彼女は村娘 一話
「私がアヴァーナリ王女の影武者ですか!?」
王様に告げられた命令は、ただの村娘の私には壮大なものだった。
「声が大きいぞ」
「もうしわけありません」
「近頃、魔王達の動きが見られた。王女誘拐を画策しているのは明白だ」
「つまり、王女と年が近くそれなりに顔の整ったお前が選ばれたんだ」
「わ、わかりました」
元より王の頼み=命令なのだし、断ればこの場で始末か村の醜聞だろう。
すこしでも生きる可能性があるなら、魔王に拐われてもいいと思う。
「安心しろマノエル」
「レイジスト」
「えらばれし勇者の僕が魔王など挽き肉にして国民に配ってやる」
「それは遠慮したいかな」
「とにかく、安心してさらわれるといい」
「そう上手くいくかな?」
「一先ずお前は王女の隣にいろ」
「うん」
「影武者ぁ?」
ドレスを着た女は王女にしては態度が悪い。テーブルに足をのせて、肩の食い込みをポリポリ掻いている。
「お初にお目にかかりますアヴァーナリ王女殿下……ですよね?」
既に影武者とかじゃないわよね?
「どう見てもそうじゃんティアラ見ろティアラ!」
「すみません、すみません!!」
「まあいいや、アタシ王女だし対等な友達ってのがいないからお茶しよ影武者」
王女はティーカップを置いてくれた。
「殿下にこのような真似を……すみません」
さすがにティーポットから直に飲まないのね、ああよかった。
「アンタ謝りすぎ~!!」
――普段よく言われる。
「マノエル~!」
「お、お兄ちゃん」
なんか泣きながら現れた。過保護で最近はうっとおしい。
「お前が影武者として城に暮らしてから兄は寂しい!」
「バカなのこいつ、まだ一日もたってないじゃん」
口は悪いが王女が正論を言う。
「マノエル、彼女は東国の学園にいるスケバンか?」
「殿下だよ図が高いよ!」
兄の頭を下げ一緒に謝る。