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ルクトについて

第2の作品にしてラルーの実の兄

“終の死神”ルクト


彼は、とても変わった男だと思う。


それが一貫して私が彼に抱く印象だ。


というのも

彼は妹のラルーと違い

目的がはっきりしていながら、謎めいているからだ。



最初の作品ラルーは

博士への復讐と殺人への快楽を目的に生きているが

他にも何らかの思惑があるような節がある。

そう感じるのは彼女の接触する前からあった疑問がきっかけだ。


ラルーは気が狂っている。

だから後先考えずに人を殺し

だからこそ、自分の創造主とも呼べるシース・クレイン博士ですら

何の躊躇いもなく、何の罪悪感も感じさせる事なく復讐しようとしている。


にも関わらず

彼女の“仕事”はあまりにも理性的に思える。


いかに静かに殺すか

いかに正確にとどめを刺すか

いかに相手を撹乱するか


その全てを計算しながら計画しているとしか思えないほど

彼女の仕事は鮮やかなのだ。


復讐に狂い、血と悲鳴、そして生首に狂喜する

そんな目先の快楽のことしか考えていなさそうな娘が複雑に計画しながら、

なおかつ複数の仕事を同時進行で成し遂げるなど、とても考え難い。


彼女の狂気の裏には深い知性があるのは明白だ。


だとすれば、目先の快楽ばかり考えているかのような言動や

生首に固執するなどの行動に矛盾が生じる。

知性のある人間なら、

そんな欲望を誰にも悟られる事なく隠す事が出来る。


なのに

あえて彼女は隠さず、大々的に・・・それこそ見せつけるように

その狂気をあらわにする。


かつて研究所で

自分の知能指数を誤って判断されるように

嘘をついた少女が、自分を隠し続けたあのラルーが

そんな自分をさらけ出すような行為を進んで行うとは思えない。


そこにこそ、何らかの深い思惑があるように思えてならない。



ラルーは自ら意図して得体の知れない存在に化けているのだ。



そしてルクトの場合に話を戻そう。


ラルーと同じように謎めいているが

彼の場合だと“意図的ではない”のだ。



意図的ではない、と断言する理由は彼の目的にある。



始めから一貫してルクトの目的は“ラルーの幸せ”なのだ。

彼は異常なまでにラルーに固執している。

きっと、彼がラルーと同じように首を刎ねるのは

“ラルーとお揃い”が良かったからに過ぎないだろう。


ラルーは確かに狂っている。

殺人に快楽のようなものを得ているのも間違いないだろう。

だが、ルクトはきっと違う。

彼は殺人に抵抗がないが、決して楽しいからやっているわけではない。


ラルーは‟首を刎ねる事に狂っている”と言えるなら

ルクトは“ラルーに狂っている”のだ。


彼が人を殺すのも、そして首を刎ねるのも

全てはラルーに合わせているからに過ぎないのだ。


全身全霊、そして己の命すら賭して

ルクトは妹を深く愛している。

何もかもラルー中心に考え行動する。

それがルクトなのだ。


よってルクトには思惑らしい思惑などはなく

ラルーのように何かを企んでいるようにも思えない。


むしろラルーの企みに付き合ってあげているという側面の方が強い。


基本的に冷静沈着なルクトだが

ラルーの事になると、笑いながら怒るだの

平然と想像を絶する罵倒をするだの

普段の彼からは思いも寄らない姿を見せる。


普段は無表情で、無口だ。

多くは語らず

ただ淡々と仕事をこなす殺し屋らしい殺し屋だ。


だから物凄く変わっていると思う。


確かに、ルクトとラルーは唯一血の繋がった兄妹であり

そして同じ“作品”として同じ痛みを共有する者同士ではある。


が、ルクトとラルーが兄妹らしく過ごせた時間は

一年程度しかないのだ。



かつてラルーが研究所で幽閉されていたとき

両者は別々の部屋で過ごしていたが、

戯れに一つの部屋を二人で過ごすように仕向けられた。


表向きには部屋数の不足

だが、本命は“反応実験”であった。


実験の結果は期待外れ。

二人はただお互いに身を寄せ合うだけで

