「……我は魔人、冥府より出でし冥界の住人だ」
「テティッ!!」
私が、失意の淵にまぶたを閉じようとした瞬間だった。
「やめろぉおおおおおおお!!!!」
薄目で夕暮れの空を見上げた私の耳は、確かに彼の声を捉えた。
「(……………白い、光………?)」
その声は、白い光に包まれていた。
「(……これ、は)」
私はこの光を知っている。
「………みやこ、くん…………?」
訳もわからないまま、私は魔人の腕からはじき飛ばされ、宙に浮いていた。
「…何者だッ!?」
「お前がこの子の仲間だなッ」
白い光を纏った彼は、すでに一人の少女を肩に担いでいるにも関わらず、宙に浮いた私の身体を片腕で受け止めてから、魔人の身体を蹴って大きく跳躍した。
「…バッカニーナ!?…何故貴様が彼女を担いでいるのだ!」
「気を失ったから連れて来てやっただけだよ!ーていうかそんなことよりも……!」
彼は血相を変えた顔色で、私の顔を覗き込んでくる。
「テティッ大丈夫か!話せるか?!」
「…………………京くん…ですか」
「……ぁあ、よかった、ほんとに…!」
「……また、…女の子を連れているんですね……」
「…な、何言ってるんだよこいつは敵だぞ…!」
「………はぁ、……今度は、敵の女の子ですか………」
口元を緩めると、自然に笑顔が零れてしまった。
「………ありがとう、みやこくん」
ーそうして、私の意識は暗転した。
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「テティ!」
テティは僕の腕の中で意識を失ってしまったようだ。
「……息はしているな」
僕は制服の上着を脱ぎ、彼女をその場に寝かしてから、その上着を彼女の頭の下に敷いた。
「………よし」
それでは、
「でっかいの!」
「………なんだ、小僧」
僕は肩に担いでいたバッカニーナと呼ばれる少女をテティの横に寝かせてから、巨体のそいつに問いかける。
「……お前、いや、お前たちは何者だ。…人間じゃあ無いんだろ?」
巨体のそいつは今にも襲いかかってきそうな形相で答えた。
「……我は魔人、冥府より出でし冥界の住人だ」
「………魔人……!?」
………じいさんから話を聞いたことがある。
「……確か、400年前の大災厄の時に、人間界には干渉せずに裏で糸を引いていた連中だったか」
「……詳しいな、小僧は何者だ」
「…………」
…隠す必要も無いだろう。
「……閻魔王羅刹姫は後ノ神、ウシロガミって言った方がわかりやすいか?」
「…!なんと、憑き神の王ではないか」
…やはり知っているのか。
「…で、どうする、正直僕はお前を逃がすつもりは無いぞ」
「…逃げるつもりは元より無い」
僕は魔人と名乗る巨体を睨みつけた。
「……狩られるのは小僧か、我か」
「勝負だ、でっかいの」