記録その八 ラルーはやはりヤンデレであった
「ッ・・・!
ここは・・・・?」
「あら? 目覚めたようね?
おはよう、イヲナ」
「・・・なんだ、この状況は・・・?
こんな目に遭う心辺りが無さすぎるのだが・・・」
私は現在、ホテルの一室と思われる部屋のベットに
手錠で監禁されていた・・・。
冗談であろう・・・? そう信じたい・・・。
ルクトの姿は見られぬが、ラルーが問題であった。
ラルーはニッコリと微笑みながらその手には大鎌が握られており
その眼は妖しく紅く輝いていた。
室内は電気が付いていないため、なおさらその瞳の輝きは妖しさを増している。
そして・・・髪を一つに結び灰色の制服を着ていた。
「・・・なんだ、そのふざけた格好は・・・」
「ずっと、この格好で誰かに褒められるのにね・・・?
憧れていたの、でも絶対外じゃ出来ないから・・・
出来なくてね・・・」
「・・・私に褒めろと・・・?」
「いんやぁ?
率直な感想を述べて欲しいだけよ~?
ねぇ? 答えて・・・くれるよね・・・?」
「・・・」
その灰色の制服に髪を結んだラルーはとても良く似合っていた。
最も瞳が輝き、大鎌さえ持っていなければ率直に言えたはずなのだが・・・。
下手な答えをすればこの首を刎ねられかねない・・・。
・・・いや、素直に答えてやるしかないようだ・・・。
「に、似合っているのではないのか・・・?
そもそも、なんで外では出来ないのだ・・・?
あと、なぜ私を監禁している・・・?」
首を刎ねられる可能性を考えるとついつい時間稼ぎに
質問に質問を重ねてしまう・・・。
「・・・クスッ・・・
似合っているんだぁ・・・私・・・
なら、後悔だなぁ・・・
もっと、この格好で青春を謳歌したかったなぁ・・・」
「・・・」
ラルーは私の褒め言葉以外の言葉が聞こえていないようだ・・・。
しかし・・・青春って・・・まだぬしは13歳だろう・・・?
これからでもまだ間に合うと思うが・・・。
いや、待て・・・。
今 ラルーが着ている制服には見覚えがあるぞ・・・?
どういう事なのだ・・・?
「・・・ラルー、私の言葉くらい全て聞こえているのだろう?
なら聞こえていないフリをするでないぞ・・・
私の質問に全て答えよ」
私は業を煮やし強い口調でラルーに言う。
ラルーはそんな私の口調を聞きハッとしたように私と向き合い
冷ややかな眼差しで私を見下ろすと
「私、アルビノだって事は知っているでしょう?」
「ああ、知っているに決まっている」
「・・・アルビノとは
色素を司る細胞が極端に少ない人の総称
すなわち色素がないためその容姿は白い髪に白い皮膚・・・
容姿から違うし、その生活も違う
色素がないために日の光を浴びるワケにはいかなくなる・・・
皮膚がんになってしまうからね・・・?
でも私は力を使う事により、その問題を克服したのだれど・・・
見た目までは治せなかった
だから、他人には私は普通のアルビノの少女に見える・・・
そんなアルビノの少女が普通に日の光の下を歩いていたら、
不審に思うでしょう?
・・・だからこそ、私は顔を隠しておかないといけない
学校に行く時も、制服の上に黒いフードを深く被っていなければならない」
「・・・」
つまりは、本人は平気でも他人には彼女は異常であって
異常なのに普通そうに振る舞うのは不審がられる。
だから彼女はあるべき対策としてその容姿を隠す生活を
余儀なくするはめとなったワケだ・・・。
その為に自分を見てもらえない。
見てもらえない故に、青春の日々を過ごせなかった。
という事だ・・・。
だが・・・おかしい、青春も何もぬしの学校はもう―――
「あと、貴方を監禁している理由だけれど・・・
気付いていないのね」
「は?」
不意にラルーが私の監禁の理由を語らず
私が何かに気付いていないと指摘する
「気付いていないとは何だ ラルー
いや・・・もう理由など、どうでも良いから解放してくれ」
「ずいぶんアッサリしてるねー
イヲナはー
でもねー?
それは出来ないのだよー・・・」
「ふざけるな、真面目に詳細を語れ」
「り、了解!」
ラルーはピシッと敬礼すると
大鎌を地面に置いて話し始めた。
「あのですね・・・?
