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「……ウシロガミ、私は五大憑き神に並んだぞ!」

「…今だッ!」


僕は巨体の魔人との間に繰り広げられる猛攻の隙を突いて奴の懐に飛び込んだ。


「なにっ!…ぐぅおおおおおおおおおお!!」


魔人の皮膚にウシロガミの白い光が僅かに触れた瞬間、巨体の魔人は獣のような呻き声をあげた。


「(……魔人にも羅刹姫の能力は通用するようだな……)」


悪魔及び、ウシロガミという存在より下位に位置する全ての生命体に作用し、悪魔であれば瞬時にその命を喰らい尽くすチカラ。


…しかし、


「ウシロガミィイイイ!!!」


魔人は僕を脳天から叩き落すかのようなカタチで拳を振り下ろしてくる。


「…ッ!?」


ーウシロガミのチカラを受けても死なないだと!?


「くっ…!」


僕は回避が間に合わず、両腕で奴の拳を受け止める。


メキッ、


「ぅぐッ…!」


両腕が発した悲痛な叫び声が、確かに僕の耳に届いた。


「(……ヒビが入ったか…?最悪折れてる可能性も……くそ!)」


…なんて怪力だ、回避しなければまともに対処すら出来ないなんて…。


「ぅぐ………おのれウシロガミ…!我が体内に流れる魔神の血が死滅していくのを感じるぞ…!!」


「(………怪我を負ったのは向こうも同じか…)」


…魔神の血か……、どうやら魔人という種族は悪魔と人間の混血…、中間的な生き物なのだろう。


並の悪魔であればウシロガミの光に触れた瞬間息絶えたえるのだが、人間が触れても触れた部分の皮膚が壊死してしまう程度だ。


「……人間的な部分のおかげで助かったな、でっかいの」


「…貴様ら人間と同じにするな小僧…!」


「…はは、まだ空間干渉は使えるのか…?」


「…………わざとらしい口を聞くなウシロガミ!!!」


魔人は怒号と共に突進を繰り出した。


「(……今のでこいつの能力は死んだ……!)」


…いける!


「ぅおおおおおおお!!!!」


僕はウシロガミのチカラを最大限に全身から具現する。


視界に映る世界が白く染まるほどの光。


「ぐぉおおおおおおおお!!!」


二つの雄叫びが重なり、大きな衝撃を生んだ。


「…くッ!」


リーチの長さの勝負なら、僕の光が負けるはずが無いのだ。


…そして案の定、


「…うぐァッ!…ゲホォッガハッ…!!ぐ……ぅ」


魔人の放った特攻は、僕の肉体に届く前に掻き消されてしまった。


「……今度は全身で光に触れたな…、終わりだ、魔人」


「…ゴハッ…!グフッ………うしろが、み…!」


魔人は血の塊を吐き出しながら瓦礫の地面に倒れ込んだ。


「無様だなリッチェル中将」


「!?」


そいつは派手な軍服を纏い、民家の屋根の上からこちらを見下ろしていた。


「いやしかしいいものを見せてもらった、ウシロガミに触れれば魔人の能力が死滅してしまうとはな」


「…魔人、将軍様……!」


「(……将軍…!…あいつがこいつら魔人の親玉か…)」


「それではそちらで倒れているバッカニーナの能力も消えてしまっているのだろうな、お前たちリッチェル小隊の隊員は皆なかなか便利な能力を持っていたというのに……。やってくれたな、ウシロガミ」


「…ならお前も同じだよ、悪魔の血を引く限り羅刹姫のチカラには敵わない…!」


僕は不敵に笑っていた。


「『セフィロトの木』って知ってるか?ウシロガミ」


魔人はそんな僕を遮るように語り始める。


「またの名を『世界樹』。全知全能の天上神を頂点とし、憑き神の力関係を記した媒体を必要としない文献だ。…まぁ『世界樹』の憑き神は先の大戦の際に殺されてしまったが、今はどうせそこの『星の記憶』が保持しているのだろうがな」


「…しょ、将軍さま、『星の記憶』が生きていることを知っていらっしゃったのですか?」


「…いや、こちらの世界に来てから気付いた、いやまったく驚いた、まさかあの戦いの最中にそんな細工を仕込んでいようとはな」


「………星の記憶…?」


……こいつらは一体何を言っているのだ?


『星の記憶』、つまりルルイエ先生は死んだのだ、憑き神の使い手が死ねば憑き神そのものもまた消滅する。


「(……そこの、星の記憶……?)」


僕はふと振り返る。


「…なッ!」


そして驚愕した。


テティのすぐ側、テティを見守るように佇む一体の憑き神の姿があったのだ。


「(…星の記憶!?)」


さっきはウシロガミのチカラを発動していなかったから見えなかったのか…。


いやしかしどういうことだ?


ルルイエ先生は死んだと聞いた、あの学校長が言ったことだ、間違いがあるとはとても思えない。


『私に気が付いたか、ウシロガミの少年』


「!!」

星の記憶はこちらに目をやって話しかけてきた。


どうやら魔人達には『星の記憶』の声は聴こえていないようだ。


「(…どういうことだ星の記憶!何でお前は生きているんだよッ)」


『いずれ話す、今はとにかくテティを守ってやって欲しい』


「……あーもう、くそっ」


何が何だか訳がわからない。


ルルイエ先生の死亡、ヴィルヘルム先輩の負傷、新たに現れた魔人という存在、そして生き残った『星の記憶』。


多くの情報が交錯し過ぎて頭がこんがらがってきた。


「どうかしたかウシロガミ」

「……いや、何も」


「そうか、なら話を戻そう」


軍服の魔人はそっちのけで続ける。


「憑き神の力関係…、それはつまりその憑き神が保有する存在の強みで対比した番付。五大憑き神なんかはそれらの中でも特に優れた憑き神だ。このローライトにも二人居る、騎士王フィリーブレッド、そして大天使ガブリエラフィンセント」


「……何が言いたいんだ」


「そして君、ウシロガミはそれら全てをも裁断するチカラを持つ番外的な存在だ。……がしかし、五大憑き神ほどの憑き神にもなれば、いくらウシロガミのチカラとは言え、強大な彼らの存在を喰らい尽くすのには骨が折れるそうな」


「……」


「そこでこの魔人将軍、ハンニバルの持論に通ずるのだ」


「…結局何が言いたいのかいまいちわからないんだが」


「…ふはは、こればかりは、


行動で示した方がわかりやすい!!」


「ッ!」


ハンニバルは真っ正面から突っ込んで来た。


「(…こいつ、死ぬ気なのか…!?)」


僕はすぐさま体制を立て直して、迎撃する構えをとる。


ーそして、


「後神流!湖面繊月!!」


僕は光を纏った裏拳を繰り出した。


「ーフッ」


ーそして、ウシロガミの光がハンニバルと名乗った魔人の皮膚に触れる瞬間。


「ッぅぐ!?」


僕は何が起こったのかわからなかった。


「………ぅ、……?」


次の瞬間には腹部に熱いモノを感じていた。


「(………なん、だ…?)」


腹部のソレは、確かに僕の脳の神経に届いた、届いてしまった。


ー痛い、


「…血…!?」


ただ血が出ているだけではない、奴の、魔人の腕が、僕の腹部を貫いているのだ。


「……ウシロガミ、私は五大憑き神に並んだぞ!」

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