表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ死神少女 監視記録  作者: 黒炎 ルカ
死神兄妹との邂逅
2/31

記録その弐 ラルーの兄救出作戦その壱


「ねぇ、イヲナは裏では何?」


「殺し屋」


「ねぇ、そんな頭切れるんならスパイになれば?」


「断る」


「ねぇ・・・」


「ぬし、私を疑うのは解るが

質問責めにするでないぞ!」


「・・・そーかい」


「・・・」



私とヤンデレ死神少女こと、ラルーは

ラルーの兄 “終の死神”救出のために

あるマンションに向かっていた。


だが、ラルーは私を疑うあまり

私を質問責めに・・・。

もしかすると、私の首を刎ねる隙を伺っている可能性もある故、

一切、気を緩める事が許されない・・・。



「それはそうと、見たところ武器は持ってないようだけれど・・・」


「問題はない、私は素手で戦う」


「ひゅー、武闘派ー!」


「・・・」



ラルーは少々、掴み所のない性格をしている・・・。

その一言、一言に意味があるようで、

ないような・・・。

こんな曖昧の性格でヤンデレとは少々、悪質な気がする。


そう、雑談か探り合いなのか解らないやり取りをしている内に

目的地たるマンション前にたどり着く。



「ここの4階、409号室・・・だったわね?」


「ああ、間違いない」



そう言ってマンションに入り、無機質な空間を進んだ。

あまり、管理の良いマンションのようには思えない汚さ


エレベーターを呼び出す為に扉の横に備え付けられたボタンを押した。

すると、すぐに扉が開いたのでエレベーターに乗り込む。

ラルーは私の後ろに張り付くようにして着いてきていたが

ヒョイと、後ろから手を伸ばして4階のボタンを押す。


私は背後に立つ殺人鬼が恐ろしいので、

ラルーから3歩離れて、壁に背中を当てて扉の上の方を見る。


扉は閉まり、

上昇するエレベーター。

扉の上の階のランプが

一階から二階へと、点滅し

三階に・・・

だがランプは点滅しない。



「・・・妙だな・・・?」



私は呟いた。

と同時にエレベーターはガタンと停まり

あろうことか、エレベーター内を照らしていた照明も消え

室内は暗闇に・・・。



「・・・止まったねー・・・」



ラルーは呑気に呟くと、携帯を取り出し携帯のライトを点け

室内を照らす。



「どうやら敵側にはハッカーがいるらしいな」



ハッカーならばこのマンションの電気系統を思い通りに操れる。

エレベーターを停めるなんて簡単だろう。



「さて、本番と行くか・・・

イヲナ、まずはこのエレベーター脱出しなきゃ、ね?」


「ああ、そうだな・・・

まずは扉をこじ開けてみるか?」


「見たところ、外は壁

ようするに階と階の間で停まった」


「・・・天井から脱出せざる得ないな」


「そうね」



彼女は扉を見ると外が壁だと断言する。

私の心を読めるのだから“透視”くらい簡単なのだろう。

となると・・・天井から脱出するしかないな・・・。



「しかし・・・

映画やドラマでは簡単に天井を突破してるが

現実は・・・」


「鍵がかかっていて中から開けるのは無理」


「その通り、だからどうすれば・・・」


「こうすればいいのよ」



ラルーはそう宣言すると、

私に手招きをする。

呼ばれているようなので私はラルーの側に寄る

そしてラルーはジェスチャーで私にしゃがめと言う。


・・・まさか、とは思うが・・・

と、とりあえず私情は慎もう・・・。


私は大人しく彼女の指示に従い

しゃがむと、彼女は当たり前のように私を踏み台に乗りかかる。

やはりか・・・。



「ッ・・・!?」



だが次の瞬間には私は驚愕していた。

何故なら、普通 人一人が乗ればその体重がのし掛かり

重く感じるはずだと言うのに・・・。


彼女が乗っても、僅かな重みだけがのしかかる・・・。

つまり、彼女は異常なまで軽すぎるのだ。



「驚いた?

私、凄く軽いでしょう?」


「・・・一体、体重何キロなのだ・・・?」


「女の人の体重を聞くなんて、

無礼でしょう?


・・・まぁ、私の体重は6キロよ」


「は・・・?」


「嘘だと思ってる?