その、不意にですよ・・・?
イヲナさんを失うのが怖くなってですね・・・?」
「なぜ、いきなり私はぬしにそこまで惚れ込まれている・・・?」
「だってー!
イヲナさん、死なせるには惜しいですもの!!
しかも、“チェリーブロッサム”一口でフラフラしてるくらい
お酒、弱いようですし・・・
それに・・・良い雰囲気だったから?」
「・・・前は小さな子供だったはずが
気付けばもう大人の姿をして・・・あろうことにも色気づいてきおったか」
「そんな事はないわ!
ただ、心配なだけですッ!」
ラルーは目を見開き私の肩を掴む。
手錠が取れそうなのだが・・・。
にしても、酒に弱いだけで監禁って・・・。
どう考えても私を監禁する動機ではない。
詳細を明白にしなくては
「理由もなく私を心配するとは考えづらい・・・。
何か理由があるのか・・・?」
「・・・・・・イヲナ・・・
貴方・・・狙われているのよ」
「・・・私が・・・?
誰にだ?」
「・・・うぅ・・・!
イヲナとは仲良くなれそうなのに・・・!
奪われたくない・・・! 奪われるくらいなら、ここで・・・!」
「私の話を聞かんか!!」
突然、泣き出すラルーはナイフを靴下から取り出すと
その刃を私の首に押し付ける・・・
手錠があと少しで・・・取れるぞ・・・!
こやつに対しては勝気でいれば勝てるかも知れぬ・・・!
首を刎ねられて死ぬくらいなら、勝負に出て死のうぞ・・・!
「イヲナ、あのマンションの事件から2日が経っているの・・・
幸いにも警察にいる裏の人間が隠蔽工作をしてくれたおかげで
表ではもう、マンション事件は未解決事件として片付きそうなのだけれど
裏では・・・私とお兄ちゃんの“死神コンビ”が起こした事件だと
認知されている・・・これだけなら問題はなかった
これだけなら・・・」
「・・・無名の殺し屋たる私が絡んでいたから問題になっているのか?」
「正解
正体不明の無名殺し屋で
私達“死神コンビ”と行動を共にするような人間が
誰なのか解る人には随分と由々しき問題だわ」
「・・・確かにそれは厄介だな・・・
だから私を監禁して安全を確保した・・・
だがな? 言わせてもらうぞ?
全く良い解決策とは到底、思えないぞ?」
「・・・その通りよ・・・
でも他にいい解決策が解らないわ・・・!
ならば・・・奪われるくらいなら・・・!!」
そう言ってラルーはナイフを振り上げた。
それと同時に手錠が外れた。
私は咄嗟に手錠の鎖を振り上げラルーが手にするナイフに絡ませる。
彼女の思惑は分かった。
本当は私を守ろうとしてくれていたのだ。
ならば、私も教えなくてはならない
「ラルー、言わせてもらうが
私の正体を知っている者、組織はかなり限られている
冷静に考えればおよその察しがつく・・・
そして私の記憶が正しければその組織は
早めに潰すべき危険な連中ばかりが属している組織だ・・・
故に潰しても問題はない」
「・・・!!」
「ぬし、私の立場を心配してくれておったのだな?
ぬしはとうにその組織が敵であると知っていたが、
その組織を潰す事によって私の立場が危うくなる可能性を恐れたのだろう?」
「・・・そう、やっぱり貴方は仲間にして良かった」
ラルー説得に成功した。
本当に良かった・・・。
しかし、私を監禁するなんて
ラルーはやはりヤンデレであった・・・。
全く、洒落にならない被害を被ったが
これによって私がラルーに“仲間”として信頼された事が分かった。
監視人としては大きな収穫を得た。
「そうか、それは良かったな
ところで聞くがここはどこだ?
ルクトはどうした?」
不意に浮かんだ疑問を私は口にする。
「あ、ここね? ここはアメリカよ?
お兄ちゃんは貴方を殺すために毒を用意しに出掛けているわ?」
「・・・ぬしらという兄妹は・・・本当に・・・
いい加減に、他人の言葉を聞かんかッ!!」
私は耐え切れず叫んだ。
本当にこの兄妹は・・・。
この兄妹に限って私の感情は無意味に掻き乱される・・・。
勘弁して欲しい・・・!
次回はラルー視点の番外編でございます!