祭り二日目は二日酔い
だいたい、二日酔いというのは最低な気分にさせてくれるものだが、
「ワインでやっちまうと……きつい……」
頭痛がズッキンズッキンズキズキズキ!!!!!!という感じで収まらないからだ。
「今度違う世界に行くなら絶対『二日酔いの無い世界』にするぞ…………」
と強く心に誓う。
しかし、ここはどこだろう。
シーツはシルクぽい肌触りだし、ベットはやたら大きい。
どうやって帰ったかわからない、なんてのは久しぶりだし
目が覚めて知らない場所にいた、なんてのは初めてだ。
上半身を起こして周りを見渡すと、これまた大きなドアが見えた。
ああ、これならこんな大きいベッドの搬入も簡単だな、とかぼんやり思っていたらグルグル世界が回り出す。
急に動いたので目が回って酔いも回ったようだ。気分最低ぇ……
そのせいで、掛け布団まで歪んで盛り上がって見える。
「お、起きたのか?昨日はお疲れだったのじゃ」
その布団の盛り上がりの中からリーナが顔を出した。
「昨夜は凄かったぞ、おぬし。もうわらわは一晩中翻弄されてもうたぞ」
「まさかっ!」
一気に酔いが吹っ飛び、自分の下半身をあわてて確認する。
「大丈夫?かな?」
「そりゃのう。ただ抱き枕にされておっただけじゃし」
「なんだよ、脅かすなよ……」
本気でびっくりしたわ!
「ふむ、そこまで嫌がられると傷つくのじゃ。ならば無理矢理にでも頂いてしまおうかのぉ」
「え、ちょっと。リーナさん?」
リーナは布団から体を出すと、俺の腰の上に乗ってきた。
あ。この格好、裸ワイシャツというヤツだ!
一回女性が訪問してくれるサービスでオプションにつけたことがある。
「せっかくヒトと『同じ体』になったのじゃ。ヒトの色々を体験できる良いチャンスといえるのぅ」
「……何をする気だ?」
「おぬしがこういう格好が好きだ、というのはよぉく知っておるのじゃ。ま、その。女性のてくにっく、も含めて、おぬしの記憶の一番奥にあった隠しフォルダから映像で引っ張り出して研究済みじゃ」
この世界に転移してきたとき、こいつに俺の記憶全部見られてるんだよなぁ……
やっぱり、そういう記憶も全部アウトだったかぁ
というか、むしろ、それ探しまくったんじゃね?
「カネもいらんし、病気も心配いらん。安心して頂かれるがよいのじゃ」
「やめろお――っ!そういう問題じゃねぇぇぇ!」
どったん、ばったん逃げ回っていたら酔いがまた回ってきて動けなくなる。
「くっくっく、観念したのかえ?大丈夫、やさしゅうしてやるでのぉ」
俺を押さえつけて、「じゅるっ」という感じで妖艶な微笑みを浮かべるリーナ。
……もうダメか!と思ったところでノックの音がした。
「おはようございます、ダニール・アルテミエフ様。朝食の支度が整いましたので食堂までおこしくださいませ」
「今、行きますぅ!」
助かった!これで逃げ切れる。
「それでは身支度のお手伝いをさせて頂きます」
「失礼いたします」
と声が聞こえてきたかと思ったら、ドアがいきなり開いて若いメイドが2人入ってくる。
「あ」
「あら?」
「あらあら」
ベッドの上で少女に押し倒されている俺。
誤解されても仕方ない状況だ。
メイドはこちらを見ると
「大丈夫です。ここは貴族の方向け宿泊部屋ですから、お客さまの秘密は厳守させていただきますのでご安心くださいませ」
「続き、なさいます?ただ、当家の主人がアルテミエフ様をお待ちしておりますので、手早くちゃちゃっとお願いいたします」
「いや、しませんから」
「そうじゃのう。せっかくだからゆっくり楽しみたいのでまたにするのじゃ」
これは気をつけないとまた襲われそうだ……
「ところで、飲み過ぎて記憶無いのですが、ここはどこでしょうか?」
「あら、それほど頑張って飲まれたのですね。おかげで祭りも盛り上がっているようです。感謝いたしますわ」
「ここは、昨日お客様が試飲式をされた城の中でございます」
ああ、あのまま潰れたのか……
「ところで、俺結局何杯飲んだんですか?」
「確か4杯でダウンされていましたわ」
げ、祭りの記録を抜くどころじゃなかったな。
「じゅうぶん平均ですわ。毎年記録に届かないときにはちゃんと村人が後を継ぎますので」
飛び入りの民衆が代わりに飲むというシステムになっているようだ。
じゃぁ、俺こんなに無理する必要無かったよね……
「それではお支度を整えさせて頂きます」
俺とリーナは全部脱がされて、体を拭かれて、用意された服に着替えさせられた。
拭かれてるとき、ちょっとナニがアレの感じになって恥ずかしかった……