記録その九 死神兄妹と初共同作業その壱
「ねぇ? イヲナー」
「黙れラルー」
「・・・シュン・・・」
「・・・」
私は横で騒ぐラルーを黙らせ
パソコンの画面を睨みながらカタカタと文字の入力を繰り返す。
私は今、ある組織にハッキングをしている。
一応ラルーもハッキングが出来ると言っていたが念の為に
ハッキングは私がする事とした。
「イヲナ~」
「さっきからなんだ
私はハッキングで忙しい」
「・・・本当に武器いらない?
大鎌じゃなくても剣とか短剣とか、
用意するよ?」
「いらぬから黙れ」
ラルーは何故か必要以上に私を心配している。
・・・何故なのか、実に不思議だ。
それにまだラルーが私に指摘した“気付いていない事”も
分かっていない・・・。
聞いてもはぐらかされる。
仕方ないのだろうが・・・。
気になる。
ルクトは毒を持って帰ってきたが
ラルーから事情を説明されて、色々と荒れた挙句
外のベランダにてメソメソとタバコを吸っている。
13歳がタバコを吸うな。
と言いたいが、本当に口にしたら首を刎ねられる。
ルクトとラルーの兄妹は双子で
ルクトが先に生まれたのでお兄ちゃんとラルーは呼び慕っている
という話しをラルーは教えてくれた。
どうでもいい・・・。
それにしても、この組織のロックはあまりにも厳重過ぎではないか・・・?
私を敵視している組織は
麻薬密売や違法ドラッグで有名な組織。
この組織のせいでどれだけの表の人間の人生が狂わされ死なされた事か
とにかくこの組織は荒稼ぎをしているため、
非常に財力のある組織でそこに所属して真面目に従ってさえいれば
お金がたくさん入るため、所属者はやたらと多い。
組織を潰すとなればラルーとルクトがいる事だから
最悪の大殺戮を繰り広げる事となるだろう・・・。
そしてこの組織の上層部の人間は主に危険思想の持ち主が多く、
麻薬密売や違法ドラックもその思想に基づくモノだというのだから
笑えない・・・。
“人は人でなくなった時こそ神に近づける”
と、いつぞやその組織の上層部の一人が口走ったのを覚えている。
その時の恍惚の目を見て、どれだけ恐ろしく思った事か・・・。
故にこの組織は早めに潰すべきだと私は思う。
今回の組織潰しに損はない。
有るのはメリットのみ・・・。
「さて、ハッキングは終了した
幸いにも組織本部はここアメリカにある・・・
と、いつまでいじけておるのだ?ルクト」
「・・・そうだな
いっぱい殺せそうだな、丁度いい暇つぶしだし
遊びとしてはかなりスリリングだ
けどな・・・ブツブツ・・・・」
「・・・」
何が不満か、全く分からんな・・・ルクトは、
そんなにラルーを独占したいのなら
ラルーを意地でも私から引き剥がせば良いものを・・・
そうしてもらえれば、どれだけ助かる事か
「ラルー、ルクト
襲撃するのならなるべく早い方が良いかも知れぬ」
「何故なのかしら? イヲナ」
「私が組織を襲撃する事は既に読まれているようで、
現在この本部には続々と名のある殺し屋が集まっている・・・
この調子では50を優に越えるぞ?」
「50もかき集めるなんて・・・久々に楽しめそうねぇ~?
お兄ちゃん」
「確かにそうだな? ラルー」
「・・・」
この兄妹は危機感というモノを覚えないのか・・・?
50だぞ? さすがに手こずるのでは・・・?
「イヲナ・・・
力を使う気、ないの?」
「・・・」
「私とイヲナとお兄ちゃん全員、
力を持っているのよ? 3人もいれば負けるワケがないでしょう?」
「出来ればこの力は隠したいのだが・・・」
「隠す理由は?」
「念の為だ」
「・・・なら、力を使ってもらうわよ?」
「・・・」
・・・・・・威圧感を感じる。
ラルーは無邪気な笑みを浮かべながらも
その顔には影を落としている。
拒否権など、存在していないのか
「分かった・・・ぬしに従う事とする」
「良かった~! 無理やり脅さずに済んで~」
「・・・」
私を脅す気だったらしい。
・・・何げに私は危うい状況に置かれているようだ。
「作戦決行日はいつにする?」
「いっそのこと、今夜にしちゃおうか!
お兄ちゃん!」
「手っ取り早い方がいいみたいだし、
そうだな~!」
「・・・」
ラルーとルクトは勝手に作戦決行日を今夜に決めおった・・・。
準備とか計画とか協力者の手配とか、
一切出来ぬではないか
よもや、私に対する嫌がらせか?
「ダンガンで行こう!」
「・・・」
勝てる気でいるみたいだ・・・。
ラルーはかなりの命知らず。
それでも、この“力”は途方も無く絶大な物だ。
だから・・・一人でも不可能な事を可能に出来る。
・・・そんな力の持ち主たる者が、3人もいるのだ。
この程度の組織潰し、実に容易いのだろう・・・。
・・・だが、何故かとても嫌な予感がする・・・。