そもそも兄妹同士であるとも認識しておらず。

ただただ意味もなく依存しあうだけだったため

一年程度でこの実験は中断され、二人は再び離れ離れとなった。


よって、ルクトのラルーへの執着心は異常なのだ。


幼少期より

両者は依存しあうような関係であったが

それはあくまでも極限状態の子供のころの話だ。


のちにルクトとラルーは“オダマキ スイセン”と共に

平穏な逃亡生活を送るが

ラルーは“忌み子様”として壮絶な地獄の日々を過ごした一方で

ルクトはスイセンに溺愛され、何不自由なく

むしろ並みの人間より恵まれた生活を送った。


ラルーの人生は一貫して悪夢のような

狂気に陥っても不思議でないものだ。


だが、ルクトは悪夢の中から

スイセンの異常な愛によって救われたのだ。


悪夢から目を覚まし

日常生活に戻った人間はどうする?

悪夢の中で自分と身を寄せ合った少女の安否を気遣うか?


否である。


不愉快な悪夢を人は、即座に忘れるのだ。

例えどんなに現実味があっても

例えそこで美しい少女に出会ったとしても

もう過ぎ去った事なのだと、否定してやがては忘れ去る。


ルクトは恵まれた日常生活を得た時点で

‟現実の悪夢”を忘れ去らねばならないのだ。

再び、その“悪夢”に捕まってしまわぬように。



ラルーを見捨てさえすれば

自分だけは幸せになれたのに。


ルクトはラルーのために自ら闇の中へと身を投じた。


ただただラルーという“妹”のためだけに。



忌み子様という不名誉な役を担わされ

痛めつけられ、苦しめられ、そして否定されたラルーは

己がいかに“社会”に不適合な存在かを思い知り

ゆえに、殺し屋という職を選択した。


ラルーなりに自分が生きていく方法を導き出したと言える。

まさしく‟この方法以外では生きていけぬ”

かなり論理的な結論だった。


ルクトは殺し屋などという職を選択しなくても生きていける。

なのに・・・。



彼はラルーと運命を共にする事を選択したのだ。




例え、感覚そのものを共有する“つながり”を持っていたとしても


それを未だに引きずっているのはおかしいと言える。



ラルーの狂いようは確かに脅威だ。

だが、それと同じくらいにルクトのそれも危険だ。

何が彼をここまで駆り立てるのか・・・。


何にせよ、妹が妹なら兄も兄。


この双子兄妹がどこまでも狂っており

そしてどこまでも依存し、愛し合っている事には揺らぎはない。





次に特筆すべきはやはり、彼の能力であろう。


物質具現化能力・・・。

頭の中で思い描いた物を実際の“物”として

具現化、再生が可能な力である。


基本的にはこの超常的な能力を発見されないように

ルクトはこの能力を使用しないが

必要に応じて、厳格にそして的確に能力を使用する。

完全犯罪を可能にするほど万能な能力といっても良い。


彼の能力の最大の特徴は

己の感情をそのままエネルギーに変換する事が出来る事。


稲妻や、雲に霧、炎などの現象までも“創れる”のだ。


まさしく神の如き能力である。

・・・それゆえ、

本人はその力の使いどころをかなり絞っている節があるが。



彼の能力のデメリットは“不可逆”な事だ。



一度創ったものは自分の手で、無かった事にする事が出来ない。

ルクトは“創る”以上の能力を有さないのだ。


最初から目的が遂げられたら自己破壊するように創れば話は別だが

それは言い方を変えれば、そこまでよく考えて創らなければ

その創造物がひとり歩きしてしまう危険性を孕んでいるという意味になる。



子は己が生まれた訳を知らずに生まれる。

親の言う事はなるべく聞くが

親の思いに反して育ち、そして親を超える。


親が子を産みだした時点でその子は己とは別物なのだ。


だから危険なのだ。

下手打てば、我が子に命奪われる恐れがある。

そうでなくとも親の願いと裏腹に行動する可能性が高い。



ゆえにルクトはその力を使用する事をあまり好まない。

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