森の中
続きです
「うっ…ここは…」
目が覚めるとそこは辺り一面緑色で埋め尽くされていた。
ここは森か…?いや、でもさっきまで俺家にい、いたよな…
そうだ、俺あの女の子に…あれ、あの女の子はどこだ…
まずいな、自分の置かれている状況が全く分からない。焦る気持ちを落ち着かせて、そんなことを考えていると、ふと後ろから何かが近づいてくる気配を感じた。
「な、何だ…」と思って振り向くと、そこには狼のような生物達が自分を見つめていた。
一目見てこいつが狼でないことは分かった。それは狼とは決定的な違いがあったからだ。こいつには一本の角が生えていた。
「シルバーファング…」
俺はそう呟いていた。以前、学校で魔物についての講義を受けたことがあった。その時、魔物の一種であるシルバーファングについても触れられていた。
「こいつを見かけたら、直ぐにその場を離れるんだぞ!気づかれたら逃げられないと思え!」と…
その時は、魔物に出会うなんて考えもしなかっただろう。なぜなら十歳の少年が魔物の生息地に立ち入るなんて自殺行為と同等のことだったからだ。
気づいたときにはその魔物達に囲まれていた。
「ああ、終わった…ははっ…」
何だか笑えてきた。この理解の追いつかない状況に…
嫌だなぁ、まだ死にたくないな…
だが、何故だか魔物達は一向に襲ってくる気配がない。
「…はひっ?」
そんな抜けた声を発していた。それもそのはず、魔物の集団をかき分けて現れたのはあの時の少女だったのだから。
「やっと、見つけた!」
そう声を上げて少女は近づいてきた。
「ごめんよ、弟子くん。私は転移魔法がそんなに得意じゃないんだ。許しておくれ!」
片目を瞑り、手を合わせてそういってきた。
いや、弟子くんって…
「は、はい…」
正直、彼女が何を言ってるのかさっぱりだったが、とりあえず自分の命が助かったことに安堵し、そう返事を返した。
「じゃあ、早速だけど一度私の家に来てくれる?説明はついてからするからさ」
彼女はそう言いながら、一匹のシルバーファングを近づけてきた。
「大丈夫、今その子は私が使役している状態だから。さあ、その子に乗って、しっかり掴まってないと落ちちゃうから頑張って!」
と彼女は無責任な笑顔を向けていってくる。
そもそも魔物を使役ってできるもんなのか?…と思いながらじっとしているわけにもいかないので、流されるままにその魔物の背に乗った。
「さあ、いくよ!」
その声とともに俺と彼女の魔物だけが走り始めた。
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およそ三十分ほどで彼女のいう家に着いた。
彼女の家の中は奇妙なものがあった光る角や七色の石、足の長い虫など、それはもう沢山…
俺はある一室に案内され、お茶を用意するからそこに座っててといわれた。
その部屋を見渡すと入口にあった部屋とちがい、とても普通…いや、すごく落ち着いた雰囲気を出していた。
「さて、自己紹介がまだだったよね。私の名前はアイリーン・ブリュンスタッド。フリーの魔法師さ!」
俺より3つ、4つ歳上ぐらいなのに魔法師って…そんなことあるのか…
「今、見た目で判断したでしょ!やんなっちゃうなあもう…こう見えても私はあなたよりずっと歳上なのよ!」
彼女は頬を膨らませていってきた。
その仕草がどうも年上っぽく見えないんだよなぁ…
「あの、アイリーンさん?」
彼女は得意気に、
「アイリでいいわ!それにさんじゃなくて師匠って呼んで!」といった。
「じゃあ、師匠…じゃなくて、何で僕が弟子になっているんですか?」
「『君は今日から私の弟子だ。異論は認めないぞ!』そういったでしょ?聞こえてなかった?」
「いや、説明になってませんよそれ!」
この人は横暴なのか、それとも頭が少し弱いのか?
「君、全く魔法が使うことができないのよね?そうでしょう?」
「何でそれを…」
「だから私はあなたを弟子にしたのよ!」
彼女はその赤い瞳に熱をもたせ、笑みを浮かべながらいった。
それを知っていて弟子にとりたいって、この人はいったい何を考えているのだろうか…