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「やっはろー、溶岩龍くん」

「セシリア嬢、何者かがこちらに近付いています、……我々に気付いているかどうかは図りかねますが」


「気付いているでしょうね、流石に大天使が直接探りにくることはないでしょうから、恐らく溶岩龍くんが刺客として仕向けられたってところかしら」


セシリアとローレンスは、ローライトの外周の内側のぎりぎりを静かに歩いていた。


「…溶岩龍、北欧の由緒ある土地神でしたか、なかなか厄介ですね」


「でもこの辺りに火山脈は無いのだから、それ程本来のチカラは発揮出来ないでしょ」


土地神の類は、その神が得意とする環境でなければ、それ程大きなチカラは使えない。


例を上げれば、海賊王であるヴィルヘルム君も海での戦闘で無ければ殆ど無能だ。


それとよく似たようなモノと捉えてほぼ間違いは無いだろう。


「さてローレンス、このまま逃げ切るか、迎え撃つか、この場合はどちらが正解かしら」


「迎え撃つ他無いでしょう、あちらがそう簡単に見逃すとも思えませんしね」


「同感ねローレンス、さっさと締め上げてしまうわよ」


そう言ってから二人は、完全に同じタイミングで路地を後ろに大きく飛んだ。


「ッ!?」


「やっはろー、溶岩龍くん」


そのまま空中で、ノートルダムの溶岩龍を宿す人物、アルス・マグナと邂逅し、


「お初にお目にかかります溶岩龍、俺はしがない雇われ傭兵、ローレンス・ミッドフィールドにございます」


「…くッ!」


地に足が付くまでの瞬間に、ローレンスと溶岩龍の間で二太刀の剣戟が繰り広げられた。


「…よっと」


セシリアは軽く着地すると、溶岩龍に背を向けたまま、腰に提げた細身の刀を振り抜いた。


「……おいおい、冗談がキツい、まさかあんた達とはな…」


「私からすれば、大天使と貴方がこんな事をしている方が驚きよ」


溶岩龍が既に右手に構えた白刃を見える剣の刀身を、左手でなぞるように撫でると、その左の指が触れた刃先から、マグマのように燃え盛る紅蓮の焔が噴き出した。


「…へー凄いわね、土地の恩恵も無しに」


「海賊王と同じにするな…!」


溶岩龍は、そのまま剣先を水平に振り抜いた。


それと同時に、その剣筋の軌跡から、衝撃波に乗った焔が、少しひらけた路地裏を埋め尽くす。


ーしかし、


「よっ」


それに対応したセシリアの振るうシンプルな一太刀が、


「…ッな!?」


圧倒的な質量を誇る溶岩龍の焔を、一瞬にして掻き消してしまった。


「そんなマッチのようにちっぽけな炎じゃ、足止めにもならないわね、溶岩龍くん」


「…ちっ」


「さぁ、セシリア嬢、お戯れはこの程度に」


「そうね」


「ぅぐッ!?」


今の今までセシリアに並んで立っていたはずのローレンスの姿が、一瞬の内に、溶岩龍の懐に移動していた。


「俺の戦闘スタイルは対象の無力化が基本ですので、お命のご心配はなされずに」


「…なに?!」


「まずはその武器を」


溶岩龍が咄嗟に振りかぶった焔を纏った剣を、ローレンスは、


「太刀筋は非常に綺麗ですね」


人差し指と親指で摘まむように捉えた。


「(……こいつ、素手で…!)」


「ですが、型にはまってばかりの太刀筋は実戦では何の威力も成しませんよ」


そしてそのままその剣身を、まるで細い木の枝を折るように、真っ二つに摘み折ってしまった。


「………な」


そうして追い打ちをかけるように、さながら戸を蹴り倒すように、ローレンスは溶岩龍の腹部を蹴り抜いた。


「ぐあっ!」


空中で二三、回転しながら、溶岩龍は民家の石造りに激突した。


「ふう、手を火傷しました、流石溶岩龍ですね」


「嫌味ったらしいわよ、ローレンス」


セシリアは歪みの無い剣を、腰に提げた鞘に戻しながらにそう言った。


「……ぅ、くそが…!…どうしてあんたら程の人間がローライトに居るんだ……!?」


路地裏を遠巻きに、瓦礫に埋れた溶岩龍の声が響いた。


「居て悪いことでもあるかしら?私はヴァイロンの隊長なのよ」


「…悪いどころか、最悪だ……」


「…で、結局貴方達は一体何をしようとしているわけ?このローライトを覆ってる気味の悪い魔術は何をするための術式なのかしら」


「…まさか、言うと思ったか……?」


溶岩龍の言葉に対して、セシリアは小さく溜息を吐いた。


「……まぁ、そうでしょうね」


「トドメを刺しましょうか」


「……ローレンス、貴方エゲツないわね、何が無力化が基本よ」


「傭兵ですので」


セシリアは両目を閉じて、少しオーバーリアクションに思案する。


「…うーん、一応ヴィルヘルム君達とも面識あるらしいし、流石に殺してしまうのはよしておきましょう」


「御意」



「でも」



と、セシリアは再び鞘に手をかけた。


「威力的尋問の最中に手違いで殺してしまうのは、よくあるこでなくて?」


「右に同じで」


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