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宮廷画家、フラビオ

西暦1701年、ヨーロッパは18世紀を迎えた。


貿易を巡りオランダとイギリスの間で三度も繰り広げられた

英蘭戦争も一旦終了し、

勢力を拡大しつつあったフランスの暴走を止めるために

イングランドやオランダ、スペインたちが手を組んで

戦った大同盟戦争ももはや終わりを迎えており、

継承戦争の行われているスペイン以外のヨーロッパ諸国にも

つかの間の平和が訪れていた。


トスカーナ大公国(現在のイタリア北部)もつかの間の

平和を楽しんでおり、人々は毎日

楽しく過ごすことが出来ていた。


そんなトスカーナ大公国の中央にある

フィレンツェにはこの公国の大公、つまり王族の

住む巨大な城があった。

豪華で華やかな城内はトスカーナを治めている

フィオラヴァンティ家が暮らしていた。

他にも、様々な使用人たちがこの城に暮らしていたが、

彼ら以外の人間はこの城に足を踏み入れることを

許されていなかった。

それでも、この城に足を踏み入れることを

許された者が唯一居た。


その男はたくさんの画材道具を抱えながら

城門の兵士へ挨拶を交わす。

「ちわーっす、お疲れ様でーす」

兵士に軽い挨拶を交わすとその男は城内へと

仕事をするために入っていった。

城内の廊下を歩いていると、

「いよぉフラビオ、今日も仕事か?」

仕事をサボっていた料理人の一人が男に話しかけた。

「あぁそうだ、忙しくなるよ」

男が応える。

「今日こそ女王様のヌード、描けるといいね」

料理人がからかった。

「余計なお世話だ!」

顔を赤らめながら男が怒鳴り返した。


この男の正体はフラビオ・トランクィリ、

1666年フィレンツェ出身の35歳の

宮廷画家(貴族達に雇われている画家)だった。


フィレンツェのパン屋の家庭に生まれたフラビオは

当初パン屋を継ぐ予定だったのだが、

料理が苦手なフラビオはそれを断念、

今度は音楽家になろうと家のパン屋を手伝ったり、

役所の清掃員などのアルバイトをしながら

やっとの思いでバイオリンを購入、

それを広場で弾くことによっておひねりを

もらいながら生活をしていた。

そのおひねりでフラビオは毎日女の子と

遊びまくっていた。

当時25歳だった。


しかし、それを知った父親は激怒、

フラビオの根性を叩きなおすべく

フラビオを教会へ連れ込んだ。


教会では牧師の長い説教を聞かされ、

フラビオは退屈していた。

周りを見回すと、様々な神様の絵画が

飾られていたのだが、その中の一つに

裸のマリアの絵画があった。

フラビオはその絵画に見入ってしまい、

説教も聞こえなくなっていた。


説教も終わり、フラビオは父親と帰る道中、

「オレ、画家になりたいんだ」と父親に話しかけた。


元々女好きだったフラビオは画家になれば

女性のヌードが見放題になるだろうという

穢れた考えで画家を目指した。


そんなことも知らずに父親は、息子が

遊ぶのをやめて真面目な息子になったと

泣いて喜んでいたという。


早速父親は遠い親戚だった一人の画家に

フラビオを弟子に出した。


何故画家になりたいのかと尋ねられたフラビオは

「モデルの裸が見られるからです」と言った。

問答無用でぶん殴られ、弟子を辞めさせられた。


その後、独学で絵画を学び、

30歳でフィレンツェの街中で

似顔絵描きとして収入を得る生活をしていた。


フラビオの絵のセンスはずば抜けたものがあり、

評判も高かったためにフィレンツェ観光の

名物の一つになっていた。


その評判を聞きつけた当時の国王だった

アンドレア・フィオラヴァンティの似顔絵を描くことになった。

その似顔絵を気に入った国王はフラビオを

宮廷画家として雇うことになった。


こうしてフラビオは城の近くに大きな家を与えてもらい、

宮廷画家として客人の似顔絵などを

描く毎日を送っていた。


この日もフラビオは宮廷画家としてこの城を訪れていた。

実は今夜、イングランドの軍人達がこの城を訪れるため

彼らの絵画を描くためであった。



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