にあの日と同じ温もりはなく、氷のようにその現実を突き付けるだけだったのだ。人形の心に冷水が流れ込んで、心の奥底に眠っていた種から芽が咲いた。それがじわじわと樹になって、人形の口から花を咲かせた。―――〝悲しい〟という花を。…人形は独りになった。

 人形はふらふらとする足取りで家を出、人間が最期に言った言葉を反芻しながら、ただ歩いた。

―――ごめんなさい、あなたを独りにして。ごめんなさい。

―――これは私からの最初で最後の〝命令〟、かな?

―――自分が生まれたことを憎まないで。どうか、―――。

 最近やけに痛む関節球体。最近になって自分が見る景色が少し高くなったことに、自らにも終わりが近づいているのか、人形はふと思った。しかし、そんなことは気にもせず、人間と歩いた想い出の道を辿った。

 一緒に買い物に出かけた市場とか。初めて見た海とか。初めて温もりと必要とされることを知った公園だとか。初めて会った、人形屋だとか。ただ、本のページをなぞるように愛しむように訪れていった。そして最期に訪れたのは、人間(かみさま)の家が見下ろせる高い丘の上。人間(かみさま)が好きだったルピナスの花とカザニアが風に揺られて歌を唄っていた。

 この丘の下には人間(かみさま)の家がある。人形(ボク)はそれに釣られて崖の方へとずりずりと足を進める。

 本当なら主がいなくなったと、人形屋にもう一度戻るべきなのだろうが、人形は〝知って〟しまったのだ。

 自分に名前があることの幸せを。自分が必要とされることの幸せを。学ぶことの幸せを。自分の意思があることの幸せを。ご飯を満足に取れることの幸せを。自分の名前を呼んでくれる人がいることの幸せを。愛してくれる人がいることの幸せを。そして、人形は〝考える〟。

 人形(ボク)を創ったのは人形造師(にんげん)かもしれないけど、人形(ボク)産んだ(つくった)のは人間(かみさま)だった。でも、その人間(かみさま)が居なくなってしまった。死んでしまった。じゃあ、また人形が壊れれば創ってもらえる?…愛して、もらえる?

 足が痛くて痛くて仕方ない。どうしてこんなに痛いのかな。こんなんじゃあ、人形として失格だ。ああ、早く、ハヤクコワレナキャ。


 居なくなってしまった神様との約束を思い出しながら、想い出を胸に抱きながら。遠ざかる蒼空に願いを込めながら。ボクは〝哂った〟。

 「ま、た………あ………。」

―――どうか、幸せになって…。

 ねぇ、ボク幸せだよ…。


 ぐしゃっと、身体が地面に叩きつけられる音がして人形はその目を閉じた。


後日、崖下で一人の人間の遺体が見つかった。その手には、サギソウの花と、クルクマの花が握られていた。その傍らには寄り添うようにルピナスの花とカザニアの花が手向けられていた。



ここまでお読みくださりありがとうございます。

課題で書きましたが納得できず、少しだけ加えました。だけど、納得できないというか…。


冒頭は最期の人形の言葉と続いており、タイトルまで続いています。一文にすると

『また、あえるかな。今度も同じ形で』

になります。人形は最期の最後で、自分が人間と気付き、哂いました。

洗脳の話なのか、自分でも書いてて?が浮かびました。


『世界と人と神と』や『壊れた道化師と猫かぶりの学園王子』も今執筆中です。

楽しみにしてくれているという心優しき人がいらっしゃたら、もう少々お待ちください。

因みに花言葉は、

ルピナス:いつも幸せ

カザニア:あなたを誇りに思う

サギソウ:夢でもあなたを想う

クルクマ:あなたの姿に酔いしれる

です。


次回もお願いします(*'ω'*)



Twitterもやっているのでよろしかったら。

@haruhuziyuki

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