でも事実、私は軽いでしょう?」


「・・・」



彼女の、嘘にしか思えない発言。

どうやら真実のようだ・・・。

一体、何をしたら6キロになる・・・?

よくもそれで死なないな・・・。


そうこうしてる間も、ラルーは天井をペタペタ触り

天井の強度を確認している。



「それで・・・ぬしは一体どうする気」


「はっっ・・・!!」



気合を込めた掛け声のあと


凄まじい爆発音のような破壊音が響くと

細かい金属の破片がポロポロと落ちてくる・・・。

破壊しおったのか・・・ラルーは・・・。



「破壊完了」



そう言って満足そうにラルーは私から降りる。

私はすぐに立ち上がり、天井を見上げた。

ポッカリと大きな穴がその口を開けている・・・。

穴の縁はひどく歪んで、向こうにワイヤーが3本ほど見える・・・。

その凄まじい光景はなんと形容すれば良いものか・・・



「さ、行きましょう

時間がとても惜しい」



そう私が唖然として立ち尽くしていると

ラルーは地面を蹴り上げ、簡単に天井裏に飛び乗る。



「ほら、早く来なさい

それとも私の助けがなければコッチに来れない?」


「・・・問題ない、

少し待っておれ」



私はエレベーター内の壁に足を当て、

強度を確認する。

大丈夫だな・・・。


一歩、後退し助走をつけて私は若干のカーブを入れる為に身体を捻り

壁を蹴り上げ、勢いのままエレベーター内の四面の壁を走る。

徐々に登り始め、天井に空いた大穴に近付いた所で

私は渾身の力を込め、壁を蹴り 飛ぶ。

そして大穴の縁を両手で掴み、重力から私は結果的にぶら下がる。


ラルーは天井裏から私を見下ろし

ポケーとしている。



「頼む・・・ッ!

助けてくれ・・・ッ!」



私は呆然としているラルーに少し苛立ち、助けを求める。

するとラルーはハッとしたように、ビクッと震えると

すぐに私の腕を掴み、持ち上げる。


無事に私は天井裏に登る事に成功し

荒く息を吸っては吐いて、肩で息をしていた。



「ッ・・・!」



私は痛みに反射的に手を見た。

赤い線が痛ましく私の手のひらに走っていた。

歪んで断面が鋭くなっている大穴の縁を掴み、全体重を支えたのだから

当然か・・・。



「大丈夫かい・・・? イヲナ」


「私を心配してくれるのかッ・・・!」


「・・・いや・・・純粋に・・・

美味しそうだなって・・・」


「はぁ?」


「・・・私、吸血鬼なのよ」


「・・・人間のようだが」


「吸血鬼なの! 私は!」


「・・・ただの吸血病か?」


「違うわッ! じゃあ、証明してやるわ!」



そう言って彼女は私の手を掴むと私の切り傷に、

ちゅ、と口づけをする。

それも、さりげなく舌でペロリと舐められた。



「ッ・・・!」



突然過ぎて、ワケが分からなくなった。

それよりも先にまず痛かった・・・。

が、しばらくすると痛みは消え失せた。


何故ならば・・・彼女が切り傷を舐めた後、傷が見る見るうちに

癒えて最初から何もなかったように完治したのだ。


何が起きたのか理解出来る域を越えてしまい

私は固まっていると、

さも当たり前のようにラルーは私の首元に口づけをしてきた。


驚いて私は後ろに仰け反った。


・・・そうだ、そういえば首元をラルーの大鎌で斬られていたな

それを治してくれたのか


やっと状況を把握して、首元に手を当てた。


そこには傷口は無く、微量の血液が付着しているだけ・・・。



「・・・」


「これが証拠よ」


「・・・」



私はもう黙ってドヤ顔のラルーを見上げる。

彼女は・・・死神にして、吸血鬼。


・・・冗談であろう・・・?

という私の切実な想いも、彼女の微笑みによって儚く散った。


笑った彼女の口には鋭く尖った八重歯・・・。

吸血鬼の最大の特徴・・・!

もはや、驚愕を通り越して関心さえ覚える始末ではないか・・・!


そうして私と吸血鬼?ラルーはエレベーター脱出を成功した。


まだラルーの兄 救出作戦は終わらない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