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エイプリルフール

作者: 秋雨 玲翔

今日は4月1日。

何の日か?

「今日、彼女できたんだよ!」

「私は宝くじに当たったの!」

なぜそうなったのかわからないが嘘をついてもいい日らしい。そして、日本人はこの日を妙に好む。

「…そうか。」

そんな日を俺は冷めた目でいていた。

元からお祭りやイベントが好きじゃない。騒がしくして何が楽しいのか。

一応エイプリルフールにはルールがあるらしい。どこからか聞こえてきた話では午前中までとのこと。

「なんだよ。彼女できたんだから祝ってくれよー。」

「…おめでとー。」

パチパチと適当に拍手する。

友人の付き合いだとしてもこの日ばかりはめんどくさい。

「ノリが悪いな。楽しくないか?この雰囲気。」

「馬鹿らしい。」

「……それ言われたらおしまいだ。」

少し落ち込んだ友人を見て居心地が悪くなった俺は少し外に出ることにした。気分転換ってやつだ。

この学校には花壇の近くにベンチがある。休み時間など使えるが人気がないので俺はそれを利用してたまに昼寝のベッドとして使用しに来る。

「……。」

いつものように寝転がり寝ようとした。

すると、

「ね、こんな所で何をしているの?」

「うん?」

目を開けて声の主を探す。

すると、女の子が立っていた。

制服ではなく薄いピンクっぽいワンピースに桜の花のような形と色のヘアピンを付けている。身長も高くもなく低くもなく、けど見た目から明るい印象を受ける子だった。

一言で言うと春の花みたいな印象だ。

「こんな所で何をしてたの?君は。」

「……誰?」

「うーん?人間だよ。」

そうやってにっこり笑う女の子。

「そりゃわかってるけど、学校の人じゃないの?こんな所で何をしてるの?」

「お散歩かな。良い天気だから歩きたくなったの!」

「確かに良い天気だけど学校に入ってきたらダメだよ。」

「大丈夫。許可は取ってあるのー。特別なの。私は。」

「……ならいいけど。」

少し怪しいけどあんまり深入りしても女の子に悪い気がした。なのでこれ以上は追求しないでおいた。

「ね、私もそのベンチ使いたい!座らせてー。」

「おっと?」

いきなり俺の体を起こしてその間スペースに腰を掛ける。

「今日はエイプリルフールだよ。君はどんな嘘をついたの?」

「俺は何もしてないよ。」

「どうして?」

「興味ないから。」

「せっかくだからしようよ?私はもう嘘ついたから君の嘘を聞かせてよ。」

「……。」

めんどくさい。けど、この女の子の積極的さと笑顔に負けた。

「なら、俺は嘘をつきません。」

「……なるほど。面白いね!」

「……そうか?」

「うん!人間らしい嘘だと思う!」

「確かに、人間にしかできない嘘かもね。」

俺が言ってると女の子は学校の時計を見ていた。

「……そろそろお昼だね。私の嘘の種明かしをしようかな。」

「そうだね。いつ嘘をついてたの?」

「うーん。なら目を閉じて。私がOKって言うまで。」

「うん?わかった。」

女の子に言われるまま俺は目を閉じる。

「うん。ちゃんと目を閉じてる。じゃ、OKだよ!」

……。

「……?」

女の子の声が遠ざかるような感覚がして目を開けると俺はベンチで寝転がっていた。

「今のは夢?」

そう思った時、俺の体の上に小さい物と紙切れが置いてあった。

1つは……、

「さっきの女の子のヘアピン?」

そう。桜の形をしたヘアピンだった。

そして、紙切れを見る。


"私の嘘は、人間だよってことでした。お花も嘘をつきたかったの。少しは楽しめた?エイプリルフール。面倒くさいなんて言わないで来年は楽しんでね? 桜の木より"


少し理解に苦しんだが時間が経つにつれて俺はわかるようになった。

少し不思議な時間と花の本音。それは短い時間だったけど俺にとっては楽しい時間だった。


来年から俺は友達と小さい嘘をついてエイプリルフールを楽しむようになった。この桜の花のヘアピンを持ちながら。


"楽しんでね?1年に一度なんだから。"


花びらが散る桜を見たらそんなことを言われた気がした。

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