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「いやぁ日本だよ日本~、楽しみだね!」

お久しぶりです!

今回から新章になります。


人物紹介にも、新しい内容を追加致しましたので、お暇な時に目を通していただければと思います。


「午前4時37分、予定より30分遅れでガブリエラニーチェフの境界門に向かう」


ヴィルヘルム先輩は、胸ポケットにしまってあった懐中時計を確認してから、そう告げた。


「いやぁ日本だよ日本~、楽しみだね!」


「浮かれるなフィリー、誰のせいで予定が遅れていると思う」


「…むぅ、別に戦争しに行くんじゃ無いんだからそんなに怖い顔しなくてもいいんだよヴィル!」


今回の作戦の概要は以下の通りである。


先日の魔人が襲来した際に、僕の中に宿る憑き神、つまりウシロガミが完全な復活を果たしてしまった。


つまりリミッターが解除、破壊されてしまったと言えば、大方間違いは無いだろう。


まぁ、暴走はしていないのだから、それほど重要な事として取る必要は無いのではないか、と、思われてしまうかもしれないが、以前は「僕」という一つの器が正常に機能していたからウシロガミの憑き神としてのチカラを、ほぼ完璧にコントロール出来ていたわけで、本来なら存在するだけで死を撒き散らすとんでもなく害のある存在だ。


そして現段階では、その器が正常に機能しているかどうかも危うい状況と言えるだろう。


現に、僕の髪色は、ウシロガミのチカラに当てられて真っ白のまま、ずっと戻らない。


ただでさえウシロガミの、他を死滅させてしまうチカラは毛嫌いされやすいというのに、外見までこうでは体面上非常によろしくない。


他人に奇異の目で見られるのにはそれなりに慣れているとは言え、僕だって好んで嫌われようとするほど、人格は破綻していない。


そんな僕の訴えを受け入れてくれた学校長の計らいにより、今回の日本への一時的な帰郷が許された、というわけである。


もちろんその目的は、憑き神のコントロールが正常と言える状況の復元、及び…、ヴァイロンの休養と言えるであろう。


「僕の暮らしていた地域は安全ですよヴィルヘルム先輩、今回くらい肩のチカラを抜いたらどうですか?」


「そうだよヴィル!禿げるよ!」


「黙れ、安全かどうかは俺が自分で判断する」


まぁナイーブな僕はさて置き、他のみんなには是非、僕の生まれ故郷である日本で休養をとって貰いたいというのもまた本心だ。


すでに先方には学校長が手紙を送っておいてくれたようなので、迷惑をかけることもないだろう。


ただ、半年でとんぼ返りすることになるとは思ってもみなかったので、祖父に何を言われるのかもわかったもんじゃない。


別に僕が自発的に無理を言って欧州に来た訳でも無いので、気兼ねするだけ無駄だと言ってしまえば、確かに無駄か。


「どうしたのー?京くん」


「いえ、行きましょうか」


============


ローライトの城下町の中心街に位置する大広場にたどり着いたところで、むすっとした顔をしたテティが立ち尽くしていた。


「みなさん、遅いです」


「あれ、テティ、ライフルは?」


「…あぁ、ライフルの修理は間に合いませんでした」


「そっか」


同じ部屋で暮らしている僕とテティが、別々に待ち合わせしているのには訳がある。


テティは先日の魔人との戦闘の際にダメージを負ったライフルを修理するために、故郷の馴染みの工場までで向いていたのだ。


そして、目的はそれともう一つあるだろう。


「……京くん、また後で話しましょう」


「そうだな」


「なになに二人とも!意味深な会話しているね!」


「…気にしないで下さいフィリー先輩」


「………」


テティの腰に挿さっている拳銃。


アレがルルイエ先生そのものだと言って、一体誰が鵜呑みにして信じるだろうか。


よほどルルイエ先生の人外なイレギュラー気質を知った人間でないと、すぐには到底理解が追いつかないのだろうな。


「とっとと済ませるぞ、今この境界門は遥か極東に通じているはずだ」


「…そうですね」


何故わざわざこんな明け方に、この場所に訪れたのかと言うと、現在、このガブリエラニーチェフの境界門は、学校長が集中的に管理している。


そして特別に、極東に通ずる道を開いて貰っているので、利用する人の少ない、この時間帯に用を済ませなければならないという結論に至った、というわけだ。


「開くぞ」


ヴィルヘルム先輩が扉の千錠に手をかけると、扉は自らの意思で錠を落とし、まるで羽をひろげるように開門した。


「はっ、温度の違いとか大丈夫かな!すっごく寒かったりめちゃくちゃ暑かったりしない!?」


「同じ北半球ですから、気候が激変することはありませんよ」


「そ、そうなんだ」


僕はフィリー先輩に笑顔で応える。


さぁ、


「日本へ」


僕たちはそろって門をくぐり抜けた。

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